第9話 ふふ、初めての魔法体験に驚いたみたい。それにしても、知恵の勇者には頭が上がらないですね。私が探れないことを、危険を冒しながら探ってくれたのだから

『そういえば、さっき、魔術って言葉が出てきたけど、この世界の魔法って、どういうものなの?』


 リゼラミアの魔法が、僕の知識として知っている魔法と違う可能性があるので、アリーセスに確認をしておきたい。


『はい、この世界には、まず魔法と魔術が存在しています。魔法には、昨日ウルクが実際に行った精霊魔法、自然界に潜む神力マナを借りて使う魔法、身体の中にある神力マナを使う三つのタイプの魔法があります』


 マナという言葉は何かの本に書いてあった覚えがある。


『そして、魔術ですが、“知恵の勇者”が発見した理論によると、一つは、悪魔の力を借りて使う魔法のようなものです。また、“魔の霧”から魔力を借りて使う魔術、身体の中にある“悪の種”から魔力を引き出して使う魔術があります』


 うーん、詳しく説明するとそういう説明になるんだろうけど……


 要は、


『簡単に魔法と魔術の違いをまとめると、女神であるアリーセス側の力と魔の勢力側の力の違いってことかな?』


 と確認した。


 今は単純に理解しておけば十分だろう。


『はい、その解釈で間違っていません』


 知識としては、なんとなく分かったけど。

 魔法と魔術がどのようなものかは、実際に見てみないと分からなさそうだ。


『いつ魔獣が出るか分かりませんので、一度、戦闘時の精霊魔法も体験しておいた方がよいかもしれませんね』


 また、心を読まれたようだ。


『ぜひ、お願いします』


 戦闘というのは気がすすまないが、やるしかないだろう。

 僕は意を決した。


『では、二人の精霊を呼んで下さい』


「わかりました。ファイ、ミューリ出て来てもらえる?」


 二人の精霊がすぐに姿を現した。


「「お呼びでしょうか?」」


「戦闘時の精霊魔法を、実際に使ってみるってことで、呼んだんだけど」


「そうでしたか、それでは、まず、火の精霊魔法をお見せいたします」


 ファイはそう言うと、自分の右手の指先に火を集め、火の玉をつくった。

 その火の玉を、十メートルほど離れた位置にあった大木へと放つ。


 ドーーーン!


 火の玉が大木にぶつかると、大きく爆音を響かせて、大木が燃え上がった。


「おお、凄い威力!」


 精霊魔法の威力に、素直に驚く。


「いえいえ、私は下位精霊ですので、中位・上位精霊の精霊魔法は、もっと威力があります」


「え……、これで下位精霊なの?」


「私も下位精霊ですよ」


 ミューリが水の精霊魔法で、大木の火を消化しながらそう言った。


「そうなんだ。どうすれば、中位や上位になれるのかな?」


「精霊使いの神力マナが上昇すると、一緒にいる精霊も自然と昇位しょういしていきます」


 ミューリが続けて解説してくれた。


「ということは、僕次第ってことか……」


 僕自身が強くならなければいけない。

 よなると、中位や上位にまで精霊を昇位させるには時間がかかりそうだ。


 無意識に苦悩の表情を浮かべていると、


「ふふ、頑張って下さいね、ウルク様」


 と言って、ミューリが大きな目を細めてほほえんだ。

 

 か、かわいい。

 

 小人になっているということもあり、小動物を見ているような感じで癒される。


 特にミューリには大きな目といい、屈託くったくな話し方といい、小動物の要素が強い。


「じゃあ、ミューリのためにも、頑張って強くなるよ」


 僕は純粋に思ったままのことを言った。

 

「あ、ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです……」


 何故か、ミューリは恥ずかしそうにそう言った。

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