第一章 女神アリーセスと異世界リゼラミア

第3話 アリーセス、アリーセス。ふふ、気に入ってしまいました。いい名前をつけてくれてありがとう、ウルク

「では、神様……」


『どうかしましたか?』


「あ、いや、話しかける度に神様と呼ぶのはちょっとと思ったのですが……、名前はないんですか?」


『私に名前はありません。ですが、逆に何と呼んでいただいても構いません』


「ということは、僕が決めた名前で呼んだらいいということですか?」


『それで大丈夫です』


 とは言うものの、ペットの名前すらつけたことがないので、いい名前がつけられるかどうか。


「性別は、どちらになるんですか?」


 声だけでは判断出来なかったので、性別が分かれば、名前のイメージが湧きやすいと思うんだけど……


『私に性別はありません』


 そうなの?

 神様って性別ないんだ……

 

『はい、ですので、ウルクの好きな方の性別をイメージしてもらえればと思います』


 あれ?

 何となく、心を読まれた気がする。


「神様ということは、人の心が読めたりするんですか?」


『心だけで会話することもできます』


 ……さっきまで心の中で思っていたこと、全部、聞かれていたのか……

 

 これは隠し事はできないな。


 というか、これも聞かれているってことだよね。

 それなら、ちょっと試しに。


『聞こえます?』


 声には出さずに心の中で会話してみる。


『はい、聞こえます』


 聞こえてるね。


 ここまでくると、この世界の神様ということに確信があるわけではないけれども、声の主が人間以上の存在だということは、さすがに理解した。


 ん?

 となると。

 

『神様の声は、僕にしか聞こえていなかったということですか?』


 普通に会話をしているつもりだったけど、もしかして、心に話しかけられていた?


『はい、ウルクにしか聞こえていませんでした』


 これは、気をつけないといけないな。


 はたから見ると、独り言を喋っている危ない人だと思われてしまう。

 森の中なので、誰も聞いている人がいなかったのは、不幸中の幸いだったが。

 

『今後は、心で会話するようにします』


『分かりました』


 それはそれとして、名前どうしようかな……


 性別は、僕のイメージに近い方を選んだらいいんだよね。

 優しそうな声の雰囲気から、どちらかというと“女神”に近いイメージだったんだけど。


 ん?

 女神という単語を出した時に、ふと、名前のイメージが浮かんできた。


『……では、名前ですが、アリーセスという名は、どうでしょうか?』


『アリーセスですか? はい、よい名前だと思います』


 気に入ってもらえたようだ。


『よかったです。では、今後は、アリーセスと呼びますね』


『はい、アリーセスとお呼びください』


「じゃあ、アリーセスに名前も決まったことだし、そろそろ、出発しようかな」


 まずは生きて森から出ないと。


 今後のことを考えるのそれからだと思いながら、僕は森から脱出するべく歩み始めた。

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