第19話 無事に弟子になれてよかったですね。ジークスの不敵な笑み……
「あなたは?」
火の精霊魔法で観衆が路地裏に入れないようにしているので、この場にいるのは男と獣人族の女の子と僕の三人だけ。
女の子は人見知りのようで、
「俺か? 俺は、ジークス=アルティネラ。この国で自警団の団長をしている者だ」
自警団の団長だったのか……
「あ、僕はウルクと言います」
自己紹介をされたので、自己紹介を返した。
「君も精霊使いなんだね」
ジークスさんがファイの方を見ながら言った。
「まだまだ見習いですが……」
『ウルク』
アリーセスが話しかけてきた。
『何?』
『この人の弟子になって下さい』
今に始まったことじゃないが、アリーセスは時に
『え、どういうこと?』
『本来ならば、明日、自警団を訪ねて、ジークスの弟子になるようにお願いしようと思っていました。予定より少し早まりましたが……。この際、このままお願いしてみてはどうでしょうか?』
『そうなの?』
いやいや、完全に初耳だから。
『精霊がいることでウルクの防御力は上がりますが、魔族と戦うことになった時、あまりにも実戦経験が足りません。精霊の
『それはそうだけど……』
そもそも勇者として戦うかどうかも、まだ決めていない。
とはいえ、既に魔獣と魔人の両方に出くわしている。
今後旅を続けていけば間違いなくそういった
更にはもっと強い魔族と戦うことも考えられる。
経験値は上げておいた方がよいのかもしれないが……
『ジークスは元は聖騎士団長の一人だったのですが、今は事情があって自警団の団長をしています』
『聖騎士団長って、勇者の意思を継いだっていう聖騎士団の団長だったってこと?』
『はい、それもあって、私と近い価値観を持っている人物でもあります』
……聖騎士団長だったってことは相当の実力者だろうし、ここで出会ったのは、確かにチャンスかもしれない。
それに、あの戦い方は、僕が目指す理想形にも見えたし……
よし。
僕は決意を固めた。
「ジークスさん」
「ん?」
「もし、ご迷惑でなければ、僕を弟子にしてもらえませんか?」
「弟子?」
「はい、実は僕、精霊使いになったばかりなんです。実戦経験も
「精霊使いの見習いか、基本的に弟子は
それはそうだ、“元”とはいえ聖騎士団長ともあろう人が、会ったばかりの見ず知らずの人間に突然弟子にして欲しいなんて頼まれて、そう簡単に弟子にするはずが……
「いや、まてよ……、まあ、精霊使いは貴重だしな、いいよ」
「え?」
聞き間違い?
「弟子にしてもらえるんですか?」
「ああ」
まだ信じられない。
いとも簡単に弟子にしてもらえた。
「その代わり、自警団の仕事も手伝ってもらうかもしれないが、いいか?」
そう言いながら、ジークスさんはちらりと僕を見やる。
なるほど、自警団は民間団体だし、人手不足なのかもしれない。
「はい、手伝えることがありましたら」
「よし、じゃあ、利害一致ということで」
ジークスさんがニヤリと笑いながら、握手を交わす。
……何か、いいように使われそうな気がするのは気のせいだろうか……
『よかったですね』
『よかったのかな?』
さっきのジークスさんの不敵な笑いが気になる……
不安は多少残るが、弟子入りは無事に果たせたので、僕はよかったと思うことにした。
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