第23話 ラミーニアちゃん、今まで何もしてあげられなくてゴメンね……。でも、きっと、その分までウルクがたくさん優しくしてくれるはずだよ

 タッタッタッタッ! 


 新しい服に着替えたラミーニアが、少し小走り気味にこちらに向かって来た。 


「ど、どうですか?」


 そう言いながら、ラミーニアは恥ずかしそうにうつむいている。


 普通に可愛い。


 服装が変わるだけで、こんなに印象が変わるものなのか……


 心なしか、表情まで明るくなっているようにも見えた。


「似合っているよ」


「……ありがとうございます」


 ラミーニアが褒められて恥ずかしそうにしている。

 両親を失ってからの境遇を考えると、久しぶりに人から褒められたのだろう。


 憲兵団支部に行くまでは時間があったが、お店に寄るお金もまだ持っていなかったので、しばらく街を散策して時間を潰した。


 

「あ、ウルク様、お戻りになったんですね。お待たせしました。謝礼の準備は出来ております」


 憲兵団支部に戻ると、ラムネシアさんが謝礼のお金を準備して待っていてくれた。

 

 ラミーニアは職質をされそうだったので、外で待ってもらっている。

 

「こ、こちらが謝礼金です」


 ドサッ!


 ラムネシアさんが、奥の部屋から重そうな袋を持って来た。

 中を広げると、大量の金貨が入っている。

 

『そういえば、リゼラミアの通貨の形態ってどうなっているの?』


『主な通貨の種類は、金貨、銀貨、銅貨です。金貨が一番価値が高く、金貨一枚は、銀貨十枚と交換され、銀貨一枚は、銅貨千枚と交換されています』


『なるほど』


 ということは、目の前に用意された通貨は相当な額になるな。


 僕がうなずいているとラムネシアさんが説明を始めた。

 

「中には金貨が千枚入っております。謝礼金は金貨千枚以上となっておりましたが、即金として準備できましたのが、金貨千枚まででしたので、後日、訪問していただければ、残りの詳細分のお金もお渡しさせていただきます」


 そう言いながら、詳細が書かれている用紙も渡してくれた。


「丁寧な対応ありがとうございます。ではまた時間がある時に伺います」


 こちらからもお礼をする。


 僕は謝礼金を魔法の袋の中にしまい、憲兵団支部をあとにした。



「……とりあえず、宿を探さないとね」


「もしかして、私も泊めていただけるのですか?」


「もちろん」


「あ、ありがとうございます!!」


 ラミーニアが嬉しそうな表情をしている。

 

 宿に泊まれるだけで感謝されるなんて……

 

 今まで、どういう生活をさせられていたのか。


 ラミーニアの過去を想い、僕は悲しい気持ちになった。

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