第15話 ノート返却と見覚えの無い幻覚。
バイト帰りの
「はい。数学のノート。今更ながら思い出して良かったよ。そうじゃなきゃ
それは単純に研修前に貸し出していたノートの回収だった。バイト中に板書していた事が話題に上り、
「燃えたとばかり思っていた物が次々と出てくるのな。英語は仕方ないとはいえ」
「ごめんね?」
よく見れば
「いや。ためにはなったんだよな?」
「うん。予習に使えたから助かったよ」
「必要ならコピーしてくるが?」
「いや、止めておくよ。これ以上迷惑はかけられないし」
ツナギ姿なら抱きつく真似が当たり前に出来るが今は制服姿だ。異性として意識すると顔が赤くなりかけるため、今が薄暗い時間帯である事で助かったと思う
しかし
「そうか。まぁ、バイト休みで勉強がしたかったらウチに来ればいいから。教える事くらいは出来ると思うし」
単純に異性として見ているのではなく親友として見ている
それを聞いた
「・・・いいの? 私が行っても?」
「親友が勉強に来る事を拒む親は居ないだろ?」
だが、
「そうじゃなくて!
そのツッコミを受け、ようやく
「あっ・・・まぁ裏から回れば出くわす事は無いんじゃないか? 出入りはガレージだけだし」
「私も一応、単車で向かう予定なんだけど」
「ヘルメットしてたら分からないって」
とはいえ
「私の何処を見て言ってるの!?」
「薄い胸?」
「もう! これでも気にしてるんだからね?」
彼女自身、このやりとりが何だかんだと好きなようだ。
「気にしてるなら普段から押しつけるな」
困った顔で
「い、今、それを言わないでよ」
(くぅ〜。
今までは意識しないようにしてきた。
好きか嫌いかで言えば好きではある。
そうでなければ身体を押しつけるスキンシップなど行わないから。だが、制服姿の時に話す内容でも無かった。今の
その間の
「まぁ気が向いたらでいいから。一応、一言電話してくれると有り難いかな? 妹も何だかんだとハヤシの事を好んでいるから」
「う、うん。中間テスト前に一度、伺うよ。でも、学校では、その、あの・・・」
「気にしなくていいよ。学校でも普段通りでいいから。まぁ・・・過剰なスキンシップさえしなければ問題は無いと思うし」
最後の一言を聞いた
「あったり前じゃん!? 私だって人前では行わないよ! 但し、バイト先は除く!」
「そこは除くな。まぁ普段の俺の事を黙る条件は付くがな」
二人は互いをみつめたまま吹き出し笑い合った。単車はほどよく暖まったのか、
すると、
「いいの? 隠したままで?」
「寮の事もそうだが、女子はともかく・・・男子がウザい事になるからな。それだけは隠しておきたいかなって」
「ああ。お膳立て君が騒ぐもんね」
二人のクラスは女子よりも男子が少ない。
その中でもっとも面倒臭い男子を思い出したようだ。
すると
「お膳立て君?」
聞き覚えの無い名前だからだ。
「転かそうとした馬鹿男子」
「あぁ! そういう渾名があるのか」
「女子の中ではね。
「そうか・・・一応、覚えておこうかな」
「
「あ、あれがクラス委員・・・大変なんだな」
「大変なのよ。仕切りたがるから・・・」
§
そんなこんなで二人の会話は終わり、
「反省だなぁ。地味男君って名指ししてた過去の自分を殴ってあげたいよ。お前の大好きな相手なんだぞって・・・」
背後には厳ついおっさんが立っていたが。
「誰が誰を好きなんだ?」
青いツナギ姿の厳ついおっさん。
顔の所々に油汚れを残し、職場から戻ってきたばかりなのか、左脇にショルダーバッグを抱えたままだった。
「父さん・・・」
それはつい先ほど別れたバイト先の店長だ。
名前は
彼女・・・
「俺が認めた相手以外は許さんからな?」
「父さんが認めた相手だから気にするだけ無駄だと思うよ?」
「そうか・・・それならいいが」
「というかさ?
振り返りながら詰った。
「学校が同じになるだけだからな。出会えば気づくだろうと思って黙ってた」
しかし詰られた父親はあっけらかんと返すだけだった。ショルダーバッグを床に置き、安全靴を脱ぎながら応じていたが。
「普段と全然違うから! まぁ今回は理事長に感謝だけどね・・・同じクラスになったし」
「!? そうなのか? そいつはめでたい!」
「クラス内で争奪戦が勃発しそうだけどね〜」
「なんだと!?」
「父さんも知ってるでしょ? 婚活寮の件」
「ああ。
「そ。父さんが猛烈アタックしている、あの
顔を玄関側に出し、狼狽する父親を眺める。
「し、してないぞ?」
小林家は父子家庭なのだろう。
「どうだか。その
脱衣所に顔を出した父親と入れ替わるようにキッチンへと移動した。おそらく、これから夕食を用意するのだろう。普段はともかくバイトのある日だけは遅い夕食になるようだ。
「が、頑張る・・・」
ともあれ、小林家では小林家で色々と思惑があるのだろう。
§
小林家から戻った
「予習する時間は何とかあるか・・・」
自室の時計をみつめ部屋着に着替えた。
そして夕食を食べにダイニングに向かう。
「メッセージは・・・夕食の事だったか。
そのメッセージの内容は実に不可解だった。
夕食の事まではいいが、最後の方に怪我無かったとか意味深な単語が含まれていたから。
「ま、風邪さえ引かなければ問題はないな」
「きゃあ!」
瞬間に寮の扉が開き、奥から一糸纏わぬ姿の
扉の奥には黒髪ボブの
一体何があればそのような状態になるのか理解出来ない
「何だったんだ? 今の? 幻だな。きっと」
現実逃避するくらいの衝撃だったようだ。
廊下では「見られた」と大騒ぎする
「あまり騒ぐなら時間外は鍵を閉めるわよ? あら? 綺麗になったわね。昔を思い出すわ」
「何処を見てるのですかぁ!?」
「廊下は汚さないでね。
「はーい!」
そう、
「タオルか何か下さってもいいと思うのだけど!?」
『今は裸族しか居ないんだから、そのまま自室に戻りなさい!』
「そんなぁ!?」
『
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