第18話 無意識と妙な安心感。
「それじゃあ、あとでね〜」
「おう。ゆっくりな」
体育の授業を終えた後、
そして男子更衣室に入り──、
「
「次の授業は英語か。身体を思いっきり動かしたあとに座り授業とは、ある意味で苦行そのものだな」
「おい。聞いているのか?」
「しかしまぁ・・・残念過ぎるよなぁ(見た目は綺麗なお嬢様なのに中身が残念過ぎる)」
「無視するなよ!?」
「(あの姿を見たら婚活寮って)意味が痛いほどよく分かったが」
「聞けよ!? 俺の話を!!」
先んじて着替え終えていた男子達から絡まれ完全無視を決め込んだ。彼らは
「んあ? お前も汗掻いたのか?」
この時の
「ほれ、制汗スプレー」
「ぎゃー!? め、眼が、右眼が!」
「お、おい!
「ああ、すまん。そこに居たのか、低すぎて見えなかったわ」
そのうえ──、
「居たのかって・・・なんだよ、その身体?」
誰もが息を飲む上半身を晒してしまい、洗眼中の
制服越しでは弱々しい印象だったが、いざ服を脱がせてみると違って見えた
これも授業前の着替えでは一番最後に更衣室へと入ったため誰もが知る事の無かった姿だ。
「その身体って・・・ああ。別に普通だろ? こんなの真面目に部活していれば身につくぞ?」
「身につかねぇよ!? 格闘技でもやっていなきゃ無理だ!」
「そうか?」
ズボンはさっさと履き替えていたため、太ももが見られる事はなかった。自転車を漕いだ後に筋肉痛を心配していた
「それよりも着替えたなら移動しないと授業に遅刻するぞ?」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇよ!? こうなったら実家の力を使ってでも退学させてやる!!」
「お、おい、そこまでしなくても良くね?」
「学校長が言ってただろ? 全校集会で。実家の権力は使うなって。最悪、A組の馬鹿みたいに
「いや、使ってやる! あいつは俺の顔にスプレーをぶっかけたんだぞ!!」
「あれは・・・
「あん!? 俺は悪くない! 悪いのは奴だ! 大体、委員長との関係を問おうとしたのに、無視した奴が悪い!」
「転入して直ぐに面倒な馬鹿に目を付けられたな。
「だな。短い在学期間だった。馬鹿の
「というか・・・
「た、たまたまだろ?」
「それよりも、遅刻するぞ? 女子達と違って俺たちは」
「おっと、単位に響いたら大変だ」
「ホントにたまたまか? 学校長も筋骨隆々だったはずだが・・・趣味はボディビルらしいが」
「
更衣室に残っていた
§
一方、女子更衣室では──、
「二人ってどういう関係なの?」
シャワーを浴びていた
「どういう関係って・・・ただの友達だけど?」
「友達ってだけであんなに親しくなるわけがないでしょ? 胸だって・・・ホントにあった」
「あるに決まってるでしょ!?」
「見たところ・・・Cはある? 制服越しではAかBくらいにしか見えなかったのに」
「着痩せってレベルの話ではないわね。一体何を食べたらそうなるのか?」
「あまり見ないで、手をわきわきしないで!」
「良いではないか良いではないか。おお、思ったよりも張りがある〜」
「い、
「皆、委員長のブラはCだった!」
「ちょ!?
「予想外のところにライバルが居たなんて」
全裸の
「止めなさいって言ってるでしょ! それよりも着替えないと遅刻するよ?」
「おっと!
「私よりも張りがある・・・」
「
他の女子達も慌てて制服を身につけており、ブレザーだけを身につけていなかった
「ああ。そうだった」
「同じミスはしないよ〜。ノーパンで通学してきた
「あれは
「そうだっけ? まぁ、そのお陰でスッキリしたんだからいいじゃない。意中の彼にも全て見せてたし。四つん這いで真後ろからドーンと」
「ここでその話題は止めて!?」
すると「意中の彼」という言葉を聞いた周囲のクラスメイト達が猛烈な反応を示す。
「クズ男ホルダーに意中の彼なんて居たの?」
「その渾名も止めて!」
「それって誰、誰?」
「まさか噂の幼馴染君?」
「だから!?」
恋バナには目がないクラスメイト達。
最後に更衣室へと戻ってきたが教室に戻るのは
「次は英語だから早めに戻りなさい。注意だけはしたからね? 聞いてる? まぁいいか」
委員長としての職務は全うしたと思いながら扉を閉めた
§
そして翌日。
教室内から席が一つだけ無くなった。
学校へと通学してきた男子達は
「ざまぁないな。この学校は一般生よりも寄付金を多く出す家を優先するからな。短い在学期間だったが、末永く生きろよ」
通学してきていない者を哀れんだ。
その心にも無い哀れみは女子達にも伝播し理解不能を示す者達が多かった。
それは主に〈みなと寮〉のお嬢様達だが。
「
「さぁ? 男子だけで完結した話じゃない」
「昨晩の内に退学させられた話かな?」
「自滅で難癖とか馬鹿の所業だよね」
すると
「・・・今回の件をうけて男子更衣室にもシャワーを設置するってお爺さまから連絡が来たわ」
「へぇ〜。難癖で学校の出費が酷い事になりそうだね?」
「
「え? 加害者って? 自滅だよね?」
「自滅でも危うく大問題に発展しかけたからね。示談金と共にあちらが全額負担するって」
「あわわ。それなら馬鹿息子が辞めただけで実家は丸儲けだね?」
「そうでもないわ。相手が悪すぎて家を残そうと思ったら、婿養子を迎えないといけなくなったって。肝心の嫡男は出家コースだそうよ」
「あらら。それは災難だ」
女子達は辞めた者を内心で拝み、男子達はきょとんとしたまま理解不能となっていた。
というところで後ろ扉が開き
「それは災難だったね?」
「無意識が如何に恐ろしいか理解したわ。母さんが実家で平謝りしていたのを見ると、スプレーは危険と思ったし」
男子達は居なくなった者と思っていた
「何で奴が居るんだ?」
「一般生だろ? 何で残っているんだよ?」
「という事は・・・
「う、嘘だろ?」
「それで、ご実家からは?」
前には
すると
「額が額だから俺の卒業後に家業を手伝う事で話が纏まったらしい。母さんも今回の件で最大限の弱みを握られて、祖母がしてやったりの顔で俺に抱きついてきたわ。恐ろしく若い祖母だったけど」
「それはまた・・・それで家業って?」
「不動産業だよ。整備士免許を取った後でもいいかって聞いたら宅建と並行で取得しろって。母さんも同じように取得したから出来ない事はないだろうって」
「あらら。無茶な要求が出たね?」
「まったくだ。
「授業の後まで面倒が降り注ぐって」
「気が休まらないな」
そう言って
(あら? ご実家の事・・・御存知だったのね)
「それでシャワーを設置するって話に繋がるのね。スプレーが原因だから、汗を流して合流しろと。体育の後の授業も少しずれ込みそうね」
突っ伏した
「今回の件でそういう提案をしたって母さん経由で聞いた。系列の工務店を使うそうだから費用は掛からないらしいが・・・気が重い」
自身が招いた事。それが
実は他にも条件を付けられそうになり──、
(意中の相手が居ない場合は
それらは
唯一、落ち着ける相手が誰なのか? 無意識ながら気持ちが傾きかけた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。