第19話 夏日と不意打ち。
退学劇が繰り広げられた日から数日後。
校内は衣替えが行われ、上着はブレザーから指定セーター、シャツまたはブラウスのみとなり、男子は夏ズボンを着用するようになった。
女子はスケベな視線を気にして、ブラ透け対策として指定セーターを着る者が多かった。
「暑い季節になったねぇ〜」
「こう暑いと輻射熱が恨めしくなるな」
「お兄ちゃん、帰りにアイス買って!」
「私にも奢って!」
「へいへい。二人分のアイスだな。コンビニでいいか?」
「「ありがとう!」」
それと共に中間試験の話題で持ちきりとなった。それは学年トップに居たとされる
前回の学年末総合では、二位に
そんな浮ついた校内で我関せずを貫き通す
「バイトも今日から休みになったな」
「そうだね。それで勉強会はどちらで開く? あれなら私が向かってもいいけど?」
それは試験勉強の事だろう。
「そうだな。今日は平日だし・・・俺達が
「私の事なんて気にしなくてもいいのに」
「流石にそれは店長に悪いよ。とりあえず、一度帰宅してから向かうから」
一応、お嬢様達からも勉強会を開いて欲しいとの要望もあったが、個々の学力を把握出来ていない内は教える事もままならないため、
「それなら、夕食も含めて用意しておくよ」
「
「構わないよ?
「それなら二人分を追加で頼めるか?」
「問題ないよ。いつも通り用意しておくよ」
一通りの話し合いを終えると
しばらくすると
「お待たせ。バナナアイスは
「「ありがとう」」
三人は身体の熱気を逃がすようにアイスを口に含み、真新しいスプーンで食べ比べした。
「ほんのり甘いチョコもいいね」
「バナナの甘みが身体に染み渡る〜」
「ストロベリーも程よい酸味だな」
三人の幸せそうな雰囲気を見ていた他の学生達もゴクリと生唾を飲み込み、一様にカップアイスを買い求めた。流石にイートインスペースへと入るのは気が引けたのか、入口前で側頭部を叩く者が多かった。
すると
「それとさ、今度の休み・・・水着を買いに行かない? 勉強会の前に」
「水着か。どのみち必要だし行ってもいいか」
試験休みに
「私も新しい水着欲しい! もとちゃんの実家へ泳ぎに行こうって話になってたし」
「それなら少し早めに合流して買い物を済ませましょうか(サイズアップしてるといいな)」
「そうだな(
それぞれの思惑はともかく、アイスを食べ終えた三人はコンビニ外にて帰宅準備を始めた。
その間の
「いいなぁ〜。アイスの買い食い・・・」
「
「こういう時、自分の立場が恨めしくなるよ」
「その気持ちは分かりますが、不謹慎です」
送迎車に乗れない者からすれば逆に羨ましいと思われる光景だが
「私達も自転車通学にしない?」
「それは賛同できません」
「
「ご自分の立場を理解して下さい」
土地成金の
「その理屈が通るなら、あの
「そ、それはそうですが・・・三人?」
「
「それが出来るなら苦労はないですよ。送迎車に乗っている事がバレると面倒が押し寄せて来ますから・・・一時期の私みたいに」
「そういえばそんな事もあったねぇ」
「あの時は実家の権力総動員で追い払ったね」
「その節はお世話になりました」
「ホントにねぇ。確かにあれを思えば必要な対応なのかもしれないね〜」
「お恥ずかしい限りで」
二人の会話は実に意味深。
気がつけば送迎車は寮前に到着しており、
「どうぞ、お嬢様」
「ご苦労様。今日から勉強漬けの毎日だねぇ」
「そうですね。学科毎に内容は異なりますが」
「基本的な部分は同じだけどね? 今回の総合は誰が一番になるのやら?」
背後には
「見事な黄色でしたね」
「そうですね、お嬢様」
何が黄色なのか意味不明な会話だった。
「勉強、頑張ろっか?」
「そうですね、お嬢様」
直後、ガレージのシャッターが開き
これから学校以外の会合に出るのだろう。
§
それから数十分後。
「着替えたら直ぐに出発だからな〜」
「りょーかい!」
「黄色いパンツが丸見えでやんの・・・デイパックとの隙間にスカートを挟まなくても。まさかコンビニからずっとあの格好だったんじゃ?」
意図せず露出行為に及んでいた妹を心配しつつ室内に入ると、
『うそぉ! 私、この格好で自転車漕いでたのぉ! よりにもよって見せたらダメなパンツじゃん。こんな事なら縞パンにすれば良かった』
おそらく姿見に映った姿から気づいたのだろう。
ノートも英語と数学以外は新しく書き写した物だ。流石に最初期の板書は無かったため、勉強会のついでに
「着替えたか・・・?」
これは
しばらくすると黒ストッキングと水色のキュロットスカート、薄手の白ブラウスを着た
ただ、
「うん(衆人環視下でパンツを見られた)」
「今後はスパッツを
二人でガレージに移動しつつ、単車に鍵を挿し、シャッターを開けた。
「うん。そうす・・・何でお兄ちゃんがそんな事を知ってるの? スカートの中を覗いたの?」
だが、
「本人から聞いた」
「そんな事まで話してるんだ・・・
「まぁ付き合いが長いからな」
「お付き合いはしてないのに?」
「ただの友達だ」
「ただの友達ねぇ?(
それは同性だから分かるのだろう。
後部座席でしがみつく
(鈍感なお兄ちゃんをものにするには視覚ではなく肉体接触が一番だろうな。見なかった事にして視線を逸らすし、胸は私以上でないと気づけないみたいだし・・・)
自身の胸を背中に押しつけながら
(今日は薄着だから店で上着を買ってやるか。無駄に冷えて風邪でもひかれたら大変だし・・・)
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