第22話 室内改修と地雷回収。
そして翌日。
この日の〈みなと寮〉は少し騒がしかった。
「一応、リフォーム可の造りにしていて助かったわね。少しの改良で間取りを変える事が出来るから」
「お嬢さん。準備が整いました」
「お嬢さんって・・・この歳で言われるとは思ってもいなかったわ」
「私達からすれば本社のお嬢さんには変わりませんって」
「それもそうね。では始めて貰える? 子供達の荷物は寮区画に移動させておいたから」
「助かります。おい! 始めるぞ!」
「うっす!」
(二人の部屋は前より狭くなるって伝えたけど、元々使い切れて無かったし丁度良いわね)
この日は従業員の
例外はベロンベロンになっていても翌日にはけろっとしている
完璧超人と思えるほどの
唯一の弱点は過去を突かれる事と子供だけ。
現場を一時的に離れ、中庭の窓を開けた
(クズの捜索も難航しているらしいし、そのまま現れなければいいけど。元はと言えば、ツーリング先でクズを拾ったのが間違いの始まりよね。何で惚れちゃったかなぁ〜。箱入り娘だった事が災いそのものだったのね・・・あの子達の遺伝がそこまででは無かった事が救いだけど)
それは過去の事。昨晩のやりとりで思い出した汚点だ。その汚点があっても生まれてきた子供達には関係なく、どのような形であれ、助けていこうと決意した
(幸い・・・
「これも
普段はサイドカーの背後に隠れていた物だ。
カバーを外した
(失踪中の
そして失踪する三日前、実家で子育て中の
(
(あの家では扱いきれない地雷。
ガレージから出た
(まぁ他家の事は置いといて。軽トラが一台入るからガレージのスペースも空けないとね。今後は、あの子達の自転車も寮の駐輪場に止めさせますか。今は誰も使ってないし、ガレージの勝手口から出入りさせたらいいでしょ)
肝心のリフォーム作業は問題なく進んでおり、昼前には完了する見通しだった。
「確か、鍵が101号室のポストに。あ、あった。世話にかまけて回収してなかったのね・・・あ、これは不味いわ。これだけは隠さないと」
「このタイミングで送ってきて。今は隣街って。近くに居るなら顔くらい見せなさいよ。バカ弟が」
「反対か・・・気持ちは分かるけどね。認知していない者が言える立場ではないでしょ。あの件も何処で知ったんだか。職場は・・・学食って」
その内容を見て頭痛がした
「こら!
『何で姉さんが電話をかけてくるんだよ!』
「何でって寮母だからよ! ポストの中がいっぱいだったもの。回収するのは当然でしょ?」
『あのバカ娘が』
「バカ娘って面識は無いでしょ? 認知もしてないし」
『認知はしているぞ。養育費も口座に振り込んでいるし・・・そ、それよりも、何用だよ? 今は仕事中なんだが?』
「認知してるって。まぁいいわ・・・単刀直入に言うわ。近くに居るなら顔くらい出しなさい! 母さんが一番心配しているんだからね? 兄さんは・・・待って? 兄さんは知っているの?」
『し、知ってはいるな。職場の上司でもあるし・・・認知から何からの手続きは兄貴がして』
「(はぁ?)・・・この男共は」
『わ、悪かったって。でもあのまま家に居たら、好きな料理が作れなくなると思って・・・』
「は? 料理?」
『ああ。夜中だけだがバイトしていたんだ』
「まさかだけど、歳を偽ってないわよね?」
『し、仕方ないだろ! 俺が老け顔だったから雇ってくれて、そのまま住み込みで・・・』
「・・・」
理由を聞いた
『幸い、理事長とも和解が出来たから、俺もこの場に居るんだ・・・』
「わ、和解? じゃ、じゃあ反対って件は?」
『本人の意思で拒否して貰うために手紙を書いた。理事長もこの件は知っている』
「ど、何処からつっこめばいいか分からない」
『いや、言いたい事は分かるが』
「これだから男って奴は・・・まずは順を追って説明しないと。この文面だけでは理解出来ないわよ。それこそ家の者に調査を依頼しかねないわよ?」
『そ、それは・・・まぁそうなんだが』
「まずは父さん達に相談することね。父さんが心労で倒れそうだけど、こればかりは仕方ない話だわ。そののち実家を通じてあの子の家に話を通すこと! 婚姻の段階になって義理の娘が
『あ、ああ。
「それはそうでしょ? でもね? 戸籍を取れば一発でバレるわよ」
『わ、分かったよ。昼の大嵐前に、兄貴に相談して話を通してもらうよ』
「そうしなさいね。それと、私も再婚するからご祝儀としてアンタの原付を譲り受けるから」
『はぁ!? どういう事だy』
おそらくポストの中に隠していたのだろう。
「ホントに、ややこしくなったわね」
気づけばリフォームは終わっており、扉の外に現場監督が立っていた。
直後、
「ん? 失礼・・・え? 見つかった? あらら。マグロ漁船に乗っているのね。今は太平洋上で遠洋漁業か・・・しかも写真付き」
それは
(ま、しばらく戻って来ないなら、それでいいか。当面は・・・寮生の問題だけになるわね?)
§
同時刻。
校内では──、
「委員長が
体育後の女子更衣室にて、全裸の
それは〈みなと寮〉の寮生ではないクラスメイト達だ。〈みなと寮〉の寮生は
「両親の再婚だから仕方ないの」
「再婚かぁ〜。ということは迫れなくなるね」
「誰が誰に迫るっていうのよ?」
「ん? 委員長が
「ふぇ?」
「バレていないとでも思ったの?」
「
ちなみに、このクラスでの一般生は
「・・・(これは、カマかけよね?)・・・」
無表情で沈黙する。この場で余計な事を言うと酷い目に遭うと思ったからだ。
しかし、
沈黙を同意と取られたのかもしれない。
「あれだけスキンシップが激しかったら気づかない者は居ないでしょ? お尻とか胸とか当たり前に触らせていたし」
「そうそう。流石は
「血のなせる技って感じだね?」
「
それを聞いた
目が泳ぐ
「バレちゃった!」
「ちょ!?」
「私の従姉って事が、実家を通じてバレちゃった!」
「なんてことなの」
「女子の家しか知らないから安心していいよ?」
「安心出来ないわよ!?」
(
これも
肝心の
(いいなぁ。私も押しつけて感じてみたい)
一方、男子の方では話題にすら上らず沈黙のまま着替えていた。ただ単に教える必要が無いと
(女子は今日も大騒ぎだな・・・隣にまで騒いでいる声が響くとは。内容が一切聞き取れない事が救いか・・・な?)
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