第14話 美化と寒気。
この日の授業は全て終わり、
一方、
「では、
「はい。お嬢様」
送迎車は発進し学校の敷地から外に出る。
「ほ、本当によろしいので?」
「放置する方が悪いのです」
「じ、自分で出来るのですが?」
「自分で出来ないから、あのような品性の欠片もない状態になっているのでしょう? 何度も同じ事を言わせないで下さい」
その後も男性である運転手に悟らせないようオブラートに包み、二人は会話を繰り広げる。
途中で
すると
「お兄ちゃん? 今朝見たモノ覚えてる?」
「今朝見たモノ? なんだそれ?」
この時の
「なんだそれって、
「タ、タワシ? タワ!?」
「あらら。忘れていたのね」
「急に思い出させるなよ!」
端から見たら美形カップル。徒歩通学する女子生徒達は呆然としたまま、通り過ぎる二人を眺めていた。元々美形の
「お兄ちゃんも少しずつ免疫付けておいた方がいいよ〜? 私はともかく、寮内には他にも変態が沢山居るから」
「へ、変態が沢山だと?」
「そ。表立って言えないような変態が沢山。日曜日は特に注意が必要だから、慣れていない内は廊下の内側を歩いてね? 庭側のカーテンが開いていても、気にせず素っ裸で歩き回る先輩達が居るから。寮に女子しか居なかった事がある意味で原因になってる話でもあるのだけど」
「そ、そうか。気をつけるよ」
その後の
(そういや、今日は出勤するって言ってたな。ハヤシの奴・・・単純に注文していた部品目的なんだろうが)
それはバイト先の女友達。一応、女性なのだが
ともあれ、
§
一方、エステサロンへと立ち寄った
「き、聞いてません! ここまでするって!?」
「良かったじゃない。綺麗になって。これで仮に見られても恥ずかしくないでしょ?」
「べ、別の意味で恥ずかしいです!?」
素っ裸の
それは事後。何があったか知らないが
今は二人で泡風呂に入り、口論していた。
「別に良いでしょ? 私も同じだし」
「同じであっても・・・いえ、お嬢様は(視線に)鈍感でしたね」
「ど!? 色んな意味で鈍感な
「私は鈍感ではありません!?」
「今朝の事、もう忘れたの? ストッキング越しとはいえタワシを晒して。昨日もお尻を」
「おしっ!? 昨日も見られていたのですか・・・」
「鈍感という言葉はそっくりそのまま、
「ぐぬぬ」
結果、二人の口論は
すると
「それで、お二人はどういった関係なのですか?」
局所的に慣れぬ状態へと変化した
「か、関係って?」
ただ、気泡の所為か少し顔が赤かったが。
「クズ男ホルダーの
「へ、変な渾名を付けないで下さい!」
「もう遅いです。これは校内では当たり前に呼ばれている渾名ですから!」
「そ、そんな。あ、あんまりだわ」
「渾名が覆せないのは諦めなさい。入学から延々とクズ男の面倒を行ってきた貴女が悪いのですから。それよりも本題、いいですか?
それはこの場でしか出来ない話題だったからだろう。
今はクラスメイトの二人だけ。
他の取り巻きも担当もこの場に居ない。
「本題・・・ああ。私達の関係でしたね。
「そ、それって噂の幼馴染?」
「噂って・・・まぁそういう事です」
「何か理由があるのですか? お二人が隠す理由もそうですが」
「わ、私が父方の従妹という事が嫌悪するに足る理由ですね」
「は? い、従妹?
「いえ。正確に言うと、私の実父の方ですね。母は私の親権を大金はたいて買い取って、
「ああ。そういう事でしたか。今は縁なき関係であっても、嫌悪する。なるほど・・・」
「二人も私の中の
「それで同族嫌悪と・・・でも、それなら
「彼は別です。昔、父の虐待で溺れた私を救ってくれましたから。だから、あの時の恩をこの身体を使ってでも返さないといけないのです」
二人の関係はもの凄く重い関係だった。
救われた方は忘れず救った方は忘れている。
何とも救いようの無い話だが
(命の恩人って事でしたか、これは重い。だからクズ男を彼と思って面倒を見てきたと・・・)
だが、現実はクズ男とは真反対だったため、
§
一方、エステサロンでそのような一幕が繰り広げられている事を知らない
「おはようございまーす!」
「おはようさん!」
店内にはいつも通りの従業員達と店長がおり、店奥から薄い胸元を晒したバイトが手を振っていた。
「おっす!」
「ハヤシは今日も早いな」
「早いとか言うなよ! これでも学校から飛ばして来たんだからな?」
「自転車で?」
「自転車で」
「スカートが盛大にめくれてそうだな?」
「ちゃんとスパッツを
「そして小ぶりなお尻が丸見えと」
「それセクハラだからな?」
「お前からその発言が出るって余程だぞ?」
「私だって女なんだから少しは・・・」
「はいはい。着替えてくるよ」
二人のやりとりは勝手知ったる仲という感じだった。このハヤシと呼ばれたバイトは黒髪ショートヘアを帽子で隠し、化粧を洗い流したすっぴんが綺麗な美少女だ。しかも
普段は学業を優先し滅多に顔を出さないが週に数回顔を出す一風変わったバイトである。
「そういえばロッカーの名字が変わっていたけど、何かあったの?」
「ああ。実父が失踪したんでな。母方の姓に変えて貰ったんだ」
「幸か不幸か、ついに噂の母親と同居かぁ・・・」
「不幸ではないな。お陰で・・・いや、別の意味で不幸か。転校したし」
「は? どういう事?」
この時の二人は店長の指示で裏の倉庫へ向かい、オイル缶を取り出していた。
そして裏の倉庫から表に戻る最中──、
「どういう事も何も、ハヤシの通う学校にな」
「ふぇ?」
ハヤシがきょとんとする話を
「どうした?」
問い掛けられたハヤシは
「(え? 待って? 転校? 名字から小が消えてた? えっと・・・つまり・・・)ううん、なんでもない」
ハヤシの表情は覚えがあるようでないような何とも言えない雰囲気が漂い、最後は思い至ったのか真っ赤な顔に変化していた。
「変なハヤシだな?」
後から歩んでくるハヤシは黙って後ろ姿を眺めた。それは何とも言い難い気分なのだろう。
(うそぉ。あの彼が
何気にこのハヤシも残念女子だったらしい。
普段は男勝りな雰囲気だが、この時ばかりは女の顔に戻っていた。
その名は
昼間にツンケンした委員長、その人だった。
(職場は職場。学校は学校よ。
ともあれ、ハヤシの中では何らかの不安が残ったが、不安よりも友情を取り実行に移した。オイル缶を手渡して待機場に戻った
「今日も頑張ろう!」
「どうした? いつにも増して元気だな?」
「何ならお尻も触る?」
「おいおい。先ほどの話をそっくりそのままお返ししようか?」
「それはそれ、これはこれ!」
「なんだそりゃ?」
表情を察しさせないよう薄い胸を押しつけて。
「け、今朝のお詫び?」
「今朝? どういう・・・まさか?」
「案内を放棄して、ごめんね?」
「お前があの委員長かよ!?」
「てへぺろ!」
「印象が変わりすぎだろ?」
「それは、お互い様じゃん!」
確かにお互い様だった。
互いに普段の姿しか知らないのだ。
その代わり、
§
「ん? 寒気が・・・気の所為かしら? やっぱり・・・スッキリしたから?」
「どうしたのです?
「な、何でもありません。どうぞ、お嬢様」
「ありがとう。そうそう、帰ったら存分に晒してあげなさい」
「お嬢様!? 私にだって人並みの羞恥心はありますから、それは絶対に行いません!」
「貴女が行わなくても
「ぐ、ぐぬぬ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。