第12話 案内と洗礼。
「一体なんだったのですか? 先ほどのセクハラは?」
「気づいていないのなら、知らない方がよろしいですよ。知ったら最後、つらい事になるのは
その後の
「一体なにが?
「・・・」
「殿方に聞くのは野暮というものですよ?」
「・・・」
「野暮って・・・教えて下さらないから聞いたまででしょう?
「それは賢明な判断ですね。謝らないよりも謝る方が異性として信じられますから。見て見ぬ振りする者ではなかった事が幸いですね」
「・・・(どう反応していいかわからん)・・・」
「それと、スカートの中に入ってゴソゴソする事と、どう繋がるのか・・・?」
その時に穿いたかどうか思い出せずに固まり、脱衣所のカゴから取り出した覚えがない事を知る。その途端、徐々に真っ赤に染まる顔。
仕舞いには涙目に変わり・・・咳払いした。
「いえ、私の事よりも本題と致しましょうか」
「急に話題を変えましたね・・・まぁ良いでしょう。それよりも夕方は時間を空けておいて下さいね。エステサロンに連行しますので」
「ほ、本気ですか?」
「本気ですよ。女の子として終わっているのです。最低限の身なりは整えないと」
「そ、それは・・・自分でも出来ますので」
「出来ないからモッサリなのでしょう?」
「そ、それを彼の前で言わないで下さい!」
「もう遅いのでは? 直視されてますし」
「うぐぅ」
「・・・(居たたまれない)・・・」
それは校内案内という雰囲気ではなかった。
片や理事長の孫、片やクズ男ホルダーもとい異性関連では話題に事欠かない問題児だ。
「あの二人が一緒って珍しい」
「寮が同じってだけなのに」
「というか間の地味男君は誰なんだ?」
「見た目的には不釣り合いよね・・・」
「中身が残念だからちょうど良いと思うけど」
「それを聞こえるように言ったらダメ!」
「おっと、にらまれた・・・」
今はまだ学生棟。
全体を巡るには時間が足りなすぎた。
たちまちの
「そうですね・・・合間合間の休憩で回れるところだけ向かいましょうか。移動教室で見られるところも御座いますし」
腕時計をみつめつつ先々の方針を固める。
一方の
「そうですね。我が校は無駄に広いですし、それが無難でしょう。たちまちは職員棟に向かって手続きを終えた方が良さそうです」
「そうしましょうか。とりあえず・・・教室に着いたら普通科の子を見繕いますかね?」
だが、ここで
「いえ。私が案内しますよ?」
それを見た
「何を仰有っているのですか? 家政科の
「それを言うなら商業科のお嬢様も同じではないですか?」
「ですから、移動教室に関しては普通科の子にお願いするのです。分担として!」
「そう言いますが分担される子達はお嬢様の取り巻きじゃないですか?」
「たまたま普通科の子が居るだけでしょう?」
またも二人は口喧嘩に発展した。
衆目を浴びようとも我関せずで喧嘩する。
中心で引っ張られる
(心頭滅却すれば火もまた涼し・・・ってそうじゃない! 弾力がすげぇ。右腕は跳ね返りそうだし、左腕は包み込むようだ・・・)
腕へと感じる感触に終始アタフタしていた。
胸は
制服越しに挟まれている
(こうなったら・・・
それはそれでどうなんだ?
と、思うような対応に出ていた。
そうでもしなければ元気になるからだ。
今朝は
そのうえ感触まで食らわせられれば耐えられるものではなくなるから。
§
そんな話題の尽きない有様の
ただ、その際に──、
「まぁ・・・頑張りなさい」
事情を聞いた職員までも二人に丸投げしてしまった。
それだけ、あの二人を怒らせる事が出来ないのだろう。
教師の態度からも手出し出来ない相手だと。
その後、遅れてやってきた担任に連れられ、教室に移動した
全クラスはAからZまであり、各教室には普通科を始め各科の生徒が一纏めにされている。
授業の際は関連する教室へと移動し、一般常識などの共通項目がある授業は各教室で行う。
そのため時間割は各科毎に決まっており教室にはそれぞれの時間割が貼られているようだ。
反対側には一年棟もあり、よく見ると気づいた
「では早速だが転入生を紹介する・・・」
「先生! それって女子ですか?」
「残念だが男子だ」
「えぇ〜。男子は要らないから他のクラスに差し上げて下さい! 女子なら歓迎ですが!」
唐突な転入。それは女子はともかく男子には不評だったようだ。そうでなくても男子の数は少ない。C組の生徒は家政科が多く、次いで商業科が多い。普通科は味噌っ滓しか居らず、普通科全体の比率で言えばA組、G組、M組、S組、Y組に多くが割り当てられている。
本来なら
「無茶言うな。理事長権限で決まった事だ。文句があるなら
それもあって疑ってかかる者が居ても不思議ではない。現にC組には孫が居るのだから。
「理事長。
「するわけないでしょ!?
「へいへい」
一方の女子達は今朝の噂が広まったためかワクワクという素振りだった。寮生は顔見知りとなっているため、そこまで気にしていないが。
但し、噂の発端となった二名は除く。
担任は教室内が少しだけ静かになった事に気づき、廊下で待つ
「じゃあ。入ってこい。
女子達はどんなイケメンが入ってくるのか楽しみにしていた。しかし、その願望は無残にも打ち砕かれる事になる。
「失礼します」
「!!」
男子達は興味無しの表情で授業の準備を始め、女子達は一部を除いて落胆していた。
現れた者が地味系男子だったから。
しかも長身なのに猫背でありオドオドとした雰囲気を宿していた。
「初めまして。
「との事だ。彼は一般生徒という扱いだから、関係者は仲良くしてやってくれ。所属は普通科だな。他に何か言うことないか?」
「特に・・・」
「そうか。席は・・・一番奥、
「一番奥・・・わかりました」
「・・・男は不要なんだよ」
ボソッと呟く男子が
おそらく転かしてスカートの中を覗いたと騒ぐつもりだろう。
前に座る
すると
「!!? ぎゃー!」
「あ、すみません。踏んでしまいました。足、大丈夫ですか?」
「あ、あ、あし、足が!」
思いっきり踏んづけてあげた。実に古典的な嫌がらせだ。背後の
「骨は・・・折れてないようですね。良かった」
「痛い痛い痛い! よ、良くねぇよ!」
「すみません。徹夜が祟ったようで。寝不足はよくないですね〜。気をつけないと」
ただ若干、棒読みとなったためか相手に気づかれたらしい。わざと踏んだ事を。
「てめぇ!? まさか!」
「何のことでしょう?」
「気づいていやがったな!?」
「はて? すみません眼鏡の度があってないようですね。あ、曇っていたみたいです」
「こんちくしょう!」
直後、担任は困り顔でやりとりを無視した。
「時間が勿体ないから手短に言うぞ〜。体育祭実行委員! 夕方に委員会があるから集合するように。それと
「「はい!」」
「まてまて! 普通科の
「「「「えぇ!?」」」」
そう、無視したのだ。
委員長と呼ばれた女子は嫌々な表情で応じる。地味男子はお呼びでないという事だろう。
「はぁ〜。わかりました・・・委員長の小林です。よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします」
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