第5話 寮の内観と学校。
寮生が出払った〈みなと寮〉は閑散としていた。全員が出払った事を確認した母は母屋の廊下のカーテンを全て開ける。そこには夜の内に見えていなかった大きな庭が拡がっていた。
一見するとフットサルでも出来そうな一面緑の芝生だった。実際に窓ガラス寄りにはネットが張れるポールが何本も立っており相当な額の金がかかっている風でもあった。
リビングから自室に戻る最中の
「ほへぇ〜。マジか・・・」
言葉で聞いてたよりも大きな造りとなっている女子寮・・・余程の事が無ければ行くまいと思ってしまう
余程の事とは男手が必要な力仕事だけだろう。もっともそういう仕事があればの話だが。
廊下から自室に戻った
「母さんが店を開けて、従業員が来るまでは動けないか。勉強道具も無いし、何するか? スマホでソシャゲしか出来ないな」
布団は敷きっぱなしだが、現状何も無い部屋ではどうする事も出来ない。宿泊研修で勉強でも出来ていれば問題は無かったが、この研修は一・二年だけが強制参加する勉強とは無縁のイベントだったため後悔しても意味は無かった。
すると
「ん・・・この感触は?」
布団の中をごそごそと探る
おそらく
「あんにゃろう・・・脱ぎ癖は相変わらずかよ」
「女子寮っていうから油断ならんし。変な疑いは掛けられたくないぞ?」
「ん? 従業員が来たのか。従業員もガレージに自転車を置くんだな」
そこには年増・・・と呼べそうな見た目の女性が自転車を置いていた。若干、頭が痛そうな素振りで、ガレージ脇の扉から室内に入る。
その時点で従業員も帰宅していたから。
「でも・・・何処かで見た事のある人だよな? 誰だっけ?」
そう、ボソッと呟くと──、
「
半開きの扉の脇から母が顔を出した。
従業員が来た事で出かけられると踏んできたらしい。
「あ、
「その行き遅れね。まだ貰い手が無いから毎晩お酒で愚痴りまくりよね〜。酒さえ飲まなければ貰い手もあるのに飲んで脱いで醜態を晒して・・・毎回ごめんなさいされるという・・・」
「変わらないんだ・・・」
「あれから数年経ってるけど変化はないわね。三十路なのに」
大半は成人で未成年の男子は
それほどまでに恐ろしい事はないであろう。
母はそんな
「ま、近いうちに紹介するし、その時までに覚悟だけは決めておきなさい」
「うへぇ」
「さて、出かけるわよ。準備は朝の内に済ませているから、車に乗るだけでいいわ」
「へーい」
母は扉が開くとエンジンを始動させる。
「今日は隣の市役所を回って、その足で撮影に向かうから。昼は何処かで昼食としましょうか」
「母さんに任せる」
「希望を言ってもいいのよ?」
「俺がスケジュール管理してるわけじゃないから、希望が通るか分からんだろ?」
「それもそうね。まぁ・・・今日はさほど大変ではない撮影だから問題はないでしょ」
「大変ではない・・・ねぇ?」
一体、何処の撮影をするつもりなのか?
それだけが謎と思う
§
一方、補習に間に合った
(
これからホームルームが開始されるのだが、
「何かあったのかしら?
「
「
「他校に通う、お兄さん絡みよね・・・?」
「
「
それは一般中学から一緒に受験した友達だ。
一名ほど派手な容姿の男子が会話に参加しているが、全員から完全無視されている。
「その二人も犬猿の仲だけど」
「
「違うって。あれは世話好きなだけで、付き合うとかいう話じゃないらしいよ?」
「そうだっけ? 先日も
「聞いた聞いた。どうせその幼馴染もクズでしょう? あの先輩って見る目だけはないから」
「
「・・・母さんがどのタイミングで依頼するかよね? 近日の休日となると創立記念日?」
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