第6話 日課と新生活の恐怖。
そして夕方。
母の助手として働きまくった
「帰りは何時頃?」
「閉店が二十時だから、昨日と大差ないかも」
「そう。今日も歩き?」
「ん〜?」
そこには店長が両腕で丸を作っており──
「単車の修理が完了・・・してるみたいだから、昨日よりは早く帰ると思う」
疲れが見える顔のまま笑顔を作る
「わかったわ。それと・・・新しい住民票を渡しておくから、車検証の変更を依頼しておきなさいね」
「ほーい」
整備は店長や正社員が行い、その手伝いを行っているに過ぎない
すると店長が更衣室に顔を出し──、
「まさかとは思うが・・・さっきのは彼女か?」
ニヤニヤ顔で問い掛けていた。
「店長・・・彼女に見えます? 御年四十七才の妙齢な女性が?」
それは息子だから知る、母の実年齢だ。
本人が聞けば
すると年齢を聞かされた店長はきょとんとした。
「へ?
「店長・・・言っておきますけど。いえ、引っ越したので、住民票を渡しておきますね」
「住民票? あぁ。使用者情報の変更だな。分かった・・・ん? 名字が違うぞ? お前、
その際に昨日の出来事を軽い調子で打ち明けた。
「何でって、いろいろあって実父が失踪したので、母の家に引っ越しただけですが?」
「失踪!? というか母って・・・まさか?」
「ええ。そのまさかです・・・
「お前、
「紆余曲折経て離婚してますからね・・・俺は父方の方に引き取られて、最近捨てられましたから」
「そうか・・・それは不運だったな」
「いえ、むしろ幸運でしたね。単車を壊した者と離れる事が出来たので」
「そ、そうだな。愛好家にとっては最悪の部類だものな。そういう事なら早急に手続きしておこう」
「たのんます。店長」
そう、
「「「おつかれっした!」」」
「全員、気をつけて帰れな〜!」
その後の
今後は家賃を払わなくて済む分、少しばかり余裕が出るだろうが。
帰路に着く
(そういや着の身着のままで来たから寒いな)
それはジャケットを家に忘れた。
否、アパート火災に巻き込まれて灰となってしまった。
店に入った
「流行はともかく、寒くない物を・・・って春物しかねーな。時期的に夏物も出回る季節か。こりゃあ長袖を中心に選ぶか。ジーパンを数着と下着、靴下とデイパックも忘れずに」
結果、購入物品は結構な物量になった。
「ですから!
「門限なんて無視すればいいじゃねーか」
「そうそう。どうせ暇してたんだろ?」
「買い物してないし、見て回るだけなら俺たちと遊んでくれたっていいだろ?」
「はぁ〜。部活帰りで立ち寄って直ぐに買い物も何もないでしょう!? 入ろうとした矢先に声を掛けてきておいて、その言い草はおかしいのでは?」
「あれはナンパか。こちらの制服は近くの底辺高校か? 程度が知れるとはこの事か」
注視はするが干渉しようとは思っていないらしい。ここで
「お嬢様に何をしておいでですか?」
これは在校生である
「なんだてめぇ?」
「俺たちの邪魔するなよ」
「関係ない者はおととい来やがれ」
護衛も同じ女子制服を着ており、リボンの色だけが異なっていた。ナンパに遭っていた女子生徒は赤色、声を掛けた者は青色、普通科の
赤色は商業科。青色は家政科だ。男子の場合はネクタイがその色で統一されている。
他校の男子の発言を聞いた女子はため息を吐きながら返答した。
「それはそっくりそのままお返ししますね」
だが、話は通じておらず逆にしげしげと覗き見られる始末である。
「よく見ればお前もいい女じゃねーか」
「一緒に遊ばねぇ?」
「俺たちと良いことしようぜ?」
「下半身に脳みそがあるような言い回しですね・・・警察を呼びましたので、そのまま捕まってください。婦女暴行未遂という事で・・・キャー!? 痴漢よ! 助けて!!」
その直後、周囲に人だかりが出来る。
「「「はぁ!?」」」
声を聞いた者達は男子達を相手に冷ややかな視線をぶつける。
シールド越しの表情は女子が怖いとでもいうような怯えが見え隠れしていた。
それまでは、お手並み拝見というようにエンジンの暖機運転を行っていたが警察が来たところで車道に出た
「冤罪こえぇぇ・・・間違ってもあの学校の生徒をナンパするもんじゃねーな。やっぱ、女より単車に跨がるほうが無難だわ」
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