第8話 記念撮影と遭遇。
制服が届いた
自室で着替えても良かったが、二人は気にしない素振りだったため、リビングで着替えた
実はこの後、生徒手帳の写真を撮る事になるのだが、撮影は母の店で行う事になっている。
今は消灯した時間帯。寮生達が各自の部屋で眠っている頃合いだ。
すると
「なんで普段の髪型にしないの? 今のままだとモテないよ? これじゃあキモいお兄ちゃんじゃん」
「この子はモテようとは思ってないわよ。そうでなくてもガタイが良いから、目をつけられる事を避けているだけだしね?」
「あ、ああ」
「そんなにキョドらなくても。でも、目をつけられるって?」
「何処の学校でも居るでしょう? 少し見ただけで難癖をつける輩が。肩が当たっただけでも喧嘩を吹っかける輩が」
「あ〜。クラスにも居るね・・・マンモス校だからか知らないけど、一番を張りたがるバカが各クラスに数人は居るわ〜。喧嘩バカともいうけど」
「そういう手合いがクラスメイトに居ないとも限らないから。なによりこの子の素顔ってすっぴんの
「うぐぅ・・・た、確かに出したら駄目だわ」
流石の
その素顔を晒すのは自宅だけだ。
「学校では極力関わらないようにしましょう」
渋々という反応を
その後の
そして扉を開けた母の手招きを受け──、
「早足で扉を通って」
階段下で警戒する
そこは現像機が置かれた更衣室だった。
母は奥にある証明写真スペースに移動する。
今が夜中なので現像機を使う事を避けたらしい。大きな音が響く事で寮生達が起きるから。
「時間的に消灯してるけど、寝られない勢がトイレに籠もるから、なるべく静かにね?」
「ト、トイレって?」
「いろいろあるの。女の子として」
「く、詳しくは聞かない」
「それがいいよ。幻滅するのはお兄ちゃんの勝手だけど」
「まぁ・・・女の子に幻想は抱いてないから」
「そう? 私は別だよね?」
「は?」
そして椅子に座りながら
「いや、先日・・・酷い冤罪事件を目撃したからな」
「冤罪事件・・・もしかして?」
「何か知ってるのか?」
「う〜ん」
しかし、その返答を得る前に母が現れ撮影が開始された。
「あとで教えるけど・・・とりあえず、顔作ったら?」
「おぉう。忘れてた」
母は真顔となった
母はフィルムの枚数を確認し──、
「一応、一枚だけと思ってたけど数枚撮りましょうか。素顔も一緒にね」
「え?」
母はきょとんとなる
「撮り直しがくるかもしれないじゃない。近い将来、素顔で過ごす事になる可能性もあるし」
「お兄ちゃん! それがいいよ!」
「まぁ・・・仕方ないか」
母はフィルムを取り出して現像室に向かう。
その間の
「さっき言ってた常習犯、寮生かも」
後回しとしていた話題をぶちこんだ。
「寮生が常習犯? え、冤罪事件をあちこちで行う?」
「あちこちって訳ではないかも。主にナンパ相手に行うから。でも注意だけはしておいてね」
「そうだな。そんな危険人物が近くに居るなら気をつけるに越した事はないか・・・」
「危険人物・・・(ごめんね。
それからしばらくすると、母が満足気な表情で戻ってきた。現像がうまくいったらしい。
一応はプロなので失敗は無いが、デジカメと違って撮り直しが利かないため、この反応は致し方ないだろう。
母は店側に移動し──
「今から切り抜くから少し待ってね」
写真を慣れた手つきで切り抜いていた。
切り抜いた写真が出来上がると、防犯システムを稼働させて更衣室に戻る。
「どんな感じになったの?」
「どれどれ?」
「眼鏡を付けた方は学生って感じね。こちらは少し大人っぽい雰囲気かしら」
「へぇ〜。お兄ちゃん、こっちがいいよ」
「眼鏡は駄目って事かよ?」
「だってぇ〜。地味で暗いし〜」
「暗いとか言うな! 俺はこっちでいいよ」
「要らないの? それなら私が貰っとく! いいよね? 母さん」
「またなの? まぁいいわ。ホントお兄ちゃんが好きよね〜」
「別にいいじゃん!」
「さて、戻るか」
母は二人の背後で電気を消していた。
すると
「直ぐ渡って。誰かこちらに向かってきてる」
「お、おう」
降りてきた者は、ピンク色の薄手シャツを着た、茶髪ロールヘアのお嬢様だった。
「あら? こんな時間に何をしていらっしゃるのかしら?」
ノーブラの胸をユサユサと揺らし、薄暗い共用玄関を悠然と歩く。
「
「そう。寮母さんも大変よね〜」
「それで先輩は?」
「お風呂場にショーツを忘れてしまってね。ほら? 今は下に穿いてないから〜」
「さ、晒さないでくださいよ!」
「この寮には同性しか居ないし、気にしても仕方ないでしょう?」
それを聞いた
「仕方ないで晒して、お客さんが来たらどうするつもりですか?」
「こんな時間に来客は無いわよ?」
「なくても慎みというものを持って頂きたいものです!」
「慎みねぇ? それを貴女が言うのは少々おかしいのではないかしら? Tシャツとノーブラの胸、紫のショーツが丸見えの格好だもの」
「私の事はいいんです!? 晒すものが限られてますし。胸は無いですし!(自分で言ってて悲しい・・・)」
「それなら私でも一緒でしょう?」
「先輩は一枚脱げば裸じゃないですか!」
すると、そんな二人の言い合いの最中、母は何食わぬ顔で素通りしつつ一言添える。
「声量を抑えなさい。寝てる者も居るのよ?」
「「あっ」」
「それと・・・今度から母屋に離れて暮らしていた長男が住むから、恥ずかしい格好で出歩かないでね。同年代の女の子が布一枚で歩き回る事って、凄い恥ずかしい事だと思うから」
「母さん!?」
その一言を受けた
「え? ど、どういう事ですか?」
「そのままの意味よ。今後は異性の目に触れる事が多々あるから、ほどほどにね。明日、全員にも紹介するから」
「もしかして、先日のお願いって?」
「ええ。紹介しようにも用事があるって誰もが聞かないから。あまり待っても、今のままじゃ、あの子が窮屈な目に遭うからね?」
「それって決定事項なんですか?」
「決定事項ね。学校からも許可を得てるわ。貴女のお爺さまからも」
「そ、そうでしたか。わかりました」
お爺さまという言葉を受けた
「どういう事? 理事長がなんで?」
「さぁね。理由は分からないわ。ただ、先日の面接時に好印象を得たのは確かみたい」
母は店の扉を施錠しつつ答えた。
すると
「え? 面接したのですか?」
「ええ。編入試験でね」
「編入試験・・・もしかして?」
「商業科ではないわよ。普通科の生徒だから。ある程度は私から説明してるから寮長として説明することは無いと思うわ」
「そう、ですか。わかりました・・・」
どうも
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