第16話 裸族の騒ぎと争奪戦の予感。
母屋でのひと悶着の後──、
「お嬢様の所為で酷い目に遭いました!」
自室に戻った
「気にしない気にしない。好きな人に全て見て貰っただけでも、別にいいじゃない?」
「どうせならベッドの上が良かったぁ〜!」
「結ばれるかどうかすら分からないのに気にするだけ損だと思うよ? 成金である
「義父との血のつながりは無いです!」
「無くても政治的な用途はあるよ? 私や
「で、でも!」
それはこの場だけの会話だった。
知っている者は知っている。
「でもも何もないでしょ? 今出来る事は学生時代の思い出を多く作ること。卒業すれば好きでもない人と結婚して、家のために役立つ子供を産む事になるの。
「(そ、それはそうだけど納得いかない!)」
元より一般家庭育ちの
どういう経緯で再婚に至ったか不明だ。
それだけに不意の再会が彼女の恋心を目覚めさせたのだから、運命とは如何に残酷か分かるだろう。それこそ
すると、二人の部屋に──、
「ひゃわ!?」
「失礼するわよ?」
バスローブ姿の
どういう経緯で訪れたかは知らない。
「ああ。失礼しました」
「前に座っていたのね・・・その格好」
「巻き込まれました。風呂上がりにバイクの音が聞こえたので、下着姿のまま母屋に向かったら、その流れで
「素っ裸に剥いちゃったと?」
「剥かれちゃいました。見事に見られて、無かった事にされましたけど」
「それはまた。せめて寝間着で向かえば下着姿のままだったのに」
「どちらかと言えば下半身露出でしたけどね」
そう、二人は呆れた表情のまま寝間着姿の
「どちらにせよ、見られる事は変わらないか」
「皮肉な事に」
「私だって好きで脱がしてないもん!」
「専属メイドに脱がされる事はあっても?」
「それはそれ!」
「巻き込まれて脱がされる私の身にもなって」
「
「慣れぬ者だとそうなりますよね」
「慣れた者でも晒していたわね」
「それは忘れたいので」
「思い出として取っておきなさい。
「「は?」」
それは
「
「先頃決まった事らしいわ。残念だけどね?」
「
「たちまち、年内には婚約式を行うそうだから準備だけはしておけって連絡が来たわ。寮長である私にね?」
「そ、そんな・・・」
その表情は天井を見上げた茫然自失だ。
「叶わぬ恋って事かぁ。
「彼に
「「ふぇ?」」
「どうしたの二人してきょとんとして? まさか知らなかったの? あぁ・・・
すると
「ま、
「知ってるも何も、この寮も元々は
「「大地主!?」」
「どうしたの? まさか一般家庭と思っていたんじゃ?」
「「思ってた!」」
二人揃って同じ反応だった。
名家の御令嬢が揃って情報に疎い事を知った
「こんな大きな古民家を持つ一般家庭が有るわけないでしょ? 土地の規模はウチの実家と同じ大きさよ。
「お、お兄さん? ど、何処にそんな人が?」
「〈さなか寮〉の寮母って妹さんだったの!」
「同時に聞かないでよ! お兄さんは
「じゃ、じゃあ・・・あ、
「多分、知らないと思うわ。
「土地の所有者って、一番喧嘩を売ったらダメな相手じゃない!」
すると
「まぁ色々な事情で一般家庭って事にしているけど、表沙汰にしなければ問題はないわ。この場だけの話だから。ただ・・・
「汚点?」
「あっ・・・そうか。色濃く出ちゃうから」
「そうなるわね。何らかの形で遺伝でもしたら大事だわ。散財する癖が出るとか・・・ね?」
元より初恋だから叶わない物と諦めていたが叶えたらダメな恋だと気づいてしまった。
それは結局、自身が最も嫌悪する存在を産んでしまう恐れがあるからだ。
「も、もしかして・・・それも聞いたの?」
それは
しかし
「私が聞いたのは婚約の事だけ。そもそも
「え?」
「
「じゃ、じゃあ?」
「一方通行に伝えてきただけよ? 大体、他家の事を一々報告する必要はないもの。言ってはなんだけど
「確かに味噌っかすだわ。
「
数年を過ごした己が実家が、二人からすれば味噌っかすとされたのだ。
面と向かって罵られれば困惑するのは仕方ないだろう。床に座る自身とベッドに座る二人の目線も相まって。
すると
「大人しく兄さんの元に嫁ぎなさい」
義妹となる未来を予見して
「それしかないでしょうね。むしろ見られる事に慣れておくのも手よね?」
「うん。兄さんも見られ慣れている者の方が良いみたいだし。絵描きとしてもね?」
「裸婦モデルになるために裸族として過ごすのもアリね!」
「私の将来が着々と決まっている件について」
「「気にしたら負け!」」
(恩返しはどうしよう? いっその事、全て見て貰うだけにする? 見て貰う事に慣れるためには必要な事だし・・・)
ただ、
「中間試験の勉強会どうする?」
「範囲次第だけど、彼に見て貰うっていうのは?」
「バイトも試験期間は休みらしいし・・・私が聞いてみましょうか? 月謝として払ってもいいし」
一方の
(委員長が勉強に来るの? どういう経緯で? 学校では我関せずだったのに?)
そこには
一応、
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