第2話 30キロ行軍と合流。
それから数時間後。
「腹減った〜」
今はまだ目的地の手前。ここから少し歩いて大通りに出ると見えてくるという記憶を頼りに古民家街をひたすら歩く。この記憶もいつだったか、母から直接聞いていた場所の話である。
行った事は無い。近くを素通りした事もない。そもそも普段の生活圏から離れ過ぎていたのだ。バイトは新市街に行かないといけない。
今は旧市街。古民家が所狭しと並ぶ街だ。
しばらくすると──、
「やっと写真館が見えてきた〜」
大通りから直ぐの角。そこそこ大きな写真館が現れた。この店は
この時の
そして
「着いた。店の前。入口がわからん」
『お疲れさま。あと少し歩けば門扉があるから、そこを越えて
『は〜い。キモ
『そういう事を言わないの! ガレージ開けてあげて』
『はーい』
それは妹が呼ぶ
そんな二人のやり取りを聞いた
「へ? ここが入口じゃないの?」
『そっちは店舗の入口よ。家の者は別の入口から入るの。あと少し頑張りなさい』
「あぁ。親父に単車がバレて売りに出されそうになった事を思い出した・・・」
それは修理に出した経緯だろう。
修理に出したのは宿泊研修前。ミラーが割られてしまい、あちこちに傷まで付けられた。それも転倒扱いで保険金を借りろというオチまでつけて。そんなもの詐欺だと返せば何とかして用意しろと騒いだ挙句、酒を飲みつつ部屋に入って行った。
これを受けて
その結果、研修から戻ってきたら、家その物と父親が蒸発していたのだから、酷い目に遭ったと思っても仕方ないだろう。
「おかえり〜? ん? この場合はいらっしゃい?」
「どっちでもいいわ」
「折角、私が顔を出して労ったのに酷くない?」
「疲れてるんだ。隣街からずっと歩いてきたから」
「うへぇ〜。だから妙に汗臭いんだ・・・近寄らないでね?」
「・・・」
そんな
「持ってるなら先に振ってよ〜。今日からはデリカシーが無いまま住めないからね?」
その言葉を受けた
「どういう意味だ?」
「どういう意味も何も、母さんが言ってたでしょ? ガレージから入ってって。そっちの門扉は寮生達の門なの。私達はガレージか反対側にある裏玄関から出入りするの」
「寮? 店舗だけじゃないのか?」
「うん。元々は下宿だったんだけど、私が通っている学校から資金提供を受けて〈みなと寮〉として改修工事してもらったの。ウチは数軒ある寮の内、寄付金を多く出した家の人が住んでるの。だから家の中で勝手気ままに動き回る事だけは避けてね? 寮生・・・先輩達と出くわすと面倒だから」
なんという事だろう。
電話で母から転校と聞かされていた
そう、呆然としたままの
「とりあえず、予備校生が帰ってくる前に中に入って。ここに男が立ってるだけでも疑われるからね? 私に彼氏が居るんじゃないかって」
「お、おう」
そこには写真館の軽バンと自転車が置かれていた。脇には古びた大型自動二輪とサイドカーがあった。壁面には工具類がかけられており、
「スペースあるし、置いていいよな?」
「いいんじゃない? 母さんもお兄ちゃんが乗ってるの知ってるし。というか今日は何で?」
「クソ親父に転倒させられて現在修理中」
「は? て、転倒って?」
「ま、色々あったんだよ。とりあえず・・・腹減った」
「そ、そうなんだ・・・母さんが夕食を用意してるからリビングに行こうか?」
この時の呼び名がキモ
「おかえりなさい。今日からここが
「う、うん。ただいま、母さん」
そんな親子のやりとりを見ていた
「何それ!? 私の時も素直に返事して欲しかった〜」
「どの口が言うのよ〜。大好きなお兄ちゃんをキモいキモいって呼ぶ子が言っていい言葉ではないわよ?」
「私の勝手でしょ!?」
「というか母さん、着替えすら無いんだけど」
「それなら問題無いわ。片付けした
「母さん! それは言わない約束!」
「・・・」
そんなやりとりを見せられて
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