第8話 浪人生、冒険者について知る
冒険者。
それは、異世界における憧れの職業。
剣や魔法、スキルや魔道具で活躍するヒーロー。
少なくとも、日本にいた頃の俺はそう思っていた。
人々を守るためモンスターと戦ったり、ダンジョンに潜って宝探しをしたり。
華やかで子供達のなりたい職業異世界ナンバー・ワン的な、かっこいい職業だと想っていた。
でも、違った。
全然違ったんだ!
俺をこっちに転移させた迷惑錬金術師エビデンスゴータマの記憶をもらった今、冒険者への見方が百八十度変化したよ。
冒険者。
それは、日本で言えばブラック企業の社畜だわ。
いや、マジで。
彼らを監督する冒険者ギルドは、斡旋した依頼から生じる利益の八割以上を取るらしい。
手数料というよりは税金みたいな感じ。
冒険者諸法度とか言う法律で決められているそうだ。何か聞いたことあるような法律だけど┅┅
とにかく、今の冒険者は酷いそうだ。
なんでも昔、冒険者は相当儲かる仕事でまさに夢の職業だったそうだ。
そのせいで、国中の農業従事者や工業商業の職人商売人さんがみんな冒険者へと流れていって困ったことがあったらしい。
それを押さえる苦肉の作がこの法律。
だから今、どんなに働いても冒険者は貧乏から抜け出せない。
ポヨのご主人様であるエビデンスゴータマの記憶にはそうある。
そのため、冒険者になる人間はほとんどいなくなった。
残ったのは他の職業では通用しない役立たずな連中。あと、無理やり脅されて働いてる内気な人。
だから、目にクマを作りやる気も削がれ黙々と仕事だけするロボットのような人間ばかりになったとか。
いやあ、ブラックやわあ。
ブラック過ぎやわあ。
「なあ、ポヨ。冒険者っているか? 何かトラブル起こされるのは嫌だぞ?」
俺がそう言うとポヨは冷静に言った。
「┅┅ん、コータの情報には誤りがある」
「誤り? どんな?」
俺は足元にいる魔法生命体スライムの言葉に首をかしげる。
「┅┅ん、冒険者は今でも人気職業」
「あれ、俺の記憶では今は違うってあるけど?」
「┅┅ん、ご主人様は冒険者嫌い。だから、冒険者を褒めることはない」
「は?」
ちょっと待て。
じゃあ、何か?
俺はわざわざ間違った情報を脳みそに刻み込まれたって訳か?
┅┅何してくれてんの、エビデンスゴータマさん?
そもそも、何で嫌ってんだ?
するとポヨが俺の疑問に気付いたのかこう説明を続けてくれる。
「┅┅ん、ご主人様は告白した女性にフラれた。その女性は冒険者の彼氏と結婚した。なので冒険者を嫌ってる」
「たったそれだけでか!?」
やべえよ、エビデンスゴータマ。絶対精神に異常があるタイプだろ。
あまりのくだらなさに力抜けたわ。
以後、彼の情報を鵜呑みにするのはやめようと誓った俺だった。
「┅┅ん、冒険者は優秀。魔物は昼夜問わず襲ってくる。長旅には必須アイテム」
「お、おう。そうだな。。じゃあ、行くとするか」
俺とポヨは掘っ立て小屋を出る。
玄関を出ると森の空気に癒される。
そういや異世界に来て初めての外出だな。
空気がうまい。
俺はマジックバックを担ぎ直すと言った。
「なあ、ポヨ。俺がもらった情報だと森を出てすぐに大きめの村があるようだけど、冒険者はそこで雇えるのか?」
「┅┅ん」
「そういや、冒険者を雇う金は┅┅」
と、ここまで言って思い出す。
エビデンスゴータマ情報によると、マジックバックの中に銀貨の袋が二つほど入っている。
ピンからキリまであるが、護衛の冒険者はそれほど高額ではないようだ。
安心安心。
「じゃあ、行くか?」
「┅┅ん」
俺たちは村へと歩き始めた。
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