第13話 浪人生、カツブシ村を出る
これで食料品は全部買いそろえた。
俺とポヨ、そして冒険者三姉妹はカツブシ村の入り口まで来ていた。
何故かパン屋のオッサンが見送りについてきた。
いや、そこは娘のミーシャだろ。そう思ったが口には出さない。
俺は空気が読める男なのだよ。
「┅・┅ん、オッサンの見送りコータ感激」
相変わらず人をムカつかせるスライムモドキを俺はシカトしてやった。
「┅┅ん、コータはオッサンキラー。今晩はツッコミまくり」
我慢だ俺。
「┅┅ん、間違えた。コータは受け専門」
平常心、平常心。
「┅┅ん、返答がない。ただの童貞のようだ」
「じゃかんしいわ!」
クソッ、反応してしまった。
異世界来てから、俺の沸点が低くなっている気がする。
いかんな。
雑貨屋で買ったチューリップハットを自慢げに被るポヨ見てると、当社比で三倍くらいムカついて見えるんだよ。
自重せねば。
「ところで、依頼主さん。さっきからスライムさんがコータって言ってますけど?」
「そうそう、ウチも知りたかってん」
「依頼主さん、エビデンスゴータマって名前だよね? たしか錬金術師の?」
おっと、三人姉妹から尋ねられたよ。
ここはキチンと説明しておこう。
「訳あって名前を変えたんだよね。今は愛媛光太郎って名乗ってる。良かったらみんなもコータって呼んでくれる?」
みんなすぐに了解してくれた
名前が変わったというのに、アッサリとしたものである。
「┅┅ん、エビデンスゴータマ。早く行く」
約一名、コータからエビデンスゴータマに呼び方を変えたスライムがいるけど気にすまい。
俺たちは門番の猫耳娘に会釈すると、門を出て王都へと進む。
「エビデンスゴータマ様ー、王都までお気をつけてー。また帰ってきたらバイアグランの処方お願いしますねー!」
あっ、もう一人いたわ。お前も話聞いてたよな?
猫獣人って我が道をいく超マイペース主義者なのだろうか┅┅
☆
何はともあれ、俺たちはオッサンに見送られカツブシ村を離れた。
これから徒歩で王都に向かう一ヶ月の旅が始まる。
王都までは馬車が余裕で通れる道があるので楽チンだ。
途中で幾つかの村もあるらしい。
うん、楽しみだ。
こうして、歩くこと三時間。
もう、足ガタガタ。
考えてみりゃ、三時間も歩き続けるなんて初めてかも。
休憩無しだもん。そりゃ疲れるわ。
でも、冒険者三姉妹は楽しそうにお喋りしながら進んでいくし、男として弱音は吐きづらい。
ここは歯を食いしばって頑張ろう。
決意を新たに歩いていると、何故かチューリップハットを被ったスライムが俺の方に寄ってきた。
「┅┅ん、コータ。あそこの一本杉まで競争。コータが勝ったらこの帽子あげる」
いや、いらんし。
そして、今走ったら余裕で死ねるし。
というか、ポヨお前、分かってて言ってるよな?
「┅┅ん、コータは浪人生。競争が好きなのに何故?」
「競争が好きだから浪人生やってる訳じゃない」
「┅┅ん、では何故浪人生をやってる?」
ああ、こいつ殴りてえ。
俺はスライム型魔法生命体のポヨをシカトしつつ痛む足を引きずって進むのであった。
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