第12話 浪人生、食料品を買う
俺はまたしてもポヨに敗れ、銀貨三枚を雑貨屋店主に支払う羽目になった。
ポヨはと言うとチューリップハットを被ってご機嫌そうだ。
何でこんなのが高いのか分からん。
防水加工とかいるか?
まあいい。俺は気持ちを気持ちを切り替えて次に向かう。
「依頼主さん、次は保存が効く食料品を買いましょう。そして、パンを買って、それから出発で~」
黒猫獣人のアイがほんわかした口調で言ってくる。
三十日間の旅なら食料はかなり必要だ。
もちろん、エビデンスゴータマがマジックバックに必要な物は入れてくれているようだが、イマイチ信用が置けない。
ここは自分でも準備しておこう。
「ウチはニャニャベーカリーの黒パンをぎょうさん買っとく」
「マイお姉ちゃんはニャニャの黒パン好きだよねえ」
「あそこは最後ね~。その前に干し肉を買っときましょう。それからドライフルーツと干し魚。依頼主さんもそれでいいですか~?」
「はい、大丈夫です」
この三人、冒険者だけあって旅なれているようだ。
素人の俺は後に付いていこう。
しかし、干し魚か。
要するに干物だよな。
異世界にもあるんだ。
ちょっと嬉しい。
そう言うわけで俺たちは少し歩いて肉屋さんで干し肉を買い、八百屋さんでドライフルーツ、最後に魚屋さんで干物を購入した。
合計金額は全員で銀貨三枚だった。
やはり物価は安い。
というか、ポヨのチューリップハットと同じとか┅┅何か腹立つわ。
もちろん、今回もおごり。
みんなすごく喜んでた。
冒険者でも低ランクはけっこう貧乏そうだからね。
お金はエビデンスゴータマがたくさん残してくれてるから気にしない。
彼女達はそれを各自先ほど買ったバックにつめる。俺はマジックバックに突っ込んだ。
日持ちするからマジックバックじゃなくても大丈夫だけどこれしか持ってないからね。
あっ、そうそう。クサヤもあったよ。日本で一二を争う臭い干物。チャンスがあればポヨに食べさせようと思って買っといた。楽しみだ。
「じゃあ、最後に黒パンを買いに行きましょう」
「ウチは六十個は買う」
「あはは、さすがに腐っちゃうよ」
歩きながら楽しそうに会話する猫耳三姉妹。
エビデンスゴータマ情報によれば今は春らしいので暑くはないが、三十日もすれば初夏だとある。
うん、さすがに腐るか。
まあ、いざとなったらエビデンスゴータマのマジックバックに入れてあげようと思う。
俺がそんなことを考えて歩いてたら見えてきた。
「依頼主さん、あれがニャニャベーカリーです」
「あっ、いい匂い。焼き立てが買えるんちゃう?」
「ホントだ。ついてるね」
おおっ、大きな煙突が特徴の可愛らしいお店だ。
うん、本当にいい匂いだな。
まあ、焼き立てでも味はイマイチだけどね、黒パンは┅┅
昨日、緑の髪の猫耳少女が持ってきてくれたのを食べた結果、日本人には合わないと痛感した。
甘味がないパンは苦手。
でも、冒険者のアイ、マイ、ミーには好評のようだけど。
「さあ、お店に入りましょう」
「買うで~、買いまくるで~」
「あたしは黒パンとライ麦パンも買っとこう」
玄関を開けると男の声で「へい、いらっしゃい」と声をかけられた。
緑色の髪のオッサン猫獣人みたいだ。
俺たちは中に入り商品を物色する。
すると┅┅
「あれ、エビデンスゴータマ様?」
聞き覚えのある声がした。
店のカウンターにいる少女。
そう、昨日、黒パンと井戸水を持ってきてくれた緑色の髪の猫耳少女だ。
エビデンスゴータマ情報によると、彼女の名前はミーシャ。
なるほど、この店の子だったか。
ということは、このオッサンがエビデンスゴータマの薬を飲んでた人なのね。
元気そうだな。もう体は大丈夫なのかな┅┅と思ったが、エビデンスゴータマ情報を検索して心配するのをやめた。
このオッサンの薬、精力増強剤だった。
子供が13人もいやがる。
心配して損したわ。
俺が脳内情報を整理してるとオッサンが不思議そうな表情で言う。
「ミーシャ、知り合いかい?」
「やだなあ、お父さん。こちら錬金術師のエビデンスゴータマ様だよ」
「ええっ、ちょっと似ているけど┅┅髪の色も目の色も肌色も全然変わってるよ?」
ああ、エビデンスゴータマの改造前しか知らないんだな。
すいません。
ワパニーズ錬金術師が本当にすいませんです。
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