第11話 浪人生、買い物に行く

 冒険者ギルド・カツブシ村支部にて、三人組の冒険者パーティーに護衛依頼を受けてもらうことができた。

 みんな猫獣人でアイ、マイ、ミーと名乗る。どうやら姉妹で冒険者をやってるらしい。

 そして、全員が黒髪黒目。たぶん、黒猫系統の猫獣人のようだ。

 俺たちは彼女たちの家に寄って旅支度を整え、今は不足してる物資を調達するため商店街へ買い物に向かっていた。


「えへへ、依頼主さんとおそろい~」


 革製の鎧を身に付けショートソードを二本腰にぶら下げているアイが、俺と同じ髪色と目の色が嬉しいのかニコニコ笑って言う。


「ホンマやなあ。ウチ、黒髪黒目の人間はん初めてやわあ」

「あたしも初めてかも」

「えっ」


 何故か関西弁の次女マイと、三女のミーが言った言葉に思わず反応してしまう俺。

 彼女は姉のアイと同じく革鎧にショートソード二本の装備。

 三女のミーも同様の格好。


 そうか、黒髪黒目はいないのか。そういや、異世界は欧米風だったな。だから、黒髪黒目が少ないのかも。

 あれ、でも、エビデンスゴータマは俺にそっくりなんでしょ?

 俺は与えられた情報からその点について探す。あ、あったあった。


 なになに、確かに昔のエビデンスゴータマは俺に似たとこあるな。だが、そっくりじゃない。基本的には白人みたいな風貌だね。

 で、アニオタこじらせて日本人そっくりに自分を魔改造したと。錬金術で┅┅


 あちゃー、こりゃ酷い。そういやニュースであったな。Kポップが好きすぎてそこの人間に近付くため全身整形した人がいたとか。

 異世界にもいるんだねえ。すごい変わった人間って。エビデンスゴータマ、恐るべしだよ。

 ちなみに錬金術で整形した後のエビデンスゴータマは俺にそっくりだった。


 俺が自分に渡された情報にショックを受けていると目的地に着いたようだ。

 俺たちはまず雑貨屋っぽい店に入る。

 見渡すとマグカップのような小物からハンモックのような大物まで幅広く取り扱ってる店らしい。

 何を買うのかな?


「実は前回の冒険で荷物入れるバッグをモンスターに壊されちゃったんだ~」

「あのゴブリンどもは許さん」

「あはは、マイお姉ちゃんはあれ気に入ってたもんねえ」


 どうやら旅行用のカバンを買うようだ。

 三姉妹がワイワイガヤガヤ楽しそうに選んでいる。


「ああ、依頼主さんのくれたお金で新調できる~」

「ウチ、今度はリュックにする」

「あたしは前と同じのにするよ」


 おっ、決まったようだ。

 三人はそれぞれ選んだバッグを持って会計に行く。

 何の色もついてないのでシンプルに見えるが頑丈そうではある。

 どれも一つ銀貨一枚か。

 まあまあ高い。


「┅┅ん、コータ出す」

「お、おう」


 しばらく大人しかったポヨの言葉に、慌ててマジックバックから銀貨の入った革袋を取り出す俺。

 そして、銀貨三枚を店主に渡す。

 店主はちょっと太めの三毛猫っぽい獣人だ。男だけどやっぱ猫は可愛い。


「まいどありー」


 店主に礼を言われて支払い終了。すると財布を準備していた三姉妹が申し訳なさそうに近付いてくる。


「そ、そんな。悪いですよ依頼主さん」

「ほんまにエエんか?」

「ありがとう」

「大丈夫大丈夫。どういたしまして」


 うんうん、この辺の常識は日本と同じだね。嬉しいよ。

 もし、この可愛い猫娘達が奢ってもらって当然の顔してたら旅が憂鬱になるとこだった。


「あのう、お客さん。すいませんが、追加で銀貨三枚お願いします」


 俺たちがホノボノした会話を交わしていると、困ったような顔をした三毛猫店主が俺に声をかけてきた。


「銀貨三枚?」

「はい。お連れさんの持っているその帽子は防水加工がしてある高級品でして┅┅」


 足元を見るとエビデンスゴータマ作の魔法生命体、スライムのポヨがチューリップハットみたいな帽子を被ってる。

 エ、ナニ、コレ?

 こんなのに防水加工?

 というか、スライムに帽子いる?

 しかも、銀貨三枚┅┅


「ポヨ、脱げ」

「┅┅ん、コータはせっかち。夜まで待つ」

「何の話だ?」

「┅┅ん、夜のお勤め」


 冒険者ギルドに続いて雑貨屋でもポヨとの再戦が行われたのは言うまでもない。

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