第17話 浪人生、スライムに迫られる

 衝撃の告白をエビデンスゴータマから受け、俺はなんとも言えない気分になっていた。

 異世界から現代日本に転移したエビデンスゴータマが、俺に代わり大学入試に合格したというのだ。

 しかも、半ば無理と諦めていたT大の法学部に受かりやがったと。

 今までの俺の努力はなんだったんだ┅┅


 あれ、でもおかしいな。

 俺がこっちに来てまだ一日ちょっと。

 でも、エビデンスゴータマは向こうで受験し合格発表まで体験してる。何故だ?

 俺は急いでエビデンスゴータマ情報をさがす。あった。

 なになに、異世界と現代日本の時間差。

 ああっ、やっぱりズレがある!

 こっちの一日は向こうの二、三ヶ月に相当するらしい。


 ということは、俺はこっちに滞在すればするほど日本に帰った時、時間が経ちすぎてるってことか?

 現代版の浦島太郎┅┅

 俺の努力は、ガチの報われない努力になりそうだ。

 うん、むなしい。


「┅┅ん、コータ。ベッド出す」


 俺の気持ちなど眼中にないスライムが能天気なことを言ってくる。

 まだ日も高いというのに。


「ポヨちゃん達はベッドも持ってるんですか?」

「旅にベッドってスゲー。さすがは錬金術師のコータはんや」

「本当に驚くことばかりだよー」


 いや、俺じゃなくてエビデンスゴータマなんだけどね。

 まあ、今の俺はエビデンスゴータマに代わり宮廷付きの錬金術師になるべく替え玉受験をする身。

 つまり、ここでは俺がエビデンスゴータマになるわけだ。

 色々、思うところはあるが┅┅

 その称賛を受け入れるしかない。


「┅┅ん、コータ。チョップチョップ」

「はいはい」


 俺はスライムのポヨに促され、マジックバックからベッドを取り出す。

 そして、出てきたベッドに腰を抜かしたよ。


「でけえな、おい!」


 思わず声に出してしまう。

 広いテントだが、その八割くらい占めてる気がするぞ。


「わあ、すごーい」

「なんやこれ? お貴族様のベッドか?」

「こんなの初めて見たよー」


 俺も初めてだよ。

 これ、ダブルベッド四つ分はありそうだわ。


「┅┅ん、今日はみんなでこれに寝る」

「ええっ、いいんですかー?」

「やったで、今日はマジックアイテム日和やー!」

「すごーい。フカフカだー」


 アイ、マイ、ミーの猫耳三姉妹が喜んでいる。

 うーん、俺はいいんだけど┅┅

 男と一緒のベッドで寝ることに違和感は無いのか?

 それとも、獣人は固まって寝る習慣があるとか?

 わからん。エビデンスゴータマ情報にもない。

 まあ、大きなベッドだから大丈夫か。

 そんな感じで大きなベッド横でワイワイ騒いでると、チューリップハットのスライムが近寄ってきた。


「┅┅ん、コータ。今夜は寝かせない」

「いや、寝かせろよ」


 本当に下ネタ好きやなあ。


「┅┅ん、コータの初めてはもらった」

「いや、やらんし」

「┅┅ん、ならばアイマイミーと一緒にやる?」

「いや、三人を巻き込むな」


 ホント、とんでもないスライムだわ。


「┅┅ん、コータはポヨだけとやりたい。その心意気や良し!」

「いや、お前ともやらんし」

「┅┅ん、コータはポヨが嫌い?」

「うん、どっちかって言うと」


 そのガーンって感じの演技やめてくんない?

 ちょっと笑っちゃうから。

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