第6話 浪人生、異世界を知る
まるでマヨネーズを脳みそに直接注ぎ込まれる感じ┅┅
とでも言えば良いのか、俺はスライムのポヨが外部メモリーと呼ぶ角から、大量の情報が頭の中に流れ込んで来るのを感じて苦しんでいた。
「あっ、あっ、あっーー」
「┅┅ん、コータは変態」
脳みそがどうかなりそうだ。俺は思わず情けない声を出してしまう。
スライムのイヤミなど、もはや俺の耳に届かない。
ああ、頭が掻き回されるような感覚だ。
ヤバい、ヤバすぎる。
「┅┅ん、コータはツッコミかと思いきやつっこまれる方が好きなド変態」
「やかましいわ!」
いかん。思わず突っ込んでしまった。だが、そのせいというわけでは無いだろうが大分楽になってきた。
頭の中に情報が駆け巡り、危うく処理機能が麻痺してしまいそうになったがなんとか持ちこたえる。
そして、俺は全てを理解した。
この異世界のこと。
ここに横たわっている白骨のこと。
エビデンスゴータマのこと。
そして、スライムのポヨのことを。
全てを理解すると、何か猛烈に腹が立ってきた。
「この腐れスライムもどきがーー!!」
俺は床でグデッとしていた水色ゼリーめがけ、おもいっきり蹴りをかますがヒョイと逃げられる。
「┅┅ん、コータはド変態のみならずDV野郎」
「やかましいわーー!!」
しばらく格闘? は続いたが一発も当たらず、俺の体力が尽きたところで試合終了となる。
「くそが! くそ異世界が!!」
体力は尽きたが怒りは収まらない。
何故、俺が怒り狂ったかと言うと┅┅
先ほど外部メモリーである角から得た情報にある。
簡単に説明するとこうだ。
まず、異世界でも偉大な錬金術師(自称)であるエビデンスゴータマ(ポヨのご主人様)が、空間魔法の応用から編み出した異世界覗き見装置(ホントにこう名付けていた)を錬金術で開発。
そのテレビのような異世界覗き見装置で地球を覗き見するうち特に日本にハマったとか。
超偶然にもここ異世界と日本の言語が同じだったらしい。
なんと、平仮名カタカナ漢字まで。
え?
あのポヨが出てきた本の文字(ヒエログリフだかナメック語だかのあれ)は何だったのか?
あれはエビデンスゴータマが作った自作文字。
何かかっこいいかなって思ったらしい。
とんだ中二病野郎だよ。
だが、それはまあいい。
問題はこれから。
すっかり日本文化(主にアニメ)かぶれになったエビデンスゴータマは、どうしても聖地巡礼がしたくなり異世界転移を決意したそうだ。
これもまあいい。
だが、困ったことに宮廷付き錬金術師試験が迫っていた。
エビデンスゴータマは考える。
宮廷付き錬金術師になれば王宮からの援助で金に困らなくなってウハウハ。
しかし、聖地巡礼は待てない。
そうだ、代役を立てよう。
日本で言うところの替え玉受験。
エビデンスゴータマは急いで自分の姿にそっくりな人間を何故か日本で探し、そっくりだった俺を召喚したと言うわけだ。
いや、ガチでふざけんな。
エビデンスゴータマは一応悪いと思ったのか、俺のために異世界情報を詰め込んだ外部メモリーを作ったそうな。
そして、異世界案内役として錬金術で魔法生命体を作り残していった。
あと、その魔法生命体が可愛い女の子の方がいいだろと美少女設定にしてくれたらしい。
あとはその美少女型魔法生命体に全てをまかせて自分は日本へ転移しようとするが┅┅
ここで、その美少女型魔法生命体からクレームがつく。
日本人は美少女よりスライムの方がウケるとエビデンスゴータマに進言。
さらに、白骨死体を作って脅かそう。
ついでに外部メモリーを角にして白骨死体の額に取り付けようと。
日本人は肝試しが大好物と抜かし、アニオタのエビデンスゴータマがそれに乗っかって┅┅
あとはご覧の通りだ。ちなみに、普通のスライムは喋れない。俺はこのスライムの形をしたポヨと名乗る魔法生命体におちょくられていたんだ。
くそが、くそ異世界が!
俺は日本で希望する大学目指し浪人生として頑張ってたんだ。
それをいきなり異世界に連れてきやがって。
受験どうすんだよ?
バイトも無断欠勤だよ。
何より家族が心配してるだろう。
くそ。
マジでどうすりゃいいんだ。
「┅┅ん、コータ。クヨクヨ悩むのは時間の無駄。明日は早い。もう寝る」
「あ、ああ」
俺はポヨの言葉に頷いた。
そして、ベッドに向かい熊みたいな毛皮に包まれて横になる。
おやすみ┅┅って、できるかーー!!
「┅┅ん、コータはノリツッコミの天才」
「知るかーー!!」
異世界初めての夜はこうして過ぎていった。
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