第7話 浪人生、旅立ちの日
気がつきゃ朝だ。
いつの間にか寝てたみたい。
俺は結局、魔法生命体ポヨとの死闘に疲れて眠ったらしい。
今はベッドの上。熊みたいな毛皮に包まれている。
何故かとなりにはポヨ。
「┅┅ん、コータおはよ」
「┅┅ああ」
「┅┅ん、昨日はすごかった。コータはテクニシャン。あんなに腰使いが激しいなんて。さすがはご主人様が見込んだ男」
「紛らわしい言い方すんじゃねえ。昨日はだいたい俺の蹴りを全部避けやがったろうがお前は」
「┅┅ん、イキまくった」
「避けまくったな!?」
すでに起きていたポヨに声をかけられ、俺は思わず返答してしまう。
昨日の戦いでストレス発散になったようだ。今はもうどうでもいい気分。
「┅┅ん、コータそろそろ出発」
「もうか?」
「┅┅ん、王都は遠い」
「ああ、確かにそうだな。じゃあ、起きるか」
「┅┅ん」
俺がもらった異世界外部メモリー(エビデンスゴータマ作)からの情報によると、今いる国はエウロピア王国だ。王都はロピア。分かりやすい。
そして、この山小屋は王都ロピアから徒歩で30日の距離である。
ちなみに、異世界での移動は徒歩がメインだ。
俺は旅立ちの準備をするべくベッドから立ち上がる。
「しかし、錬金術ってのは便利だねえ」
準備をする前に、俺は思わずしみじみと呟いてしまう。
だって、錬金術のおかげで準備は超簡単なんだもん。
異世界の、いや、錬金術師エビデンスゴータマの知識を吸収した俺は、錬金術の凄さを改めて認識していた。
錬金術とは簡単に言えばドラ○もんの四次元ポケット。
いや、簡単すぎたか。
まあ、アニメみたいに欲しいものがすぐに手に入る万能魔法とでも言おうか。
複雑な魔法陣にかなりの魔力を必要とするが、それさえクリアできれば色々な便利道具を作れちゃうのだ。
例えば旅行用のカバン。普通、30日の徒歩での旅とか山ほど荷物が必要になる。
食料だけで持ちきれない量になりそう。
おそらく、成田空港で見かけるようなカートがなければ運べないほどの旅行カバンが必要になる。
だが、エビデンスゴータマは錬金術で作成した魔法の袋、そう、マジックバックを持っていた。
そこに食料を初め必要なもの全てを詰め込んでくれている。
錬金術は空間さえねじ曲げるのだ。
ホントに便利。
着の身着のままで行けるんだから。
「じゃあ、行くか?」
昨日は日本から無理やり連れてこられ、異世界で宮廷付き錬金術師試験の替え玉受験させられると聞いて怒っていたが┅┅
一晩たって冷静になると面白く感じてきた。
異世界転移はどうやらエビデンスゴータマのオリジナル魔法らしく、もらった記憶にはなかった。
だから、俺は日本には帰れない。
少なくとも、エビデンスゴータマが帰ってくるまでは。
ならば気分一新、異世界を楽しもう。
俺は小屋のなかで巧妙に隠されていたマジックバックを掴んだ。
マジックバックは見た目はドラムバックだ。ドラム缶を横にしたような感じのバックである。
ボストンバックよりちょっと大きいが、ここに旅行用品が全て収まっているとは驚きだ。
色も黒でかっこいい。あと、軽い。軽量化の魔法陣も組み込んでいた。
この辺はもらった情報通りである。
「┅┅ん、コータ行こう。その前に冒険者を雇う」
「冒険者?」
ポヨがまた俺の興味をそそらせるセリフを吐きやがった。
異世界の定番。冒険者か!?
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