浪人生の俺が異世界転移して変なスライムと錬金術でスローライフを満喫する

後藤詩門

第1話 浪人生、異世界転移する



 どうしてこうなった?


 俺の名前は愛媛光太郎(えひめこうたろう)。家族や友達にはコータと呼ばれている。

 希望する大学入試に失敗して浪人生活を送っていた十九歳の男だ。


 受験には失敗したけど、俺は挫けたり自暴自棄にはならなかったよ。

 まあ、性格だろうね。

 俺は次の受験へと気持ちをすぐに切り替えることができたんだ。


 親の援助もあってアパートで一人暮らしを始めた。

 バイトしたり友達と遊んだり予備校行ったり、けっこう充実した毎日を送っていたんだ。

 うん、これはこれで楽しいよ。


 それなのに┅┅


 いきなり異世界転移した!!

 え、何で?

 意味分からん。

 自分のアパートでのんびりしてたら、なぜかエレベーターで下に降りる時のようなフワッとした感覚がして、ふと気付けば知らない場所に立っていた。

 そう、異世界にいたんだよ!

 もう、ワケわからん。


 トラックにひかれたわけでもない。

 神様に会ったわけでもない。

 いつも通りの日常生活を送ってた。

 それなのに、気が付いたら異世界。

 服装も家で着ていたジャージ姿。

 無精髭もそのまま。

 ポテチと烏龍茶をテーブルに置いて参考書でも読もうかと考えてた。

 そんないつもの日常。だけど異世界転移したんだ。


 おかしくねえか?

 異世界物のセオリーじゃねえだろ。

 何か理由ってあるのが普通だよね。アニメとかラノベとかじゃさ。

 事故にあったとか神様のミスとか。

 ほんと、突然すぎてビックリしたわ。

 繰り返すが、どうしてこうなった?


 今、俺がいるのは粗末な掘っ立て小屋の中だ。

 内装は実にシンプル。異世界転移してすぐに、俺はおっかなびっくりながらも色々と見て回ったよ。

 部屋の中央に不格好なテーブルと椅子があった。窓側に粗末な木製のベッド。

 このベッドには熊か何かのでかい毛皮が乗ってた。二枚ほどね。

 別の窓側には日本の学習机っぽい机もあるようだ。

 食器棚と本棚が混ざっているような棚もある。

 もちろん、本と食器が無造作に並んでるよ。何か怪しい液体が入っている小さな陶器の壺もあるな。


 ちょっと手に取ってみたら、どうやら食器は手作りっぽい木製で本も厚ぼったいボロボロの紙だ。

 こういうの羊皮紙って言うのかね?

 あとは変な服が数着と部屋の奥の床に死体があった。


 そう、死体があるんだ!


 ギャーー! と叫んだが、この死体は白骨化してるから慣れると平気になった。

 匂いもないし。

 まあ、この死体のお陰でここが異世界だと確信したんだけどね。

 この白骨化死体の人┅┅

 角はえてますねん。


 思わず関西弁になっちゃったよ。

 そう、額部分から角ですよ奥さん!

 他は全部普通の骸骨なのにね。

 日本人がイメージする鬼みたい。

 とにかく、この死体は人間じゃない。

 少なくとも地球人じゃねえ。

 額から角が出てる白骨死体とかあり得ねえだろ。

 いや、俺が知らんだけで地球のどこかに角がある人間もいるかもしれんけどさ┅┅

 普通じゃないのは確かだ。


 あと、本もパラパラ見たけど、ぜんぜん読めねえ。

 知らない文字だわ。平仮名カタカナ漢字はもとよりアルファベットでもねえ。

 地球文明で似てると言えば古代エジプト文明の象形文字(ヒエログリフ)か?

 あとはナメック語に見える部分もある。いや、漫画の話だけどさ。

 でも、ヒエログリフやナメック語とも微妙に違うんだわ。これ絶対、地球の言語じゃねえと思うんだよなあ。

 マジで見たことない。


 とにかく、ここは異世界だろ。

 しかし、何でまたこんな所に俺は転移したんだ?

 窓から見える景色から察するに、ここは森の中なんだろうな。

 そんな場所にポツンとある粗末な掘っ立て小屋。

 ウィズ骸骨。

 こんな場所に異世界転移。神様の仕業だとしたら酷くねえか。

 天罰か?

 なにやったんだ俺!?


 と、いろいろパニクったけど少し落ち着こう。

 まずは状況確認。

 部屋の奥に骸骨。床に寝そべってる状態だな。あっ、けっこう豪華な服は着てる。こういうのローブって言うのかね?

 黒地に金の刺繍が施されてる。何かかっこいい。


 玄関は日本風じゃねえな。うん、靴箱もねえし間違いない。欧米風だ。

 つまり、家の中でも土足なんだろうね。

 あっ、俺裸足じゃねえか!

 クソッ、神様のサービス悪いなあ。

 いや、神様のせいかどうかは知らんけど。

 あと、電気とかは無さそう。その代わりランプはある。その他目につくのは特に無し。

 ほんとシンプルな小屋だ。


 まあ、今はそんなことより状況確認。

 とりあえず本をじっくり見てみよう。

 俺は棚から厚ぼったい本を一冊持って学習机に向かって座る。

 文字は分からずとも何かヒントが有るかもしれないから。

 俺は表紙をめくり1ページ目を開く。


 おおっ、いきなり変な模様。

 これ魔法陣ってやつじゃねえか!?

 しかもけっこう凝ってやがる。

 俺は無意識に指先で魔法陣を触ってしまった。


 すると突然、魔法陣が赤く光る。

 えっ!?

 俺何かした?

 そして、魔法陣からニュルっと何か出てきたぞ。

 な、何だコレ!?


「┅┅呼ばれて飛び出てジャジャ┅┅」


 いや、最後まで言えよ。

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