第19話 浪人生、甘口カレーを作る
甘口カレー。
どうやって作るんだ?
いや、本当に分からん。
日本だと甘口、中辛、辛口が売られてたから簡単なんだけどさ。
辛口のカレー粉しかないのに甘口にする方法。うん、全然わかんね。
俺はテントの外で一人考え込んでいた。
マジックバックからキャンプ用の椅子とテーブルを出し、まな板に包丁、鍋や炊飯器も準備した。
あと、食材もテーブルに置き、米は魔道具の水筒で出した水でといで炊飯器へ。
食材の野菜もザク切りにして鍋で煮る。
肉もあったが検索したらオーク肉と出たのでやめといた。
オークってあれだろ?
異世界でエルフの女性とイチャコラするモンスター。うん、無理。
まあ、今日はご飯に野菜カレーでいいよね。
あっ、炊飯器は魔道具で電気はいらないみたい。エビデンスゴータマは確かに偉大な錬金術師のようだ。
さて、カレーの下準備は整った。後は辛口カレー粉を投入するだけ。
ただ、それだと辛口カレーになっちゃう。
どうにかして甘口にしないと。
砂糖入れりゃいいのか?
いやいや、単純すぎだろ。
リンゴと蜂蜜があればバーモンドになりそうだが、残念ながらエビデンスゴータマのマジックバックにはなかった。
うーん、どうすれば┅┅
と、考え込んでいるとチューリップハットのスライムが近寄ってきた。
今度はなんだよ?
これ以上の無茶振りには応じられんぞ。
だが、意外なことにポヨの言葉は俺に光明を見せてくれたのだった。
「┅┅ん、コータ。悩んだ時は錬金術」
「錬金術って、俺は使えん┅┅あっ!」
そこまで言って俺はエビデンスゴータマ情報を思い出す。
錬金術。
それは簡単に言えば遺伝子組み換えみたいなもの。
正確に言えば分子組み換えか。
要するに鉄の分子を組み換えて金にすることができるんだ。
まあ、これを現代科学でやろうとすれば膨大なエネルギーが必要となる。
だが、ここは異世界。
魔法があり、その原料である魔力が存在する。
この不思議物質を使えば場合によっては核エネルギーにも匹敵する力を得ることも可能だとか。
スゲーよ、異世界。
スゲーよ、錬金術。
ただ、魔力があれば誰でも出きるかと言えばそうじゃない。
正しい魔法陣が作れないとダメ。
現代で言えばプログラムみたいなもんだな。
そして、今の俺には両方ある。
魔力は異世界転移のおかげか異常なほどにあるはずとエビデンスゴータマ情報は教えてくれた。
そして、魔法陣の知識もエビデンスゴータマは腐るほど知っているようだ。
これを使えば何だって出きる!
「┅┅ん、コータ。何を錬金する?」
「そうだな┅┅よし、リンゴと蜂蜜だ」
これさえあれば辛口カレーも甘口にできるはず。
俺は頭の中のエビデンスゴータマ情報から必要な魔法陣を探し見つけた。
これでいける。
するとその時、猫耳三姉妹の長女アイがテントから出てきて言った。
「あのう、コータさんはリンゴと蜂蜜が必要なんですか?」
「ええ、甘いカレーにするために必要なんですよ」
俺が答えると今度は次女のマイが言う。
「ほな、ウチがリンゴ買うてるさかいコータはんにやるわ」
「へ?」
ちょっとなに言ってるか分かんない。
「あっ、蜂蜜ならあたしが持ってるからわけてあげるー」
うそ。
こうして俺はわけてもらったリンゴと蜂蜜、そして辛口カレー粉を鍋に投入し甘口カレーを作ることに成功した。
うん、錬金術┅┅やってみたかったな。
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