第9話 浪人生、初めての村
俺とポヨは森の中にある掘っ立て小屋を後にし歩き出す。
俺は日本から転移した時と同じジャージ姿。ただし角付き。あとマジックバック。
ポヨはもちろんスライム姿。
これから一か月の旅に出るとは思えぬ軽装だ。森を歩くのには便利だけどね。
少し歩くと森を抜けた。
するとすぐに馬車が通れるほどの広い道に出る。
ポヨの先導に従って道を進むと見えてきた。
村だ。
異世界に来て初めて見る人の集落だよ。
見た感じ、けっこう大きい村なのが分かる。
「あれがカツブシ村か?」
「┅┅ん」
「昨日来た猫耳の┅┅ミーシャちゃんだっけ? あの子が住んでる村だな」
「┅┅ん」
俺はエビデンスゴータマの情報から、村の名前も猫耳少女の名前も知ることができた。
ついでに何故かミーシャちゃんのスリーサイズも知ることができたが、何故エビデンスゴータマがその情報を俺に教えようと思ったのか、小一時間ほど問い詰めたい。
そもそも何故知っている?
これについてはじっくり取り調べたい。
だが、まあ、とにかく村についた。
「止まってください」
「身分証はお持ちですか?」
おっと、村の入り口には門番らしき人がいるようだ。
ただし、門番は年端も行かぬ女の子が二人。一応、長い棒を持っていた。そして、猫耳だ。
そう、猫耳。
獣人娘!
俺はエビデンスゴータマ情報を検索すると┅┅
この村は獣人の村。
しかも、平均年齢二十歳だ。
しかも、女の子が美人ぞろい。
え、何、天国?
村の入り口から見えるだけでも可愛い猫耳娘達がたくさん歩いている。
思わず、顔がニヤケちゃう。
「┅┅ん、コータの顔は性犯罪者の疑いあり」
「ち、違うわ!」
ポヨの指摘に思わず大きな声で反論してしまう。
俺はただ可愛いなと思っただけで性欲を感じてニヤケたんじゃないからな。
猫耳少女の門番さんとか萌えるやん?
モフモフしたくなるやん?
決していかがわしい意味じゃなく。
せっかく異世界に来たんだし。
「┅┅あのう、身分証は?」
門番の猫耳少女の一人が恐る恐る俺に問いかけてくる。
おっと、いかん。
俺はエビデンスゴータマ情報から身分証について探す。
あった。
マジックバックの中にある。
俺は肩からバックを下ろすと身分証と念じながら手を入れた。
すると、手にスッとカードらしき感触。
それを掴んで手を引き抜くとあら不思議。
カードが手に握られてます。
異世界、本当にスゲーよ。
これだけで、必要なものが手に入るからなあ。
「じゃあ、これで」
俺はサッとカードを猫耳門番娘の一人に手渡した。
「はい、確認させてもらいます」
「えと┅┅がんだむかいいんしょう┅┅ですか?」
「初めて見るね」
エビデンスゴータマの身分証は日本の非公式サイトが発行している会員証だった。
おい、エビデンスゴータマ。
何考えてんだお前┅┅
いや、確認しなかった俺も悪いけどさ。
こんなの身分証になるわけねえだろ!
そもそも、どうやって手に入れた?
手作りか?
手作りだよな?
しかし、何気にカッコいいな。
日本のクレカレベルの出来映えじゃねえか?
どうやって作った?
いや、錬金術だろうけど。
だけど、身分証が手作りとかどうかしてるぜ。
あいつ、ひょっとして住所不定無職のロリニートじゃねえのか?
何が偉大な錬金術師だ。
ダメ。もうエビデンスゴータマはダメ人間。
あいつの情報は役立たねえ。
「うん、オッケー」
「あっ、はい、確認しました。お通り下さい」
「え、いいのこれで?」
「はい、とても立派な身分証でビックリしました」
「すごいです」
あれ、異世界チョロくね?
ガンダム非公式サイトの会員証が身分証になっちゃったよ。
「┅┅ん、コータ行く」
「お、おお」
俺は門番の猫耳少女たちに一礼するとポヨに続いてカツブシ村に入った。
よし、いよいよ冒険者ぎるどってやつに出向くとするか。
俺たちは笑顔で迎え入れてくれた猫耳門番さんと別れいざ村の中へ。
うん、でかい。
大通りは人多い。
通りの両側にはお店も多い。
日本で言えばド田舎の商店街通りみたいだ。
いいね、異世界。
活気あるわ。
お店の種類も金物屋さん、八百屋さん、乾物屋さん、お肉屋さん、あと何売ってるか分からない怪しいお店もある。
あっ、もしかしてポーション屋さん?
ウンウン、いいよいいよ、こうでなくっちゃ。
俺は感動しながら歩いていく。
すると┅┅
「┅┅ん、コータ。あれが冒険者ギルドのカツブシ村支店」
ポヨが触手をムニュんと伸ばす。
指差す先にはちょっと大きなペンション風の建物。
おおっ、あれが冒険者ギルドか!?
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