第一章:立ち向かう少年

0:俺は相沢大先生だ!

 戦場地獄の雰囲気は嫌いじゃない。

 彼はそう言わん表情で爆撃機にミサイルを放った。爆撃体制に入ったそれに攻撃を避ける手段はなく、ただ羽虫のように落ちていく。この周期に入って十六機目の爆撃機撃墜、戦闘機は二十一機。令和のエースパイロットトップガン、終戦の頃には第三次世界大戦W W 3の撃墜王として君臨するだろう。


『デュエル1今日も凄い戦果だな! 僚機になれて誇らしいぜ』

「こちらデュエル1……デュエル2無駄口を吐けるなら隠れた護衛機を探せ、こっちはステルスじゃない」


 爆撃機を落とすために上がった空だが護衛機が存在せず誘い出されたような気持ちになる。この近辺の航空基地で一番有名な撃墜王『デュエル1』、相手側にしてみたら多くの犠牲を払ってでも叩き落としたい存在だ。

 使用する機体は領地紛争の際に同盟国から亡命してきたパイロットが持ち込んだミラージュ2000・5、空自が使用するF-15やF-35に比べて操縦に癖があり乗り手を選ぶ。ステルスの消耗率は低いが通常戦闘機の消耗率は想定されていた数を上回っている。空自ではステルス以外は棺桶と呼ばれるほどだ。そんな棺桶に乗って大戦最強のパイロット候補に上がっているデュエル1は鬼神だろう。


『そういえば、デュエル1って嫁さんいるのか?』

「任務中に家族の話しをするな、死ぬぞ」

『いや、居ねぇんなら良い風俗教えようと思ってな』

「通信はレコードされてるんだ。下品なことを言うな……」


 僚機の軽口に叱りを入れて基地本部に通信を入れる。


「こちらデュエル1、爆撃機撃墜。帰投の許可を」


 帰投の指示を申し出た瞬間に鳴り響くアラート音、即座にチャフを散布し高度をさげて加速する。後方の僚機は咄嗟の判断が出来なかったのか大量のミサイルを受けて撃墜、脱出できる高度じゃない。


「俺は……だ……!」


 その日、六機と一機が死闘を繰り広げ、全滅した。

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