19:禁断の血液
俺が彼から離れて約一ヶ月、オーグレーン家に張り付いて出来る限りの情報を掻き集めている段階。進捗状況は芳しくない。
この男、ハンス・オーグレーン。やはり財団から逃亡してきたようだが、どうして財団から逃れる必要があるのか? 霊体の状態では部屋の中にある資料を手に取ることもできない。彼の行動を四六時中監視し、ボロが出るのを待つがどうにも……。
「ハンス……財団日本支部が部隊を招集しはじめたわ……」
書斎にノックも無しに入ってくるアデラ・オーグレーン、彼女も財団の関係者だということは事前に察知しているのだが、やっていることは暗号解読。財団の機械はすべて独自規格、暗号はそこまで明るくないのでまるでわからない。
「……財団め、禁断の血液を消す為に」
――禁断の血液?
「ええ、どうにか日本に逃れることに成功したけど……日本にまで私兵を送り込んでくるなんて……」
禁断の血液とはなんだ? アリスにその特別な血液が流れているとでも言うのだろうか……それなら狙われる理由がわかるが……。
ハンスが一枚の資料に手を伸ばした。
論文? 異常白血球の発見……ッ!?
なんだこれは……これじゃあまるで……。
「娘の血液……これは世界のすべてを変革する……」
異常白血球、非常に高い生存力と対病原菌対抗を持ちウィルスにも高い攻撃性、不治の病とされるエイズや末期癌まで培養異常白血球を注射することにより完治。動物実験により、ネズミが……七年生存、免疫力の向上も期待できる。
――魔法の薬の原材料。
「……異常白血球の完全培養の成功、これ以上アリスを生かす理由は無い。奴らに……人間の心は……!」
そうか、アリスはこの異常白血球を持つ唯一無二の存在、異常白血球の培養に成功したのだからリスクを容認してまで生かす必要はない。
躍起になって抹消を選択するのも頷ける。
「だが、日本支部の兵力は少ない……アメリカ支部から無理矢理に人員確保したのだろう……」
「引き続き暗号を解読するわ……」
「頼む」
腑に落ちた。
アリスが狙われる理由。これが表の世界に流布すれば……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます