プロローグ

次の主人公は彼女達を幸せにしてくれるか

 中堅エロゲー会社から発売された『ハーレム・スティール』、通称:ハレスティというゲーム、こいつはネットで有名なゲームだ。

 ライトノベルとかにありがちなハーレム野郎のヒロインを奪い、最終的にヒロイン達を全員性奴隷にするというありがちなゲームなんだが、このゲームの凄さはヒロイン達のガードの硬さ、エロゲーってのは即落ちが基本なんだけどこのゲームのヒロイン達はマジでハーレム野郎にガチ惚れで攻略情報が無ければグッドエンディング、『ハーレム・スティール』はなし得ない。

 そして攻略情報を駆使してグッドエンディングを見た俺は達成感と虚無感に襲われる。理由は一つ、このエンドを見た後に見れるコンテンツ、相沢あいさわ 明広あきひろの日記。これはネットでは非常に有名だ。


【次の主人公は彼女達を幸せにしてくれるか】


 第三の壁を突破したタイトル、それもそのはず、ハーレム野郎こと相沢明広は何度も世界を繰り返している。それは平行線の世界似ている世界に飛ぶというありがちな設定ではなく、十歳から三十歳までの二十年間をプレイヤーの数だけ繰り返し、最終的に死ぬ。時に医者であったり、時に国会議員だったり、時に弁護士だったり。

 その中で一番なることが多い、いや、最終的に数ある職業の中で一番人との付き合いが少ないから選ばれたであろうそれは、航空自衛隊のパイロット、戦闘機乗り。

 そして衝撃の事実、このゲームのヒロインはすべて本来であれば死亡していて彼がそのすべてを改変し、全員を生存させてプレイヤーが攻略する。そう、一人攻略するのすら難しいのはこの裏設定があるから。

 小学五年生の時に強姦魔からヒロイン二人を救出。

 売春を強要される義妹を助ける為に六千万を払う。

 ヒロインを誘拐した半グレの武器を鹵獲して制圧。

 謎の秘密結社に狙われたヒロインを山の中で一ヶ月守り抜く。

 その後も色々な紆余曲折うよきょくせつがあるわけだが、高校一年生になった時……このゲームをプレイする人間にヒロインを奪われて空に向かう。

 グッドエンディングがこのゲームの正史、でも、これはグッドとは呼べない。


「相沢大先生……寝取ってごめんなさい……」


 誰一人殺させないでループした先にあるのが親しい女の子全員性奴隷ルートとか……。

 こうしてハレスティは知名度と売上、そして相沢明広という少年をプレイヤーに刻みつけた。だからネットではハレスティで相沢明広を語る時は「大先生をつけろよNTR野郎!!」と言われている。

 そんなこんなでハレスティをクリアした俺は一つだけ思う、


「相沢大先生が主役のゲーム……来月発売だよな……」


 ハレスティ発売から三年、ネットでは相沢大先生の名前がミーム化したり、女の子を命を張って助けるキャラクターや人物を相沢大先生と比べたりが流行っている。正直、今どきのラノベが相沢大先生の献身に勝てることはなく、ある意味で唯一無二の存在に昇華しているのではないだろうか?

 そして待望の相沢大先生が主役の次回作、時系列はハレスティと同じ、シナリオは発売されてからのお楽しみだとか? それでも相沢大先生をロールプレイできるなら数万円くらい出せる! それに、ハレスティも次回作発売記念で1000円で販売されてるのだから!!


「さてさて、ネットに書き込もう……」


 掲示板に大量に連なる【相沢大先生……寝取ってごめんなさい……】、これはハレスティのグッドエンドを達成し、相沢明広の日記を読んだ者だけが書き込める謝罪の言葉。自分もようやく相沢大先生に許しを請えるのだ……。


「相沢大先生……寝取ってごめんなさい……」


 エンターキーを叩いた。

 達成感から眠たくなってきたな……相沢大先生の新しい物語が楽しみだ……。

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