束の間の休息と終結

妹が精神的にやばい

 さて、現状を説明することが先か、それとも大声で自分の父親を呼ぶことが先か、どうにもその選択肢しかないこの状況。そうだな、例えるなら捌かれるあんこうを想像してみて欲しい、フックに吊るされて熟成された豚のもも肉のように削られる。何を言いたいのか? 絶望的な状態ということさ……。

 いや、一昔前にヤンデレな女の子に監禁されて夜も眠れないCDとかいうのが流行っていたじゃないか? それを現実でやられているのだ。そう、我がラブリーシスターこのみに……。

 そもそもこれはご褒美なのではないだろうか? ヤンデレ気味な妹に手足を拘束され、見るからに切れ味の良さそうな包丁をチラチラさせられている。いや、これはご褒美だ。我々の業界ってやつだ。うん。

 いや、まて? よくよく考えたら俺はソフトSだ。小さいソフトクリームというわけではなく、軽くサディストという意味だ。


「お兄ちゃん……一ヶ月もどこをフラフラしてたの……?」

「宇宙人にめざめるパワーを貰って異世界で戦国無双してた」

「……まあいいか、お兄ちゃんを独り占めできるもん」


 小さい体、大きなロマンとは言ったものでこの小さな体が非常に高い庇護欲と母性を感じさせるのだから女というものは不思議である。あ! けっして幼い妹に劣情を感じたわけではなく、女の子という存在がいかに男の子という存在に影響を与えるかを推理しただけ、それ以上でもそれ以上でもある!


「お兄ちゃん……どうしてわたしを置いてったの……?」

「ふっ、男には旅が必要なのさ……それを警察て――ッ!?」

「あむ、れろれろ……はあはあ……」


 この幼女ペロチューしてきたぞ!? 幼女なのにペロチューぞ! あれ、幼女って何歳まで? 一桁年齢までは幼女でいいのかな、今すぐペディア先生に相談したい気分だ。ペディア先生は何でも知ってるな! ……ペディア先生は答えてくれない。

 なあ、大先生……俺はあと何回妹に発情すればいい、あと何回妹にガチ恋すればいい! 答えてくれ大先生!


「お兄ちゃん……赤ちゃん作ろ……?」

「いや、作らないから」


 手錠だろうが亀甲縛りだろうが縄抜けする俺に抜け出せない拘束なんてない。いや、俺だって妹と赤ん坊を拵えるなんて毎日がハッピーバースデーなイベントに喜々として乗り込む勇気くらいあるさ! でもね、ゲームのこのみは処女なのだ、もし、もし! 俺がこの場で間違いを犯してしまった場合、またあの一ヶ月がやってくる。快感と辛さを天秤に乗せたら辛さが勝るという悲しい現実、なんだろう、目から出汁が出てくる。美味しいお味噌汁が作れそうだ。


「妹よ……我兄ぞ? 兄は属性的に妹に強い」

「……お兄ちゃんはわたしのこと嫌い?」

「我兄ぞ? 兄の大多数はシスコンだ!」

「なら……いいよね……」


 あれ、兄妹図鑑では兄属性は妹属性に強いと書かれていたのだが、どうにも妹属性に兄属性が負けているぞ!? おいおい、出版社訴えられるぞ、だって有利な筈の妹に不利ついてんだから。

 さて、我がマイシスターに言わなければならないことがある。


「……このみちゃんには幻滅しました。お兄ちゃんやめます」

「――え? えぇ……」

「このみちゃんがお兄ちゃんのこと大好きなのはわかるけど、ね? 互いの合意が無ければこれ強姦だから、このみちゃんはお兄ちゃんを強姦してるんだよ、犯罪だよ? このみちゃんは賢いからわかるよね、犯罪は悪いこと、犯罪に走るこのみちゃんを妹なんて思いません! お兄ちゃんやめます!!」


 あ、泣いた。

 しょうがねぇ! 抱きしめるだけではしてやるさ……お兄ちゃんだから!

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