第11話 北海道はデッカイドウ!

 なるほど7号線は車の出入りが激しい。最初からこっちに来ていればと悔やまれるが、そんなことを言っていても仕方がない。これまでのロスを取り戻すべく手をあげた。

 1台の車が止まった。若い兄ちゃん2人組だ。急いで乗り込む。

中  「すいません!7号線をずっと北に行きたいんですけど。」

兄A 「どこまで行くの?」

も  「北海道まで行きたいんです。」

兄A 「ほんま?北海道までヒッチハイクで行くんか!」

兄B 「北海道はデッカイドウ!」

中・も「・・・・」

 なかなか面白い兄ちゃんたちだ。兄Bのボケ攻撃になれてきた僕たちは、ツッコミで軽く反撃しながら、一番手前の道の駅まで乗せてもらった。

 この豊栄の道の駅には、トラックもたくさん止まっている。これなら大丈夫だろう。トラックで距離をかせぎたいため、乗用車はやり過ごす作戦を立てた。しかし、ここで本日2度目の失敗をやってしまった。なかなか動く気配のないトラックを待ちきれず、僕が助手席のかわいい女性に目がくらんで手をあげてしまったのだ。そのカップルの車は見事に止まり、僕たちが交渉して乗り込もうとした時、トラックが立て続けに2台出ていった。そのトラックの運転手と目が合った時、「失敗した!」と思ったがもう遅かった。僕たちを乗せた乗用車は数キロ先の便所しかない小さな道の駅に入り、僕たちだけを残して闇に消えた。

 車はというと目の前のラーメン屋に数台とこの道の駅のトラック数台。後は7号線をびゅんびゅん飛ばしている車だけ。トラックはみんなカーテンを閉めているから、一晩寝て明日の朝の出発なのだろう。

 ラーメン屋に山形ナンバーの車を見つけ、出てくるのを待ち伏せたが、これから新潟に行くということでがっかり。もう後は動いている車を止めるしか手はない。

 僕たちは信号機の向こうの明かりの下で手をあげた。辺りはだいぶ暗くなっているし、車も結構スピードが出ている。そう簡単には止まらないだろう。長期戦を予想して2人とも無口になって指を立てる。

 30分ほどで人の良さそうなおじさんが止まってくれた。少し先の、トラックもよく来ているというガソリンスタンドに降ろしてもらう。

 スタンドの出口の所に腰掛け、昼間、ヨキさんからいただいた枝豆を食べる。これがまたうまい。2人して「うまいうまい」を連発しながら、今日という一日を思い出して笑う。

 枝豆をアッという間に平らげて、出てくるトラックに手をあげる。ガソリンスタンドに、柴田恭平に似た男ットコ前の兄ちゃんが彼女らしき女性と話をしているのが見える。また彼女の方もかわいいんだ、これが。

も「ええなぁ、美男美女やな。」

中「何話してんねんやろ。」

も「『ヒッチハイカーおるでぇ』ゆうてるんちゃう?」

中「なんで関西弁やねん。」

も「・・・」

中「よぉし、こうなったら意地でもここで止めるぞ!」

 走っている車にも手をあげる。しばらく待って、僕たちがへこみそうになってきた頃、目の前に車が止まった。まだ結構若くて渋い感じのおじさんだ。ひたすら北へ向かいたいと告げてから、僕は恭平カップルの方を振り返った。見ると恭平は僕たちに向かって斜に構え、ヒッチハイクのポーズをしているではないか。そして、彼女の方は僕が見ているのに気づいて嬉しそうに両手を振ってくれた。なんや、応援してくれとったんやん。僕はガッツポーズを返しつつ車に乗り込んだ。

 僕たちの乗り込んだ車はやっとのことで町に入った。なんとなくほっとする。この渋いおじさんは途中でポカリスエットを1本ずつくれ、自分が曲がる四つ角の手前で降ろしてくれた。この時、「もし、どうしてもつかまらんかったら連絡しておいで!」と言って名刺をくれた。そこには、小杉建装、代表、小杉武仁の文字がかっこよく並んでいる。

「うわっ!社長さんやん!」

信号を左に消えていく車を見送りながら2人。

「かっこええ!!」

 代表、小杉武仁のにくい演出に興奮しながら移動。場所をかえる。新潟の見知らぬ町を道にそって歩きながら北海道を想う。

「北海道はデッカイドウ!」

急に7号線1台目の2人組を思い出して頬がゆるむ。僕たちの中で北海道はどんどんデッカイものになっていく。

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