第23話 マキコさん

 すぐに稚内に向かうカップルをつかまえ、40号線まで乗せてもらう。

 ここでもじゅとある賭けをする。賭けと言っても、家に帰り着くまでに乗り継ぐ車の台数を予想するだけ。ピッタリでないと勝ちではないし、金額が1000円だからギャンブル性はないが、ちょっとした楽しみにはなる。ここまでの55台を考慮して、もじゅが92台、僕が87台と予想した。

 そんな話をしながら歩いていくと、前方に車が止まっている。もじゅと顔を見合わせるが、ヒッチもしてないのに車が止まるわけがない。僕たちはその車を通り越してヒッチを開始する。

プップー!クラクションの音に続けて、力強い女の人の声がした。

「どこまで行くの?」

さっきの車だ。女性が窓から顔を出している。

 この女性はアキコさん24才。今日は休みを取り、土日と明日の敬老の日を利用して、1人で3泊4日の小旅行を楽しんでいるのだと言う。

 僕たちが乗り込むと、アキコさんは札幌までの道の駅ならどこまででもいいと言って、地図を投げて寄越した。僕たちは遠慮せずに一番南の北竜PAという所を指さす。ここからまだ300km以上ある。しかし、アキコさんは、

「いいよ、どうせ通るし。」

と全く気にも留めない。

 男に生まれたかったと言うアキコさんは、かなりボーイッシュでかっこいい。僕たちが、女1人で2人の男を乗せて、もしものことがあったらどうするんですかと訊くと、

「その場で降りてもらうか、このまま交番に行ったらお終いやん!」

と事も無げに言ってのけた。

 でもそれはちょっと甘いんじゃないか?降りろと言われて降りるバカはいないし、第一交番って言ったってどこにあるの?さっきからこの道は建物も無ければ車も通らない。もう30分以上も対向車線に光を見ていない。こんな所で後部座席から刃物でも突きつけられたら、警察に着くまで無事でいられるとは思えない。でもまあ、僕たちがそんなことをしようもんなら、ボコボコにされて森の中に放り込まれるのは目に見えているが。

 車は常に100キロ以上出ている。北海道では高速道路も下道も変わらない。下道が混んだ時に使うのが高速であって、本州で高速が渋滞するのが信じられないと言っていた。真っ暗闇を道を照らしながら風のように走る。2時間ほどで街に入り、さらに二時間以上走って北竜PAに着く。稚内から5時間近くも乗せてもらったことになる。

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