第24話 ねぐら
北竜PAはホテルのような建物がでんとあって、立派なPAだなぁと思っていたら本物のホテルだった。車もたくさんあるが全部このホテルの泊まり客だ。
もう野宿にはこりたので今日はPAで寝ようと思っていたが、ここでは泊まれない。もう一度車をつかまえようかとも思ったが、PAから出る車はないし、この闇の中で国道を走ってる車を止めるのは至難のわざである。
とりあえず光のある方向に歩く。風がびゅうびゅう吹いていて飛ばされそうだ。進行方向からの風に背を向け、エビのようになって後ろ向きに進む。
バス停を発見。北海道のバス停全部がそうなのかは知らないが、屋根や壁だけでなくドアがあり部屋のようになっている。長椅子とゴミ箱があるぐらいでたいしたスペースはないが、格好のねぐらだ。
スパゲティを作りたいが水がない。さっきのPAまで行くのがつらいので、すぐ裏の家で水をもらうことにした。2軒あるうちの奥の家を選びベルを鳴らす。玄関に明かりが点き、人の気配がしてからなかなかドアが開かない。怪しまれているのだろう。僕は持ってきた500mlのペットボトル2つを顔の前まで上げ、もじゅもコッフェルを顔の前に持ってくる。2人がおかしな格好でのぞき穴を見つめているとドアが開いた。
上品そうなおばあさんが、寝間着で顔を出した。
「どうしたの?」
「夜分すいません、水を頂きたいんですが、、、、」
ヒッチハイクで来てそこのバス停で寝ると言うと、何かあったらすぐ家に来なさいと心配してくれた。丁寧にお礼を言ってねぐらへ帰る。
ろうそくを立て、湯を沸かす。僕たちの影がろうそくの炎にあわせて揺れるのを見ていると気味が悪い。外の強い風がびゅうびゅうと嫌な音で鳴いている。僕1人だったら、すぐにでも荷物をまとめているだろう。
スパゲティをたらこ味でかき込み、すぐに横になる。昨日と違ってかなり暖かい。寝袋から上半身を出して眠る。
7時前に起きて出発。雨がぽつぽつ降っている。昨日のおばあさんにお礼を言っておこうと裏へ回る。家の前まで行くと居間に3つの人影が見え、すぐにおばあさんが出てきた。
「甘いものは好き?」
おばあさんは納屋から草餅が10個ほども入った袋を持ってきてくれた。
おばあさんの「行ってらっしゃい」に、僕たちは「行ってきます!」と元気一杯応えて歩き出す。雨が強くなってきた。
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