第20話 まさに贅沢?
おじさんには、今朝僕たちが萱原と別れた辺りまで乗せてもらう。
ここからはひたすら北上する。明日宗谷岬まで行って、明後日の夜には函館のフェリー乗り場まで帰って来ることを思うと、今日中に旭川は越えておきたい。
ここから北に向かうと上富良野の美麗を通る。ここの景色は最高で、「北の国から」の富良野の風景は大抵この美麗が使われているそうだ。そこの白金温泉に行くというおばちゃん2人組に拾ってもらって移動開始。
この車は乗り心地最高だった。ワゴンの後部座席を倒して毛布を敷いているので、悠々と足を伸ばせる。しかもおばちゃんたちが面白い。美麗に来るのは3度目だけどいつも道に迷うのよ、と言いながら本当に迷ってしまったのには僕たちも驚いた。
なんとか拓真館という建物まで辿り着き降ろしてもらう。降りしなに、
「ここはラベンダーのアイスクリームがあるのよ」
と言って千円札を渡された。
2度断ってから受け取る。すぐ手を出すのも図々しいし、断りすぎて本当にいらないと思われても困る。この辺の見極めはもじゅよりも僕の方が上だ。
そのお金でラベンダーアイスクリームを買い、きれいな景色を見ながらしばらく休む。
ここは、僕たちが通って来た道と、おばちゃんたちが向かった白金温泉に向かう道と、僕たちがこれから向かう旭川方面の道の3本が集まっている。だから当然旭川に向かってヒッチを再会。
30分ほどたって、地図を見ていたもじゅが妙なことに気づいた。僕たちが立っているのは旭川方面ではなくて、富良野方面なのだ。そして、さっき僕たちがおばちゃんの車に乗ってやって来たのが白金方面である。つまり、あのおばちゃん2人組は道に迷って白金温泉の方からここに入って来て、旭川方面に出ていったことになる。
意味を理解した僕たちはおばちゃんたちには悪いが大笑いした。あの2人はいつになったら温泉に入れるのだろう。
僕たちは旭川方面の狭い道で1発目の車をゲット。旭川まで行くめっちゃいい感じのカップル。学生時代に出会って、今は北海道と長野で長距離恋愛真っ直中のお2人だ。この2人も明日は宗谷岬に行くということだったが、このまま明日まで行動を共にするわけにもいかないので、「明日も見かけたら乗せて下さい」と言って笑顔で別れた。
さあ、旭川には着いたが腹がへって仕方がない。今日はラベンダーアイスと麓郷のカフェオレ以外には、携帯食料のクッキーとチョコレートしか口に入れていないのだ。
旭川と言えばラーメンが有名だ。北海道では札幌のみそ、函館のとんこつ、旭川のしょうゆと言われるほど。
僕たちは北海道での最初で最後の贅沢に旭川のラーメンを食べることにした。地元の知る人ぞ知るという感じの安くてうまい店を探したかったが、道端で急に「あなたのおすすめのラーメン屋は?」なんて聞くのも恥ずかしい。
コンビニで旭川を紹介したような本を2冊開いてみて、どちらにも載っていた「蜂屋」に決めた。他に比べて安いわけではないし、、変わったラーメンがあるというわけでもないが、今いる場所から近いのでここに決めた。
前の通りを西を向いて歩いていくと、10分ほどで蜂屋は見つかった。時間が早いせいか、こぎれいな店内に客は僕たち以外に3人だけ。もじゅと向かい合って座り、野菜ラーメンと豚骨ラーメンを注文する。さすがにうまい。どんぶりを交換しながら、感動を言葉にする。スープまで残さずすすり、店をでる。
合わせて1700円だった。僕たち2人が3日は旅を続けられる金額だ。まさに贅沢?
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