第14話 札幌観光
おっちゃんを見送って2人になると、早速地図を開いて現在地を確認。よくわからないが札幌からそう遠くはないはずだ。
とりあえず食事の用意。僕たちの他に人の気配がないのでPAの中でそのまま炊飯する事にした。自慢のバーナーとコッフェルセットを出して米を炊く。「始めちょろちょろ中ぱっぱっ、赤子泣いても・・・・」と歌いながら、出来具合が気になって何度も蓋を取っていたので、口当たりはべしゃべしゃ、それでいて芯が残っているという最悪のご飯になってしまった。「うまい飯を食わしたるから待っとけ!」と偉そうに言っていただけに、この後米を炊く度にもじゅに嫌味を言われることになってしまった。
海苔とふりかけで、まずい飯を掻き込んでいると、まずいことに人が増えてきた。
みんな反応は同じ。最初、「ああ疲れたぁ」などと言いながらちょっと伸びをして入ってくる。そして僕たちを見て「ぎょっ」という顔になり、目を合わせないようにしてジュースを買い、そそくさと出ていく。そんな中僕たちは腹一杯食べて、洗い物までして眠りについた。
8時前に起床。久しぶりによく寝たので気分良く目を覚ます。もじゅを見るとまだ寝足りなさそうな顔をしているがたたき起こして出発。昨日は真っ暗な中を移動してきたので期待して外に飛び出すが、めちゃめちゃ曇っていた。今まで晴れ続きで忘れていたが、天気には具合の悪い日もあったのだ。おぉ、なんてこった!
ちょっとがっかりだが、そのうち晴れてくるだろうとヒッチを始める。車の出入りはそんなに多くないが、今日は土曜だから、ちょっと札幌まで、富良野まで、という人もいるに違いない。
小林稔侍似のおじさんが声をかけてくれた。札幌ナンバーだ。今朝、知人を室蘭まで送った帰りだというから、僕たちは昨日室蘭に着いたばかりだと言って盛り上がった。このおじさんは千葉の方の人で、単身赴任で札幌に来ている。男手一つで育てた高校生と中学生のお子さんを残して来ていると寂しそうだった。
僕たちが富良野を目指していると言うと、札幌は見ないのかという話になって、クラーク博士の像が立っている「羊ヶ丘」とあの有名な「時計台」に寄ってもらえることになった。僕たちはすっかり観光客気分で、クラーク博士の真似をしたり、修学旅行生に混じって時計台の前で写真を撮りまくった。
一通り写真撮影が終了し、辺りを見回してえらいことに気が付いた。
小林稔侍似のおじさんには時計台の前で降ろしてもらったのだが、こんな町中では簡単にヒッチハイクはできない。札幌観光に夢中でこの後富良野に向かわなければならないことをすっかり忘れていた。
僕たちの持っている1/250.000の「全日本道路・ガイド付」ではここが札幌のどの辺りなのか全く分からない。とりあえず、そばに止まっていたバスのガイドさんに聞いて札幌のIC目指して歩き出した。途中道を訪ねたガソリンスタンドの青年は、「えぇ!札幌のICまで歩いていくの?」と怪物を見るような目で見ていた。歩いていくのは無理らしい。
やっぱり車を見つけることにしてヒッチ開始。こんな所では無理だろうと思っていたら、以外と早くつかまった。北海道に来てから調子がいい。
ベレー帽をかぶってはきはきとしゃべる青年で、見たところ美術大学にでも行ってそうな感じだ。苫小牧まで行くからICで降ろしてくれるということになった。
この札幌ICは苫小牧、旭川、小樽の三方向から来る高速が、僕たちの頭の上で絡み合っているため、降ろされた苫小牧方面の乗り口から、旭川方面の乗り口を探すのが大変だった。逆を向いて手をあげていて、止まった人に教えられて初めて気付いたぐらいだ。
やっと見つけた乗り口でヒッチ再会。天気はまだ冴えない。小粒の雨が降ったり止んだりしている。
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