第23話 年末年始
今日は大晦日。今年もあと四時間あまりで終わってしまう。
毎年、大晦日には父と母と三人で近所の神社へ元朝参りに行くのが恒例だ。私は、出かける時間まで、居間で紅白歌合戦を見ながら受験勉強をしていた。年末でも受験勉強は欠かせない。もう既にラストスパートに差し掛かっているのだ。私は黙々と勉強をしていた。
ある程度の区切りがついたところで、コーヒーを飲んでいると、母が「元朝参りに行くよー」と声をかけてきた。時間をみると既に時計の針は二十三時三十分を指していた。
神社には一月一日の零時までに行き、零時になった瞬間に神社に集まった人達に挨拶し、神社をお参りするのが主流となっている。
私は急いでコーヒーを飲み干し、トイレを済ませ、元朝参りへ行く準備を始めた。田舎の冬は雪深い。例年だと三十センチは積もっていたが、暖冬ということもあり、今年は十センチほどの積雪であった。暖冬でも夜中の気温はマイナス十度ほどにもなる。神社は山に中にあるため、長靴を履き、しっかり防寒をして外に出た。今日はとても寒い。鼻の天辺が冷たくなってきた。
「よし、行くか!」
父を先頭に、私と母も歩き出した。神社までは徒歩で、片道十五分ほどかかる。途中、雪道で滑りながらも、ようやく神社に辿り着いた。定刻の五分前には到着することが出来た。
神社には既に、十人ほど集まっていた。その中の三人は神社の係の人で、ラジオをつけながら焚き火をしていた。きらりと淳の姿も見えた。
――ピッピッピッポーン。
ラジオから零時の時刻のお知らせが流れた。零時に鳴った瞬間、周囲では、
「あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」
と、新年の挨拶を交わす声が聞こえた。
「夏希さん! あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」
きらりが私に声を掛けてきた。
「こちらこそ、よろしくねー」
「あけおめー、ことよろー」
淳は新年の挨拶を省略して、私ときらりに声を掛けてきた。こいつは年が明けてもいつも通りだ。
神社に来た順にお参りが始まった。まもなくして、私達一家の順番が周ってきた。父と母と私は賽銭箱の前まで行き、お賽銭をし、鐘を鳴らしてお参りをした。願い事はもちろん、第一志望校合格!
お参りの後は、署名を書き、みかんを貰った。飲酒できる人は、お神酒を貰って飲んで帰る。
家に戻った私達は、年越しそばを食べた。時間は既に一時半になっていた。
布団の中に入るとふと考えてしまう。中学校生活もあと三ヶ月。そして、閉校まであと三ヶ月。受験のことで頭がいっぱいになっていたが、卒業と閉校のことを考えると、寂しい気持ちでいっぱいになる。三月末までやらなければならないことがたくさんある。悔いの残らないようにやり遂げよう。そう思う年末年始であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます