第27話 入試
「やったー!!! 合格通知貰ってきたー!」
ふーは飛び跳ねながら、教室に入ってきた。
大きめの袋を手にしている。
第一志望校に合格したから、テンションが爆上がりだ。
「おめでとう!」
私と千秋は、ふーにお祝いの言葉を掛けた。
「ありがとう! なっつと千秋は明日が受験日だよね」
「そうだよー。とうとう明日だよー。緊張する~」
千秋はちょっとソワソワしていた。
それに比べて私は、受験前日だというのに魂が抜けたようにボーとしていた。
「てか、なっつ! まだ終わってないのにそんな顔しないでよ。しっかりしなよ!」
ふーが気合を入れてくれたが、私の緊張と不安は半端なかった。
「面接頑張るよー」
やっと返した言葉がそれだった。
「筆記試験も頑張れよ……」
千秋が呆れながらツッコんできた。
「人はねー、頭の良さだけじゃないんだよ。礼儀がちゃんとしているかしていないかで決まるんだよ」
「それ、逃げてるだけじゃん」
もはや掛ける言葉が見つからない千秋。
「まー、二人とも、頑張ってきなよー。待ってるからね!」
ふーは私達を励ましていた。
そこに、川村先生が教室に入ってきた。
「帰りの会始めるよー。着席してー」
私達は席に戻って着席した。
「いよいよ明日、一般入試の日です。今までやってきたことを充分に発揮してきて下さいね。二人とも、冬美に続け! それでは! フレー! フレー! ちーあーき! フレーフレー千秋! フレーフレー千秋! おー!!! ガンバー! ガンバー! なーつーきー! ガンバーガンバー夏希! ガンバーガンバー夏希! おー!!!」
ふーも川村先生と一緒にエールをしてきた。
私と千秋は冷めた顔をしていた。
これ以上、プレッシャーを与えないでくれ!
「よし! 解散!」
川村先生は満足したようだ。
私と千秋は帰る前に、校長先生の元に行って挨拶をした。
「明日、第一志望校の一般入試を受けてきます。頑張ってきます」
「お二人さんが頑張ってきたことはよく見ていましたよ。明日は気をつけて行ってきて下さいね」
「はい、ありがとうございます。失礼します」
そう言って、私と千秋は玄関で待っているふーの元へ行った。
「校長先生、なんだって?」
「気をつけて行って来いだってさ。川村先生の時と違って、校長先生は落ち着いていて、なんかリラックス出来た感じがする」
「やっぱり、なっつも思った? うちもだよー」
千秋も同じことを思っていたらしい。
「二人とも、第一志望校合格できるって! リラックスして受験受けてきなって!」
「はいはい。ふー、明日一人で授業でしょ? マンツーマンがんばー」
「二人いないの嫌だなー。多分、プリントやることになると思うけど……」
「二人がインフルエンザで休んだ時、私もマンツーマンでプリントやってたんだからねー。お前も同じ状況を味わえ!」
「むぅ~」
話に夢中で気づかなかったが、いつも道中で家の方向に行って別れるのに、今日はバス停まで着いてきた。
「ふーの家、通り過ぎてるよ? いつも『じゃーねー』って言って家に入って行くじゃん」
千秋が、ふーに聞いた。
「今日はバスが出るまで見送るよ!」
「そう? ありがとう」
まもなくするとバスがきた。
私と千秋は乗車した。
「じゃー、また来週! ファイトー!」
「ありがとう! お前もマンツーマン授業ガンバ!」
「ありがたくねー。バイバーイ!」
そして、受験当日。
「忘れ物ない? 受験票持った?」
「大丈夫だって。何回も確認した。終わったら携帯に電話するから」
「はいはい。頑張ってきなよ!」
「はーい」
受験会場まで送ってきてくれた母と別れて、私は玄関に向かって歩いた。
すると、かすかに男の人の声が聞こえてきた。
その声は段々と近くなってきた。
「おいおいおい。気づけよ! 待てよ! おーい!」
振り向くと川村先生が私の方に向かって走って来た。
「あれ? おはようございます。どこにいらしていたんですか? てか、いました?」
「いたいたいた! ちょうど、夏希が車から降りた所にいた! ガッツリいたから! 絶対気づく所にいたよ! なんなら、夏希が車降りたあたりにお母さんに挨拶してたよ! 緊張しすぎ! 歩くの早すぎ!」
「すみません! 気づかなくて。緊張はしてますが、普通に気づきませんでした」
「まったくー。応援に来たんだよ。今まで頑張ってきたんだから、ベスト尽くしてきてね」
「はい、ありがとうございます! 行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
私は川村先生に見送られ、受験会場に入って行った。
今までやってきたことを無駄にしない!
みんなが協力してくれた!
みんなの期待に応えなきゃ!
一生懸命に問題を解き、面接では面接官の質問にハキハキと応えた。
面接終了後、廊下に出ると、事務連絡があった。
「これで試験の一切終了となります。お疲れさまでした。合格発表は三月十五日の十五時からです。気をつけてお帰り下さいね」
「はい。ありがとうございました」
私は高校の先生に一礼をして受験会場をあとにした。
やっと終わったぁ~!!!
受験対策の時からを考えると長かったなー。
私は受験の開放感に気分が上がっていた。
そして、受験後の初登校日。
「お疲れ~。これでみんな受験終わったねー。あとは、卒業式の準備だねー」
「そっかー。卒業式の練習始まるんだもんねー」
千秋とふーが話していると、川村先生が教室に入ってきた。
二人の話が聞こえていたのか、話に加わってきた。
「うーん。それもなんだけど。卒業アルバムの準備もあるんだよねー」
「卒業アルバム? そういえば入学式の時、一人一つアルバム貰ってたよね? 先生から写真貰ってアルバムに挟んでいくんじゃないんですか?」
私は川村先生に聞いた。
「それが、この学校では三年生がパソコンで写真編集してアルバムを作るらしいよ?」
「え! そうなんですか!?」
マジかよ!
私と千秋は驚いた。
すると、ふーが手を上げた。
「んじゃー、卒業式の写真も編集できるかな? どうせなら卒業式までのアルバム作りたいじゃん!」
「歴代の先輩達も卒業式までアルバム作っていたようだよ」
ふーの提案を聞いて、思い出したかのように川村先生が言った。
すると、千秋が、
「それって、卒業式の後も何日か学校に通わなきゃいけないってことかー。まぁー、どっちにしろ、閉校式や歓送迎会に来なきゃいけないしね。どうせならギリギリまでアルバム作ろうよ!」
と言った。
「そうだね!」
自分達で卒業アルバムを作れることに嬉しさが込み上げてきた。
三人とも、やる気満々だ。
「んじゃー、写真はディスクにまとめておくからね。アルバム作り頑張ってねー」
こうして、自分達の手作りの卒業アルバム作りが始まった。
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