第24話 真面目すぎるおバカな生徒達

 今年の冬は暖冬であった。しかしある日、大雪警報が出るほどの積雪があった。いわゆるドカ雪である。この日は冬休みに行う、奉仕活動の日であった。奉仕活動は二ヶ所に分かれて行う。


 私の近所にある公民館、学校のバス停の二ヶ所で清掃を行う。

 私と亜沙、きらり、淳は公民館、ふーと明日香、靖郎は学校のバス停の担当だ。


 家の玄関を開けると、六十センチくらいの積雪があり、機械じゃないと雪かきが出来ないほどであった。そして更に、最悪な事態になっていた。大雪のせいで姫乃森地域は停電になっていたのだ。亜沙達に連絡しようにも、どうにもできない状態であった。


「どうしよう……」


 そう言っていると、母が心配そうに話し掛けてきた。


「これじゃー無理なんだ。先生も分かってくれるでしょ」

「うーん。でもみんな来てたら……」

「こんな雪で来れるわけないでしょ」


 母の言う通りだ。しかし、公民館の鍵も借りてきていたし、学校の活動だから必ずやらなければならないという責任感に晒されていた。

 結局私は、スコップで雪を掻き分けながら公民館に向かった。いつもなら徒歩で三分で辿り着ける距離であったが、スコップで雪かきをしながら行ったお陰で、公民館に着くまで二十分もかかってしまった。冬なのに結構な汗をかいてしまった。

 公民館に着くと、きらりと淳がスコップで雪を掻き分けて、玄関まで向かっているところであった。


「おーい!」


 私は二人に向かって声を掛けた。すると二人は私に気づいてくれたようで、手を大きく振ってくれた。


「夏希さーん! 雪ヤバいですー!」


 きらりが大声で言った。


「早く玄関開けて下さーい!」


 淳が雪を払いながら言った。


「分かってるってー!」


 私は、公民館の玄関を開けた。


「やっと着いた~」


 後ろを振り向くと、ヘトヘトになりながら歩く亜沙がいた。


「頑張ったねー。さぁー、ちゃっちゃと終わらせて帰ろう」


 そう言って私は、掃除道具が入っている倉庫に入っていった。

 亜沙は箒で和室の掃除、きらりはテーブルの拭き掃除、淳はホールのモップがけをやりだした。私は掃除機をかけようと準備し、スイッチを押した。しかし、掃除機が作動しない。


「あれ? どうして?」

「なっつ、停電してんだから、掃除機使えるわけないじゃん」


 亜沙がツッコんできた。


「あ、そっか。忘れてた」

「夏希さーん! モップ掛けたから、掃除機でゴミ吸って下さーい!」

「あっつー、停電してて使えなーい!」

「あ、そっか」


 淳も停電していたことを忘れていたようだ。


「夏希さーん! 電気つかなーい!」

「停電してるからつかないよー!」

「あ、そっか」


 きらりも忘れていたようだ。


「あんた達……」


 亜沙は呆れていた。

 適当に掃除を終わらせて私達は解散した。みんな、汗と雪で濡れてビショビショになってしまっていた。お陰で、みんな家に帰ると親に怒られたのであった。

 後にふー達に奉仕活動の日のことを聞くと、バス停組もみんな揃って掃除をしたという。


「大雪で大変だったよねー。でもやんなきゃいけなかったし、しょうがないけどね」


 そう、ふーは言った。


 あとで、先生達から停電するくらいの大雪の日は危険であるため、無理にやらなくて良いことを言われた。終いには、バカ真面目にも程があるとまで言われてしまった。

 しかし、私達は満足していた。奉仕活動は今回で最後。ちゃんと掃除をしてきたことに胸を張っていたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る