第11話 小さな学校の部活事情
夏休み。それでも私達は学校にいた。部活があるからだ。夏休み中はスクールバスが動かないため、自転車で学校まで通う。
平日はほぼ毎日部活がある。部活動は三つ。もちろん人数が少ないため、全員三つの部活をやらなければならない。卓球、陸上、太鼓である。
卓球と太鼓は一年を通して、陸上は秋の大会に合わせて夏休みの時だけやっている。基本、午前中のみ部活をする。そのため、卓球一時間、陸上一時間、太鼓四十五分間と、時間を区切って行っていた。
初めに陸上を行う。皆んな百メートル走に出る。真夏の走り込みは一時間とはいえ地獄だ。ちなみに、他校と違って、陸上に力を入れていないため、出場しても下から数えた方が早い順位だ。ちなみに、今秋の大会でも例年通りの結果であったことは、また別の話になる。
陸上の次は、卓球だ。卓球はスポーツ少年団として小学校の頃から皆んなやっている。しかし、陸上と同様、あまり力が入っていないため、温泉卓球並の技術で和気あいあいとやっている。そこに先生が入るとまさしく温泉卓球になる。先生方の中に卓球の経験者がいないため、生徒はこの時とばかりに先生のことをこてんぱんにする。
「スパコーンッ!」
「いってー!お前、オレに恨みでもあんのかッ!?」
私は加減を知らないため、いくら経験のない川村先生でも、容赦なくスマッシュを打ってしまう。
「いや、恨みなんてないんですけど……。先生、チャンスボールばかり出してくるので……しかも、スマッシュしやすい丁度良い高さのボールだし、ついつい」
「お前は加減を覚えろ!」
「はい! すみません!」
まだラリーが続くだけでも良い方だ。回転サーブを出すと、返すことすら出来ないこともある。まるで先生のための部活のようだ……。卓球の時だけは、川村先生も内藤先生も楽しそうだ。というか、遊んでいるようにしか見えない。
一時間もあっという間だ。卓球台を片付け、休憩後、太鼓の準備をする。
太鼓は、地元のお祭などで披露するが、もう終わってしまったので、文化祭や卒業式、閉校式、先生方の送別会に向けての練習になる。
「先生もやってみよーっと」
川村先生と内藤先生は興味があるようで、倉庫からバチを持ってきた。
「部長どうします?」
靖朗が私に聞いてきた。
「んー。まー、いいんじゃない? みんなはどう思う?」
「小太鼓ならいいんじゃない? ずっと一定のリズムで叩くだけだし」
亜沙が言った。
「そうだね。んじゃー、先生の小太鼓二台準備しようか」
そういうと、二年生が率先して準備をしてくれた。
「じゃー、祭ばやしからやろうか」
祭ばやしは、特大太鼓を靖郎、かねは淳、小太鼓はふー、中太鼓は私と亜沙、きらり、明日香が担当する。私は太鼓の枠を打ち、合図を出した。
特大太鼓のソロから始まり、メロディー担当の中太鼓が打ち込みをする。その後、小太鼓が合図で曲が始まるのだが……。ん? 小太鼓のリズムがバラバラで叩きづらい。私は太鼓の枠を連打し、ストップの合図を出した。
「待って! なんじゃこりゃ?」
「部長、先生二人でーす」
淳が言った。でしょーねー。
「以外と難しいなー」
先生達は言った。それもそうだ。小太鼓をマシに叩けるようになったのは小学校3年生の時である。私達でさえ、丸三年はかかっているんだぞ。
この日は先生達に叩き方を教えて、部活は終わった。次の日からは、先生達は私達が叩いている様子を見るだけになった。
お昼御飯を食べるために図書室へ戻った。午後、宿題をするためだ。学校でやった方が捗る。二年生はお昼御飯を食べて帰って行った。三年生だけが残った。
「今日の部活はハチャメチャだったねー」
私がそう言うと、亜沙とふーは頷いた。
「もはや、先生達の楽しみに付き合っている感じがした」
亜沙が呆れながら話した。
「なっつ、卓球の時、川村先生をいじめているように見えて笑った」
「いじめてないよ! 先生が弱すぎて、練習にならなかったんだよ」
ふーが私をからかってきた。
「そういや、二人とも高校決まったのー?」
私はふーと亜沙に進路の話を持ちかけた。
「うちは隣町の進学校にするー。川村先生がすごい勧めてきたし。成績から、その学校が良いって言われてさー」
「へぇー。ふーは?」
「まだー。全然、受験生の実感が沸かない。なっつは?」
「まだ迷ってるー。迷っている高校はどっちも隣町の高校なんだけどね」
真面目に高校を決めないと……。そろそろ受験に向けての準備が始まる。焦りと同時に、この二人とはあとどのくらい一緒にいれるのかと考えると、寂しさが込み上がってきたのであった。
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