第36話 タイムカプセル
閉校式から三日後。
私と千秋は、ふーの家に遊びに来ていた。
今日はタイムカプセルを埋める日だ。
私達は入れるものの準備をしていた。
「手紙書いたー? 缶、準備したから入れてねー」
ふーは自分の手紙を入れた缶を手渡してきた。
「はいよー。今、封筒に封するから」
「んじゃー、うちの先に入れるねー」
千秋が先に手紙を缶に入れた。
その後、私も缶に手紙を入れた。
「あとは写真だね。これでいいかな?」
「ちょっと見せてー」
千秋はふーから写真を受け取り、チェックを始めた。
私も写真を覗いて見た。
夏休みに学校で勉強している写真や、卒業式に撮った写真であった。
「いいんじゃない?」
「そうだね。いいね」
「じゃー、これも缶に入れて……。缶に封するよー」
「はいよー。じゃー、ガムテープで……」
千秋が缶にガムテ―プをグルグルと巻き始めた。
「よしっと! 早速、埋めに行こうか」
「うん!」
「ふー、スコップある?」
「うん、あるよー。このスコップ使ってー」
私はふーからスコップを受け取った。
「なっつ、スコップ合うねー」
「来月から農業高校に通いますからね!」
私達は、中学校の桜の木の元へ歩いて行った。
「よし、なっつ! ここ掘れ!」
「おい、千秋。『ワンワン』って言うとでも思ってたか? 犬じゃねーんだから」
「ごめんごめん。さぁさぁ、掘って掘って」
私はタイムカプセルを埋めれるくらいの穴を掘った。
「うん、このくらいでいいと思うよ」
そう言ってふーは、穴の中にタイムカプセルを置いた。
「おっ、なっつ。ピッタリじゃん! さすが!」
ふーが満足そうに言った。
「んじゃー、埋めるよー」
私は穴に土を戻してタイムカプセルを埋めた。
「五年後だね」
「うん、成人式の日に掘り起こそう」
「またここに三人で集まろう。約束だよ!」
五年後、私達は二十歳になっている。
その日まで、手紙に何を書いたかはお互い伏せておくことにしている。
私はふと笑いながら言った。
「ねー。これ五年後、三人とも忘れてたらウケるよねー」
「ないない。たった五年だよ? 忘れてても誰か一人くらい覚えてるでしょ!」
ふーは笑いながら言った。
すると千秋が、
「ふーは忘れてそうだけどね。言い出しっぺが忘れてたらおかしいよね」
と言ってからかっていた。
「ひどい! たった五年だし、忘れないもん!」
三人が笑いながら話していると、風が吹いた。
桜の木の枝が風に吹かれ、まるで桜の木も笑っているかのような音が聞こえた。
「さっ、戻ろうか。なんか、お父さんが相談したいことがあるんだってさー」
「そうなの? 分かったー。行こう」
私達はふーの家に戻った。
「おかえりー。ちゃんと埋めてきたかい?」
家に着くとふーのお父さんが出迎えてくれた。
「うん、バッチリ!」
「良かった。五年後が楽しみだね。なっちゃん、千秋ちゃん。ふーから聞いてたと思うけど、相談したいことがあってね。中に入ってー」
「はーい」
私達はリビングのテーブル席に座った。
「二十八日にPTA主催の先生方の歓送迎会をやるんだけど。みんなの太鼓演奏が終わった後、みんなから先生方に花束と記念品を贈呈して欲しいんだけど、頼めるかな?」
「良いですよー」
「うちも良いですよ」
「オッケイ、オッケイ!」
三人とも、了承した。
「ありがとう。流れなんだけど……。みんなが太鼓を叩き終わったら先生方の方に行ってもらって、そしたら父兄が花束と記念品を持ってきてあげるから。受け取ったら先生方に贈呈してね。担当も決めようか」
「そうだね! その方が流れ良いかも」
ふーがメモを取りながら言った。
「校長先生にはふーとPTA会長の私が。川村先生にはなっちゃんと千秋ちゃん。内藤先生には靖朗君と淳君。中野先生には明日香ちゃんときらりちゃん。そんな感じで良いかな?」
「良いと思います。そしたら当日、二年生達にも伝えておきますね」
「ありがとう、なっちゃん。みんな、当日よろしくね」
「はい!」
「サプライズだね! 先生達、泣くかなー?」
ふーは先生達が泣くのを期待しているようだ。
「案外、泣かないかもよ?」
私がそう言うと千秋が、
「そう? うちもふーと一緒で泣くと思うなー。特に川村先生! 祝賀会でも泣いてたじゃん!」
と言ってきた。
言われてみればそうだったな~……。
「サプライズ、成功すれば良いね!」
「そうだねー」
思わずサプライズ企画に胸が高まってきた三人であったのだ。
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