第6話 テスト

 テストまであと二週間となった。

 出題範囲も発表されて、テスト勉強は大詰め。

 だけど、全く捗らない……。

 もうなるようにしかならない!

 そう開き直りたくても、受験に響くと思うと、赤点だけはどうしても回避したい。


 そんな時、ふーが土曜日に家でテスト勉強しようと提案してきた。

 ふーの家は保育園の向かいなので、学校からは徒歩5分。

 千秋も賛成で、勉強会を開催することとなった。


「テストだるいねー」

「でも、ふーはお茶の子さいさいでしょ? 頭いいもん」


 頭のいい人、本当にうらやましい。


「でも、テスト前はさすがに勉強するよー」

「そうなのー? あ、英語教えてよー」

「いいよー」

「あ、うちもー。文法分かんなくてさー」


 どうやら千秋も、英語は苦手らしい。

 ふーは、アメリカに短期留学したこともあり、英語はペラペラなのだ。

 そして、勉強会の日。

 メリハリをつけるため、午前中はみっちり勉強し、午後は遊ぶことにした。

 英語を中心に勉強したけど、ふーとのレベル差がすごすぎてびっくり。

 何を聞いても、正確な発音でペラペラペラ~と答えてくれる。

 教え方も丁寧で、なんだかすごくかしこくなった気分になった。

 お昼過ぎに、休憩がてらに三人でグラウンドを歩いた。

 すると、ふーが何かを思いついたように、小走りで桜並木に向かった。


「ねえ! この桜の木の下にタイムカプセル埋めない?」


 そう言えば、タイムカプセルやりたいって言ってたなー。


「そうだねー。この桜の木、目立つから分かりやすいんじゃない?」


 千秋は即座に賛成した。

 中庭にそびえ立つ一本の桜の木。

 樹齢百年以上とも言われる、ずっしりとした迫力ある、それでいて優しさも感じられる魅力的な木だ。

 姫乃森中学校は創立七十周年目だから、それより前からここに立っていたんだなぁ。


「場所は決まったし、あとは中身か。どうする?」


 私が聞くと、ふーが胸を張って答えた。


「五年後の自分への手紙と、写真を入れるのはどう?」

「そうきたか! となると写真なー。これから、いっぱい写真を撮っていこうよ」

「そうだねー」


 会話は弾み、空が赤く染まってくる。

 時間が経つのは早い。

 そして、あっという間にテスト初日がやってくる……。

 テストは三日間。

 三人で頑張って勉強したんだ!

 赤点だけは回避できるでしょ!

 そう思って必死に取り組み、一週間後。

 全教科の結果が返ってきた。


「ふー、すごっ! さすがだわー。うちは平均九十三ってとこかなー」


 ふーの答案用紙を見た千秋が、驚きながら話していた。


「そう? 千秋も凄いじゃん!」


 そういうふーは、最低でも九十六点であった。平均九十八点といってところだ。

 さすが、かの有名な猫型ロボットを本気で作ろうと思っている人だ。


「なっつはー?」


 千秋が私の机まで近寄ってきた。

 素知らぬ顔で答案を隠す。


「ほうほう……うわっ……!」

「こら……見るなー!」


 千秋とふーの連携プレーで、あっさりと答案を見られてしまう。


「うわっ! ギリッギリ!」


 私のテストの結果は最低で四十一点。

 かろうじて、赤点科目は無く、平均五十二点といったところだ。

 二年生の頃までは、三十八点、酷いときは二十五点のときもあった。

 三人で勉強会をしたおかげで、なんとか赤点は回避できたが、褒められる成績ではない。


「まぁー、テストも終わったし、羽根を伸ばそうよ! なんてたって、待ちに待った修学旅行だよ!」


 テンション爆上がりのふー。

 そうだ。

 もうすぐ修学旅行。

 三人だけの旅行。

 楽しみで仕方がないのだろう。


「しっかり準備しないとね。三泊四日だよー。楽しみー」


 千秋も楽しみのようだ。

 私も楽しみだったけど、不安も大きい。

 こんなド田舎から、大都会へ行くのだ。

 迷子になっちゃうんじゃないか心配だった。

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