第9話転校生がやってきた

この日の授業が終わりケンタウロスとディオが寮に戻ってきた。

がちゃっ。

寮に戻るとユニとキューピッドがカードゲームで遊んでいるところだった。

「くそ~負けた。もう一回やろうぜ。」

とユニが悔しがっているとキューピッドがケンタウロスとディオに”やあ、おかえり”と振り向いた。

「お、おかえり。」

ユニも続けて帰ってきた2人にそう言うとカードを片付け始めた。

「また今度、ケンタウロス達も一緒にやろうぜ。」

と交わしてみんなで笑った。

「そういえばもうすぐテストじゃねーの?勉強しとかないとね。」

ユニの言葉にケンタウロスは部屋に飾られている暦を見た。

「もうそんな時期なんだね。」

張り紙事件のことですっかり忘れていたが学校ではどこの生徒もテスト期間に入っていた。

「じゃあ、夕食までみんなで勉強しようか。」

ディオはそうみんなを誘って折りたたみの机を広げた。

「天文学からやろうぜ。」

「OK!]

みんなは机を囲み教科書を広げて勉強し始めた。

「惑星の運動の法則はケプラーによって発表されたっと。」

教科書を見ながらノートに書き込むキューピッドに,教科書に羽ペンで線を引いていているユニ。みんなはそれぞれ頭の中に知識を叩き込んでいく。

そうして無言の時が暫く流れていたがやがて夕食の時間になると勉強道具を片付け始めた。

「もうすぐ6時だから。行かないとな。」

「みんな片付けようぜ。」

部屋をキレイにしてドアを閉めると大広間へと向かった。そこには既に大勢の生徒達が来ていた。ケンタウロス達が席に着くとそこにウンディーネが慌ててやってきた。

「ビックニュースよ!!私達の学校に留学生が来たのよ。」

「留学生??」

ケンタウロス達が首をかしげていると大広間の入口から美女が続々とやって来た。

「彼女達は季節や時の女神達なの。左から順にエウノミアー、アストライア、エイレーネーそしてエレテーよ 。」

ウンディーネが彼女達について詳しく説明しているがケンタウロス達は聞いておらず彼女達に見とれていた。

「もう、話を聞きなさいよ。もしかしたら今回の張り紙事件を手助けしてくれるんじゃないかしら?」

ウンディーネはハラハラしていた。

ケンタウロスはウンディーネの方に向き直り”そうかもしれないね”と話を合わせた。

「これはチャンスかも知れない。」

ウンディーネはそう確信を抱いた。

 新しく来た女神達はそれぞれ自己紹介をした後、彼女達のホーラ族について語ってくれた。そんな彼女達の話に生徒達はみんな聞き入り盛大な拍手を送った。

「凄いな~。」

ケンタウロスが感心して言った。

「季節を司るって事は春は春の女神様、夏は夏の女神様がいるってことだろう?」

キューピッドが彼女達の話をまとめて言った。

「他のホーラの一族の方も美人なんだろうな~。」

ユニがそう言って舌なめずりをしたのでディオがユニに注意した。

「お前下心見え見えだって!」

「そうか?」

ユニはあっさりそう答えた。

そんなケンタウロス達から遠く離れたテーブルにワルの3人は頬杖をついて座って遠くの彼女達を眺めた。

ふんっと、サタンが鼻を鳴らしてるのに対しアマイモンは急におとなしくなった。

「どうしたんだよ?アマイモン?」

エリゴスがアマイモンの様子を伺った。

「別に。」

アマイモンは項垂れて下を向いた。そんな彼の頬は少し赤く染まっていた。

「恋の季節か。そうだろう、アマイモン?」

サタンがアマイモンをそう冷やかしたのでムキになって違うと否定した。

「で、アマイモンはどの子がタイプなんだよ?」

サタンは続けて聞いた。

「えっと・・・。」

アマイモンは恥ずかしそうにサタンの耳元で囁いた。

「アストライアーだって?正義の女神って俺達と真逆じゃねーかよ。」

サタンは驚いて大きい声を出した。

「やめろよ。声が大きって。」

「すまん、すまん。」

そんな話をしていると女神達がこちらにやって来た。その中の一人アストライアーは天使の翼が生えた美しい女神の一人だ。

「私の事アストラって呼んで下さる?」

彼女に見つめられアマイモンは”はい!!”と大きな声で立ち上がった。

「よかったら僕が学校を案内しますよ。」

「まあ、それは頼もしいわね。」

アストラがくすりと笑って去っていった。

アマイモンは今まで人を好きになった事など一度もなかった。なので初めての感情にひどく戸惑っていた。

「どうしよう。僕が悪魔と知ったら彼女に嫌われるんだろうか。」

去っていく彼女に冷たい目線を送りながらアマイモンは呟いた。

「大丈夫だって。俺達なら何だってできるだろう?頑張れよ。」

仲間の2人に背中を押されてアマイモンは”うん”と頷いた。

 翌日、留学生達は新聞記者やインタビューに追われ丁寧に受け答えしていた。この様子をウンディーネは見ていたが声を掛けようにも掛けられないもどかしさに駆られていた。

「今は無理なんじゃない?諦めたら?」

ケンタウロスの問いかけに渋々諦めたウンディーネは大きなため息をついた。

「だってこのチャンスを逃したくないもの。」

ウンディーネは彼女達に張り紙事件のことで聞き出せないかと思っていたがダメだった。そこで授業終わりに彼女達に話をしようと放課後を待ったウンディーネは驚愕の光景を目の当たりにした。

「え?どうしてアマイモンがそこにいるの・・・嘘でしょう?」

ウンディーネは言葉を失いかけた。

アマイモンがアストライアーを追い駆けているところだったからだ。

ウンディーネは険しい表情でアマイモンの方へ駆け出そうとした。

「なんで、あく・・・。」

ウンディーネが悪魔と言いかけたその時、背後から彼女の口が塞がれた。

「お前は黙ってろ!!」

エリゴスがウンディーネを引っ張って遠くへ連れて行くとサタンが召喚魔術を使い魔物を出して彼女を気絶させた。

そこに通りかかったヘルメスがウンディーネが気絶しているのを見て叫び声をあげた。

「うわあああ。」

「何か今誰か叫びませんでしたの?」

その声に驚いたアストライアーは目をぎょっとさせてアマイモンの方を向いたが”気のせいじゃないの?”とアマイモンは軽くその場を流した。

「そうかしら・・・。」

そんな不思議そうな顔をしているアストラの遠くでサタン達は他の生徒にこのことがバレてはいけないとヘルメスに召喚魔法を使って彼も気絶させた。

と、その時だ。

「今すぐにやめなさい!!」

そこにガイアとアフロディティーがサタン達の前に現れて彼らに立ち向かった。

「あら、あなたはルシファーなの?」

ガイアがサタンを見て驚いて言った。

「そんな名前は既に捨てたね。」

サタンは暴言を吐くように言った。

「やめなさいったら。今すぐに気絶した2人を元に戻しなさいよ。」

ガイアは今にも泣きそうな声で叫んだ。そこにアストラが通り掛かろうとしていた。

「こちらへどうぞ。」

アマイモンはガイア達の方を避けて通ろうとしたが、アストラがあまりにも強く不信感を募らせた為どうする事も出来なかった。アマイモンは手遅れだったのである。その時には既にアストラが悲鳴を上げていたからだ。



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