第28話恋の策謀事件1
さて、話は変わりましてまた元の時に戻しますが、オリンピア祭でキューピットがアフロディティーに告白していたことを覚えていますかね?ケンタウロスが倒れて意識を失っていてみんなが慌てふためいておりすっかり忘れ去られていたような気がしましたがここではアフロディティーを取り巻く恋の絡みについて書ければと思います。
オリンピア祭が終わってまもなくのことだった。この日の外は雨で寒く生徒達は休日を学校の中で過ごしていた。そんな中キューピッドが寮を抜け出してドアを開ける所だった。
「どこに行くんだよ?ああ、あの子の所か。君はお気楽でいいなあ。」
ユニが羨ましそうにそう言いって枕をキューピッドの背に向けて投げつけた。
「痛いなあ。なんてことするんだよ。」
「それで、あの子の返事は聞いたのか?」
ユニとのやり取りが続く。
「それがまだなんだよね。ケンタウロスのことでごたごたしてて聞きそびれちゃっから今日こそは返事を聞かないとね。でも僕のこと覚えてるかな?」
キューピッドは腰をさすりユニの方を向いた。
「だから直接聞くんだろう。まあ頑張れよ。」
ユニに続きケンタウロスとディオも頷いた。
「それじゃあね。」
キューピッドはドアを閉めて階段を駆けて行った。
キューピッドは寮を抜けてアフロディティーとの約束の場所へ行った。
「やあ、僕のこと覚えてる?」
キューピッドはにこやかに彼女に歩み寄った。
「当然でしょう。忘れたなんてまさかね。」
アフロディティは笑っていた。
彼女につられてキューピッドも笑っていたがその後は2人とも話すことができず沈黙の時が流れた。
キューピッドはその間今言わないと、と心の中で決めていた。
「あのさ、オリンピア祭で僕が読んだ詩の返事が聞きたいんだけど。返事を聞いてもいいかな。」
「そうね。」
アフロディティーは少し考えてからこう返した。
「じゃあ目をつむってよ。私があなたの手を握ったらOKね。」
キューピッドはそれに了解して目をつむった。彼は心の中でドキドキしていた。アフロディティーが急かすので早くしないかと思ったからだ。
そして、ついにアフロディティーがキューピッドの手を握ったのだ。そして2人は静かに抱き合った。
そんな微笑ましい様子を影から見ている人がいた。それはヘルメスだった。
休日が終わると元の生活に戻り生徒達も授業に励んだ。
「うわあ、エミール先生の授業だ。あの先生は本当に厳しいからな。」
キューピッドが隣の席のケンタウロスに囁いた。
「うん・・・あっ先生が来たぞ。」
エミール先生が教室に入った頃にちょうどチャイムが鳴り生徒達の騒がしさも静まり返った。
「授業が始まるぞ。みんな、席に着けよ。」
こうして始まったエミール先生の授業はペルシャ文学とゾロアスター教である。先生の字はいつも黒板に殴り書きのような字なので解読するのに少し時間がいりますが。
「さて、教科書の70ページを開いた所で誰かに教科書のページを読んでもらおうかね。」
先生は生徒達を見回したあと教科書を丸めて該当者を当てた。
「それではキューピッド君。いいかな?」
キューピッドは席に座ったまま教科書を読み上げた。
「ゾロアスター教の啓典である『アヴェスター』は、従前からの口承や伝承をもとにサーサーン朝の時代に編纂されたものとみられている。『アヴェスター』は、1.『ヤスナ)』 : 大祭儀で読唱される神事書・祭儀書。全72章。2.『ウィスプ・ラト』 :ヤスナの補遺。小祭儀書。3『ウィーデーウ・ダート』 :除魔書。4.『ヤシュト』:神頒5.『クワルタク・アパスターク』:小賛歌・小祈祷書6.その他逸文のみが現存している・・・。」
キューピッドが教科書を読み終わった後大事な所を生徒達全員で確認し次の項目へ移った。
「『アヴェスター』は、アケメネス朝時代の古代ペルシア語とは異なる言語によって、1,200枚の牛の皮に筆録されていたという。大部分がアケメネス朝滅亡の際にいったん失われ、のちのパルティアの時代とサーサーン朝の時代に補修と復元が試みられた。3世紀のサーサーン朝時代、当時の中世ペルシア語(パフラヴィー語)への翻訳がなされ、以後、正典として『ゼンダ・アヴェスタ』と称されたのだよ。」
それからエミール先生が説明を付け足して黒板に記しているとちょうどチャイムが鳴り授業が終わった。
「エミール先生は黒板に字を書くのが早いから追いつくのが大変だよね。」
キューピッドが授業終わりにケンタウロスと笑い合っていた。
2時間目は体練術の授業でバックギャモンというゲームを行った。バックギャモン は基本的に二人で遊ぶボードゲームの一種で、盤上に配置された双方15個の駒をどちらが先に全てゴールさせることができるかを競う。バックギャモンは世界最古のボードゲームとされるテーブルズの一種です。
「さて、今日の授業はバックギャモンというゲームをやります。」
ギュム先生からゲームの説明がなされ生徒達はまず寮の部屋ごとに分けて行った。ケンタウロスはユニと組んで行ったがユニがめきめきとライバル心を燃やしてきたので負けられない試合となった。
「馬人間には負けないぞ。」
「だから僕はケンタウロスだって!」
ケンタウロスが必死になって試合に臨んでいるとワル3人が邪魔をしてきた。
「なんだよ。やるなら向こうでやってくれよ。」
ケンタウロスが注意するとへらへらしながらごめんと謝って3人は去って行った。あの3人はどうして感じが悪いのかと思った。
それから3時間目はネロ先生による音楽の授業だった。ネロ先生は学校の先生の傍ら歌手活動もなさっており新曲を聴かせてくれた。
授業中は拍手と先生への質問が飛び交い、笑顔に包まれていた。そんな中ヘルメスはどこか浮かない顔をしていた。
「なんで・・・あいつが。」
ヘルメスの呟きもみんなの歓声でかき消されていた。
「今に見てろよ。」
この時は誰もが知る由もなく気がつきませんでしたがヘルメスは既にあることを計画していたのだ。そのあることとは一体何なのでしょうか?そんなヘルメスの過去に迫っていきましょう。
ヘルメスは歴史上によると、ギリシア神話に登場する青年神です。オリュンポス十二神の一人。神々の伝令使、とりわけゼウスの使いであり、旅人、商人などの守護神です。能弁、境界、体育技能、発明、策略、夢と眠りの神、死出の旅路の案内者などとも言われ、多面的な性格を持つ神です。その聖鳥は朱鷺および雄鶏。幸運と富を司り、狡知に富み詐術に長けた計略の神、早足で駆ける者、牧畜、盗人、賭博、商人、交易、交通、道路、市場、競技、体育などの神であるとともに、雄弁と音楽の神であり、竪琴、笛、数、アルファベット、天文学、度量衡などを発明し、火の起こし方を発見した知恵者とされました。プロメーテウスと並んでギリシア神話のトリックスター的存在であり、文化英雄としての面を有します。
そんなヘルメスはここでは悪知恵が働く盗人としての才能を持っています。特技は体育と音楽で苦手なのは読み書き。もちろん悪知恵だけではなく勉強の方の知識もありますがウンディーネには一歩及ばすといったところでしょうか?
そんなヘルメスですが早朝に生まれ、昼にゆりかごから抜け出すと、まもなくアポローンの飼っていた雄牛50頭を盗んだと言われています。ヘルメースは自身の足跡を偽装し、さらに証拠の品を燃やして雄牛たちを後ろ向きに歩かせ、牛舎から出た形跡をなくしてしまったのです。翌日、牛たちがいないことに気付いたアポローンは不思議な足跡に戸惑うが、占いによりヘルメスが犯人だと知ります。激怒したアポローンはヘルメスを見つけ、牛を返すように迫るが、ヘルメスは「生まれたばかりの自分にできる訳がない」とうそぶ板とのことです。このことからヘルメスは泥棒と嘘の才能があることをお分かり頂けたでしょう。そんなヘルメスの呂神は誰だったのでしょうか?ヘルメスはヘーラーの息子ではなかったが、マールスと入れ替わってその母乳を飲んでいたため、ヘーラーはそれが分かった後もヘルメスに対して情が移り、彼を我が子同然に可愛がったとされています。詳細は不明ですかね?でも間違いなくへーラーはヘルメスの育て親だったのでしょうね。それとマールスと義理兄弟なのですね。2人は学校で行き会っても話すことはほとんどありませんでした。もしかすると2人ともシャイで話しかけにくかったのかそれとも犬猿の仲だったのでしょうか?気になる所が沢山ありますね。それでは話を進めよう。
さて、こうしてキューピッドとアフロディティーは晴れて恋人同士になった。2時間目の体育の授業が終わり次の授業へ移動中も2人は並んでずっとおしゃべりをしていたし、なんだか楽しそうだった。それを見たケンタウロス、ユニらは彼らを褒め称えた。
「やったじゃないか。」
ケンタウロスがキューピッドに歩み寄り彼の肩を叩いて微笑んだ。
「でもケンタウロスこそ無事でなによりだったな。」
2人は笑い合った。
そんな中彼らを遠くで見つめている人がいた。そう、ヘルメスだ。ヘルメスはこの喜ばしいことに素直に喜べないでいた。
「どうやら復讐の時が来たようだな。」
ヘルメスは気味悪く笑いその場を去って行った。
「でも直ぐに知られてはおしまいだからな。今は見届けることにしよう。」
ヘルメスに一体何があったのかわからないが明らかに今までの彼とは雰囲気が違った。そしてヘルメスは気がついていたのだ。なぜキューピッドは母親を愛しているのかということにね。それはキューピッドの母親がアフロデティーであるということなのである。でもどうしてそのことをヘルメスが知っているのだろうか?今アフロディティーとキューピッドに試練が待っているのだ。彼らはそこから脱出することができるのだろうか?
愛し合う2人に阻む魔の影。忍び寄る大きな闇。嵐で荒れ狂う木々達が彼らに危険を知らせても全く気がつかなかった。なぜって学校まで危険の予告が響かなかったからだ。
アフロディティが生まれたのは、クロノスによって切り落とされたウーラノスの男性器にまとわりついた泡(アプロス、aphros)の中だった。クロノスは時間の神様であった。そしてギリシア神話の大地および農耕の神でした。山よりも巨大な巨神族ティーターンの長であり、ウーラノスの次に全宇宙を統べた二番目の神々の王でもあった。万物を切り裂くアダマスの鎌を武器とします。ゼウスの父親としてもよく知られており、ティーターン神族を率いてオリュンポスの神々と全宇宙を揺るがす大戦争を行いました。ということは、神々の父クロノス(時)が、父親のウラノスを殺し、海に投げ捨てた。その身体から出た血は白い泡となり、そこからアフロディテが生まれたのだ。なのでアフロディティとディオニューソス(のちのゼウス)は異母兄弟になるのですね。
そんなアフロディティは幼い頃から愛とびの教育を受け戦の女神として鍛えられてきた。また、美において誇り高く、パリスによる三美神の審判で、最高の美神として選ばれています。パリスの審判は、ギリシア神話の一挿話で、トロイア戦争の発端とされる事件だ。天界での抜群の三美神のうちで誰が最も美しいかを判定させられたという事件だ。ここでは詳しくは触れませんがそんな中美しい1人として選ばれたということは光栄なのでしょうか?
それからクロノスはアフロディティとディオニューソスをそれぞれ別々に呼び出して今の学校へ行くことを告げた。クロノスが2人を別々に呼んだのは2人を母親違いの兄弟と認めたくなかったのと2人に兄弟であることを知られたくなかったのである。なので2人は学校で一緒でも兄弟であることは知らない。そして今まで普通の友達のように接してきた。しかし、どこかで見た気がする・・・と2人はいつも会う時は口にしていた。
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