第10話不運からの脱出?

「きゃあああ。死んでる??」

アストライアーが叫び声をあげたのでアマイモンは頭の中が真っ白になってしまった。

「気絶してるだけだわ。大丈夫よ。」

ガイアが倒れている2人の呼吸を確認してそう言ったのでアストラは安堵の表情を浮かべ床に座り込んでしまった。

「でもどうしてこんな事をしたのか説明してもらいたいわね。」

アフロディティーがサタンに聞いた。

「いつも目障りだったんでね。消えてもらおうと思ったのさ。」

「まあ、元を辿れば天使のあなたが言うことなのかしらね?」

「だから俺はそんなのは捨てたと言っただろう?」

サタンはアフロディティーを睨みつけてそう言い放った。

2人が言い合っているとそこに他の留学生達もやて来てこの光景を見てひどく驚いた。

そんな中エリゴスはアマイモンに”作戦失敗だな”と呟いた。

「ねぇ、さっきサタンは彼らが邪魔だったと言ったけれどウンディーネはあの張り紙事件を留学生達に聞こうとしていたんだわ。あなた達もこの事件が早く解決すればいいと思わないのね?」

アフロディティーがサタン達を見て呆れた表情をした。

「あの張り紙事件とは何ですの?」

そこにエウノミアーがアフロディティーに事件について聞いたので留学生達に張り紙事件の全てを話してあげた。

「ホーラの皆様お願いします。どうか私達に力をお貸し頂けないでしょうか?」

ガイアとアフロディティーは必死になって留学生達に頭を下げた。

「困りましたわね。なんとかチャレンジしてみますわ。でも失敗したら本当にごめんなさいね。」

エイレーネーがニッコリしてガイア達に手を差し伸べた。

その様子を呆れたように見ていたサタン達は”今に見てろ”と叫んで去っていった。

「あいつらは悪魔の子だから気をつけてね。」

ガイアの言葉にアストライアーが身震いした。

「私は騙される所だったんだわ。教えてくれてありがとう。」

そしてガイア達はウンディーネとヘルメスを抱えて医務室へと運んでいった。

「ヘルメス君、私が抱えてるけどごめんね。」

ガイアがヘルメスに申し訳なさそうに言ったのが遠くの方で聞こえた。

 「あれ?ここは?」

ウンディーネとヘルメスはベッドの中で目を覚ました。

「あら、ごきげんよう。あなた達は随分と気絶しているようだったし強力な何かがかかっていたのでとりあえず医務室へと運んだの。」

アフロディティーが今までの事を全て2人に話した。

そこに心配そうにディオとケンタウロスも駆けつけていた。

「大事に至らなくてよかったですわ。」

医務室のおばさんがホッとしてベッドにいる2人に言った。

「みんな心配かけてごめん。それと運んでくれてありがとう。」

ヘルメスとウンディーネが申し訳なさそうに謝ったので”そんなの気にするな”とケンタウロスが笑った。

「あれからサタン達はどうなったの?」

ウンディーネがおずおずとみんなに聞いた。

「彼らは校長先生に呼び出されて謹慎処分を受けたのよ。だって当然でしょう?召喚魔法なんて資格もなしに使っちゃいけいないもの。」

ガイアが呆れてそう言ったのでウンディーネは頷いた。

「嘘だろう?召喚魔法って資格が無いと使えないのか?」

ヘルメスはそれを聞きひどく驚いた。

「僕はお父さんにその事を教わったよ。たぶん学校の授業でも取り扱うと思うけれどね。」

ディオがガイアの言葉に付け足した。

「あら、ヘルメスは知らなかったのね。教えてあげるわ。召喚魔法はね召喚する魔術なの。すなわち魔物などを呼び出すことを”召喚”と言うのよ。降霊術、降神術なんていうのもあるわね。この魔法の資格取得の理由は諸技法を習わなくちゃいけないからよ。諸技法を学ぶにはその魔法の専門的な学校に通ってテストを受けなければいけないもの。私達素人が魔法円を描こうとしてもだめなのと一緒よ。」

ウンディーネがありとあらゆる知識を引っ張り出したのでみんな感心して彼女の言葉を聞いていた。

「やっぱりウンディーネは才女だな。」

みんなが彼女に拍手をするのでウンディーネは少し照れてしまった。

そして医務室のおばさんにお礼を言うとウンディーネはベッドから出て歩き出した。

「ヘルメスも早く来なさいよ。」

「うん、わかった。今行くよ。」

ヘルメスが返事してベッドから出るとみんなはおばさんと挨拶を交わして医務室を後にした。

 医務室を出て留学生や他のみんなと別れてケンタウロス、ウンディーネ、ディオは3人で寮へ戻ることにした。

「あの張り紙事件って何も進展がないわね。」

ウンディーネは歩きながらケンタウロスに言った。

「本当に静かだな。でもおかげで悪ガキ達がいなくて清々するよ。」

そう言ってケンタウロスが肩をすくめていると、どこからか声が聞こえた。

「え?何だって?」

3人は目を丸くして声の方を探した。

「困りましたね。術士アブラメリンの聖なる魔術の書が何者かに盗まれました。」

誰かがため息をついている声が聞こえてきた。

3人はその声がする方へと耳を傾けてじっと聞いていた。

「術士アブラメリンの聖なる魔術の書って何だ?」

ディオが小声でウンディーネに聞いた。

「私にもわからないわ。」

ウンディーネは首を横に振り声のする方へ近づいた。

「校長先生?」

ウンディーネが見たのは校長先生とゾロアスター教を教えているエミール先生他数名の先生が話している所だ。

「あれがないと困りますな。今回の張り紙事件で生徒達もひどく動揺していたことでしょう。しかし事件はこれだけでは過ぎなかったのです。生徒達にはまだ話していませんが次の犯行予告かのようにお知らせが数枚と届いているのですから。」

エミール先生が先生達に紙を見せて言った。

「生徒達に新たな紙が届いたと教えれば大混乱を招いてしまう。それを恐れたかったのですか?」

そう聞く先生も何人かいたが大半は教えると厄介だからと頷いた。

「あの書が必要なのは願いが叶えられるからなのです。私達はこれ以上新しい学校を増やして欲しくないと思っています。なのであの書があれば阻止できたのに。本当にどこへ消えたのでしょうね?」

ウンディーネ達はごくりと唾を飲み込んで一部始終を聞いた後頷いた。

「僕らであの書を探すんだ。」

ケンタウロスが小声で2人に合図した。

「でもどうやって探すんだ?」

ディオが不思議そうに首をかしげた。

「私達はそういう宿命なのよ。聞いてしまった以上何がなんでも探し出す方法を見つけるののよ。」

3人はその場を離れて走り去った。

どこへ行くあてもなく走っているといつの間にか知らない所へ来てしまった。そこは厚い壁で覆われており一筋の光が差し込んでいた。

3人は手をつなぎ光の方へとゆっくり歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る