第21話オリンピア祭の二日目

次の日は朝からオリンピア祭が行われた。

「みなさん、おはようございます。昨日の大会は如何でしたか?良い成績を残せなかった諸君は今日と明日で挽回するようにね。さて、今日はペンタスロン(短距離競走)、スタディオンの距離を走る中距離競走、幅跳びを行います。みんなは準備は出来てますか?」

ギュム先生の掛け声に男子生徒達はスタート地点に着いた。

「まずは、幅跳びからよ。一列に並んで行ってくださいね。それでは始め!」

男子生徒達は幅跳びを順番に行い点数を競い合った。

そんな中、ガイアとアフロディティ、ウンディーネはエリゴスの動きに注意しながらそれぞれを応援していた。

「やっぱり、エリゴスがおかしいわ。あれ?アマイモンやサタンまで・・・。何かがおかしいわ。ギュム先生に知らせないと。」

ガイアが観覧席から立ち上がろうとしたが2人に止められてしまった。

「何で止めるのよ?ギュム先生だって気がついていたら注意するはずよ。」

ガイアが驚いて目を丸くしたが2人は首を横に振るばかりだった。

「先生の所に行っても無駄じゃないかしら?たしかに彼らの行動はおかしいけれど、それをどう説明するって言うのよ?」

ウンディーネが呆れて言った。

「それに先生だって気が付いてるはずよ。ただ、今は競技中だから注意出来ていないだけなのよ。だってここで注意すれば他の生徒達にも迷惑をかけるし競技を一旦中止になんて出来ないわよ。」

ウンディーネの言葉にアフロディティが付け足した。

「それもそうね。」

ガイアは諦めてワル達の様子を見ることにした。

「さあ、最後の男子達はベストを尽くして頑張ってね。」

ギュム先生が声を張り上げる。

ガイアたちがやり取りをしていると幅跳びも終盤に近づいていた。そして幅跳びは終わったがワル3人が表彰される結果となった。観覧席にいた他の女子生徒達は拍手を送っていたがガイア達3人はがっくりと肩を落としてその様子をただ見ているしか出来なかったのである。

「またあいつらが表彰されたわ。長距離走の時だって上位だったし。やっぱりおかしいわよね?」

とガイアは不機嫌。

「これじゃあ、ケンタウロスがかわいそう。」

とアフロディティーはしょんぼり。

そんな2人を見てウンディーネもいつしかケンタウロスを気にかけるようになっていた。

 次はスタディオンの距離を走る中距離競走をやった。

男子生徒達が順番にスタート地点に立ち、走り去っていく。そしてケンタウロスの番が来た。ケンタウロスはまたしてもエリゴスと一緒だった。隣にはディオとへファイトスがいる。

「ケンタウロス頑張って!」

ガイア、アフロディティーは声を張り上げて応援している。そんな2人の横でケンタウロスを不安そうに見つめるウンディーネ。

「それでは、位置について。よーい!スタート。」

ケンタウロス達が勢いよく走っていく。

「あら?エリゴス君の様子が変ね。」

この時ギュム先生も何かに気がつき始めたようだったがエリゴスの様子を観察することにした。

スタディオンの距離を走る中距離競走もやはりエリゴスが1位だった。

「これが彼の実力なら対したもんだけどねえ。はっもしかして・・・?」

ギュム先生はようやく気がついたのだ。

「彼はドーピングしてる?まさかね。」

そして次の競技の短距離走も行われたが又してもエリゴスが首位だった。

このことにケンタウロスも肩を落とした。

今日の競技が終わるとギュム先生はエリゴスを呼び出した。

「何だよ。」

エリゴスはだるそうに先生の所にやって来た。

「エリゴス君もしかしてドーピングしてるんじゃないでしょうね?」

「はぁ?何の権利があって言ってるんですか?」

冷静な先生とそれを笑うエリゴス。

「私は先ほどあなたの競技の仕方を見てきたけれど何かおかしかったわよ。」

「じゃあ、どういう風におかしかったのか説明して見せてくださいよ。それに俺ケンタウロスと約束してますから。」

エリゴスはそう言い放つと先生から離れた。

「こら、待ちなさい。話はまだ終わっていないわよ。」

ギュム先生はこのままエリゴスを放っておくとまずいことになると思い必死に止めたがエリゴスは聞き入れなかった。

「ケンタウロス君と約束しているって何だろう?そうね、ケンタウロス君に聞いた方が早いわね。」

ギュム先生はケンタウロスを探しにあちこち歩いた。

その頃ケンタウロスはがっかりした様子だった。そこにディオがやって来てこう言った。

「ケンタウロスのこと認めた訳じゃねえから。ただエリゴスの様子が変だなって。」

「様子が変?」

ケンタウロスが腕を組んでいるとギュム先生が2人の所にやって来た。

 「あっ、ギュム先生だ。」

ディオが先生がこちらに来たのに気が付いてケンタウロスの肩を叩いた。

「ケンタウロス君を探していたのよ。」

「僕をですか??」

ケンタウロスは驚いて先生に聞いた。

「エリゴス君の競技の様子が変だったから彼を呼んで話を聞こうとしたんだけど何か隠してるみたいだったの。それで問い詰めたらなんかケンタウロス君と約束してるからって言われちゃって。何のことだか知ってる?」

ケンタウロスは先生に言われて少しドキッとしたが正直にこれまでのことを話した。

「なるほどね。でも賭けごとは良くないわよ。」

先生は呆れて肩をすくめた。

「僕達もさっき、エリゴス君のことで話していたんです。」

ディオがケンタウロスと話していたことを先生に告げた。

「私は今までにいろんな生徒達を指導してきたけれどエリゴス君の行動は明らかにおかしいわね。だからドーピングだと思ったのだけれど・・・。」

先生の言葉に2人は驚き顔を見合わせた。

「ドーピングって何ですか?」

「ドーピングとはスポーツなどの競技で運動能力を向上させるために、薬物を使用したり物理的方法を採ること、及びそれらを隠したりする行為のことよ。オリンピア祭やその他のスポーツに関する祭りでは使用禁止になっているの。」

ギュム先生は丁寧に説明してくれた。

「でも、もしもエリゴス君がドーピングしていたらどこから薬を入手してたんですかね?」

ケンタウロスの問いに先生は”わからないわ”と首を横に振った。

「ケンタウロス君だって今までの競技を行ってきたからわかると思うけどエリゴスくんは常に上位じゃなかった?」

先生はケンタウロスに静かに聞きいた。

「確かにそうですね。言われてみれば何となくそう思いましが、それで疑っておいて彼の実力だったとしたらとも思うので確信はできないですよね?」

「それもそうね。でも私はドーピングな気がするんだけどな。」

先生は考えながら言った。

「サタン君とアマイモン君に聞き出すなんてできないし。観戦していたのは女子達ですから女の子の友達に様子を聞いてみます。」

ディオの言葉に先生は頷いた。

「OK!結果は知らせてね。」

「先生も教えてくれてありがとうございました。」

ケンタウロスとディオは先生にお礼を言ってウンディーネ達を探しに行った。

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