第22話夕食にて

外はだいぶ日が暮れていたのでケンタウロスとディオは夕食にウンディーネ達と合流する事になった。

そしてディオとケンタウロスは夕食時に席に着くとギュム先生と話した事を彼女達に話した。

「ああ、やっぱりね。」

食事をしながら女子達は頷いた。

「通りでおかしいと思ったのよね。それで先生はエリゴスに会ったんでしょう?」

ガイアはケンタウロスに聞いた。

「そう言ってたね。でもドーピングのことを聞きだそうとしたら逃げられちゃったみたい。」

ケンタウロスは苦笑した。

「なんて足の速いやつなんだろう!」

アフロディティががっかりしてそう言うとディオが呆れてこう言った。

「悪の騎士だから仕方ないのかもね。でも今まで走る競技は色々行ってきたけれど、たぶんあいつにあれこれ聞いても騎士で足が速いのを理由にするだけだと思うなあ。」

ディオは食事をしながら思い起こした。

「じゃあ、アマイモンとサタンはどうかしら?もしもあの2人もドーピングしてたらびっくりだけどそれ以前にエリゴスがドーピングしてたら知ってるはずよ。だってケンタウロスがエリゴスと賭け事を交わしている時に2人もいたから見ていたはずよね?」

ウンディーネはみんなに意見を求めた。

「確かにそうだったね。3人よれば文殊の知恵って言うし3人で企んだことだったのかそれともエリゴスが父親に頼んだとか?あいつのことだからやりそうだよね。」

ケンタウロスは見なした。

みんなが食事をしながら考えているとそこにマールスが通りかかったのである。

「やあ、みんなどうしたの?」

マールスがそう聞いたのでガイアは話していたことを彼に話した。

「あなたはだあれ?」

アフロディティがマールスに聞きいた。

「自己紹介が遅れてごめんね。やあ、僕は戦と農耕の神のマールス。パシフィスタの寮に入っているんだ。」

ウンディーネ、アフロディティ、ディオが彼と挨拶を交わしマールスも加わりさらに賑やかになった。

「マールスは寮は違うけれど私の友達なの。」

ガイアがウィンクした。

「そういえばあの時はどうもありがとう。」

ケンタウロスが思い出してマールスにお礼を言った。

「ケンタウロス、気にしないでくれ!それでさっき聞いた話だけどエリゴスが何だって?」

マールスがみんなに聞きいた。

 ガイアはもう一度簡単にマールスに話した。そしてガイアから話を聞いたマールスはため息をついた。

「なるほどね。ドーピングは良くないなあ。ギュム先生がドーピングじゃないかって言ってるんだから間違えないと思うよ。だっていろんな生徒達と関わってきてるし、それにドーピングしてる人って特徴があるじゃない?」

マールスの言葉にみんなが頷いた。

「先生も言ってたけど気持ちが高ぶるっていうか。」

ケンタウロスが頭を掻いた。

「うん、そうだね。ドーピングの初まりは南アフリカの原住民が儀式舞踊を演じる際に飲用していたとされる『dop』というアルコール飲料に由来するというものであるって言われてるんだよね。他にも説はあるんだけれどこれが有力かなあ。」

みんなはマールスの話に感心し耳を傾けた。

「当初は『麻薬(曼陀羅華の種子と混ぜた煙草の煙)を用いて相手を朦朧とさせた上で盗みを働くこと』を意味するスラングだったんだよね。」

「スラングって何?」

ディオがマールスに聞きいた。

「ああ、スラングとは特定のエスニック集団、職業、年代、生活環境、ライフスタイル、趣味、嗜好を共通にする集団の中でのみ通用する隠語、略語、俗語のことだよ。スラングは、公然の場で口に出すことが一般に躊躇されるような言葉を、別の言葉で言い換えて表現することが、社会的な起源のひとつとなっているんだ。性、暴力、犯罪、薬物、差別に関する場合は、特にこうした由来を持つことが多いんだよね。」

「あら、マールスには参ったわ。私でも知らなかったもの。」

ウンディーネが肩をすくめたのでマールスが目を丸くした。

「嘘だろう?才女のウンディーネのことだから知ってると思ったんだけどな。」

これにはみんな笑った。

「まあそれは良しとしてドーピングの事だけど、禁止理由としては競技の楽しみや厳しさを奪い、結果としてスポーツの価値を損なうことになるからなんだって。後はフェアプレイの精神に反するためっていうのもあるよね。スポーツは統一したルールのもと、公平に競い合うことが前提となっているけど、ドーピングは公平性と真っ向から反する行為だからとか競技者の安全と健康を守るためだとか選手がドーピングに手を染めていれば、ドーピングをよしとする風潮が蔓延してしまうこの理由が挙げられるね。」

マールスはこう述べた。

 マールスの話には感心されっぱなしだった。

「あら、もう夕食の時間が過ぎてるわね。それじゃあ、明日会いましょう。ケンタウロスは用心した方がいいわね。」

ウンディーネが時計を見て言った。

「うん、そうするよ。」

みんなはテーブルの食器を片付けて寮へと戻って行った。

ケンタウロスとディオは寮に戻るとユニとキューピッドに話して聞かせた。

「明日で最後のオリンピア祭かあ。でもこのままエリゴスが圧勝だったらケンタウロスが可愛そうだよな。」

キューピッドはケンタウロスの肩を叩いた。

「ケンタウロスは負けたらあいつらの下僕になるんだろう?」

ユニがそう聞いてきたのでケンタウロスが答えた。

「本当だったらね。でも僕もあいつらが不正してるんじゃないかって、そう思うんだ。だから明日ギュム先生に言ってあいつらを調べてもらえないか頼んでみるよ。」

「その方がよさそうだな。」

そんな話をした後みんなで風呂に入り歯を磨いてこの日は寝た。

みんなが眠りについてもケンタウロスは明日のことで頭がいっぱいだった。

そういえば前にエリゴスの父のことを聞いたことがあった。たしかフルーレティという人でないかと言われている。フルーレティとは、ヨーロッパに伝わる上級悪魔の一人で6柱の上級精霊(悪魔)の1柱とされており、グリモワールによるとソロモン72柱のバティン、エリゴス、プルソンの3体の悪魔を直属の部下として配下にしており、自らはルシファーベルゼブブアスタロトに仕えていると言われている。

とても仕事が速いようで、命じると夜のうちに全て片付けてしまうといわれている。また、望む場所に雹を降らせると言う危険な能力を有している。 そんな人である。

本当はエリゴスの父というより育ての親の方が近いかも知れない。

「ふーん。あいつも複雑な家庭で育ってきたんだなあ。なんだか僕と似てるなあ。」

ケンタウロスはそう呟くと布団を被り眠りに入った。

明日はいよいよオリンピア祭も最後になる。3日目の最後の種目は円盤投げ、やり投げ、レスリングだ。毎回レスリングは大いに盛り上がるとのことなので頑張っていただきたいな。

窓の外には星が煌めいていてとても幻想的だった。そしてみんなが不安の最終日は波乱万丈となるのだろうか?



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