第23話オリンピア祭の三日目

次の日生徒達は起床して朝食を済ませると会場に入った。

ケンタウロスはそわそわしながらギュム先生を探した。

「あっ!ギュム先生。おはようございます。」

「ケンタウロス君、おはよう。昨日の話だけど、どうだった?」

先生はニッコリして聞いた。

「はい、女子達もやっぱりねって言ってました。それでエリゴス君はどうなるんですか?」

「出場停止にするわ。あとサタン君とアマイモン君にも事情を聞かなければならないので一旦出場停止にして今までの順位は保留にするわ。このあとの開戦宣言の時に言うから。」

「よかったです。ありがとうございます。」

先生の言葉を聞きケンタウロスはホッと胸をなで下ろした。

ケンタウロスは先生と別れて寮の男子達に混ざった。

そして先生がステージに立つと拍手出迎えた。

「男子生徒諸君はおおいにオリンピア祭に貢献したことでしょう。しかしこの大会で不正を行ったのかもしれない生徒がいます。カンペオン寮のエリゴス君です。あとアマイモン君とサタン君にも事情を聞きたいので大会の出場は停止にします。和解が溶けたら大会に戻ってもよろしい。今回の大会でエリゴス君にはドーピングの疑いがあります。みなさんはくれぐれも疑われないように十分に注意してください。」

先生の言葉に男子生徒達は元気に返事をしたがアマイモンとサタンは文句ばかりだった。

「なんで俺達まで出場停止なんですか?そんなのおかしいと思います。」

「さあ、あなた達3人は取調室に来なさい。」

ギュム先生が3人にそう言ったが3人は”こんなの拷問だ!”とだだをこねてばかりだった。そんな3人のもとへ他の先生がやって来て取調室に連れて行かれた。

最後にエリゴスがわめいているのが聞こえた。

「絶対訴えてやるからな!」

エリゴスの言葉に女子達は笑っていた。

そんな中まもなく競技が始まろうとしていた。

「これで一安心だな。」

ディがケンタウロスに微笑んだ。

そういえばオリンピア祭前は見向きもしなかった2人がいつの間にか距離が近くなっていた。ウンディーネもずっとケンタウロスを避けていてガイアとも険悪なムードだったがすっかり仲を取り戻しつつあった。

「それでは、最初の競技は円盤投げです。それでは準備に入ってください。」

しばらくしてアナウンスが鳴り競技が始まった。

 さて、競技が始まった。男子生徒達が一斉に円盤を投げていく。そして次の種目のやり投げもケンタウロスとディオは上手くいった。

「さあ、お次は最後の競技となるレスリングよ。みんな頑張ってね」

会場で盛り上がっている頃エリゴス達ワルはどうしているのでしょうか?

「ケンタウロスがいけないんだ!」

とわめくエリゴス。

「おとなしくしてなさい。今調べてるところですから。」

医務室のおばさんがそう言い放った。

学校にはスポーツ仲裁機構 の方々が来ていてエリゴス達を調べていった。するとエリゴスはドーピングを使用していたことが発覚した。そしてサタンにもドーピングの症状が現れたがアマイモンは・・・

「こんなことやてられねえ。」

と医務室を飛び出して逃げたのだ。

「アマイモン君、待ちなさい。」

アマイモンは走り去って行った。到着したのはオリンピア祭の最後の種目が行われているレスリングの会場だ。そして今はケンタウロスが競技を行っている真っ最中だった。

「あれ?アマイモンがなんでここに?」

ケンタウロスがひどく驚いているとアマイモンが叫んでケンタウロスに掴みかかってきた。

「これはエリゴスの敵だからな。」

この時のアマイモンはドーピングのせいなのか怒りと興奮でいっぱいだった。

「アマイモン君、あなたは競技に出てはいけないと言ったはずですよ。今すぐにやめなさい。」

ギュム先生がアマイモンを止めに入る。

ケンタウロスとレスリングをしていた男子生徒は尻餅をついたままその光景をぼーと見ていた。

「どいつもこいつもうるさいんだよ。」

アマイモンは気が収まらずケンタウロスの足を蹴った。

どさっ。

「ケンタウロス大丈夫?」

ガイアが観覧席から立ち上がって声を張り上げる。

ケンタウロスはアマイモンに踏みつけられてた。そこにマールス、ディオや先生もかけつけアマイモンをケンタウロスから引き離した。

アマイモンは最後の手段としてケンタウロスに呪いを使った。

「生徒のみんなに言いますが競技は一旦休止とします。」

ギュム先生が生徒達に合図を送った。

その後アマイモンは先生達に取り押さえられて医務室へ送られた。

「ケンタウロス!」

女子達も我慢できずケンタウロスの所へ駆けつけた。

果たしてケンタウロスは無事なのだろうか?

 あれから何が起きたのだろうか?ケンタウロスは意識を失っていて、競技が一旦中止になった後医務室へ運ばれていた。そして医務室にいたアマイモン、サタン、エリゴスの3人は詳しい検査の為に別の部屋へと通された。

「ケンタウロスは死んだのでしょうか?」

ウンディーネが医務室のおばさんに心配になって聞いた。

「どうかしらね?意識が回復するといいけれど。このまま暫く様子を見ましょう。」

おばさんはケンタウロスをベッドに寝かせて言った。

「まずは足を治療しないといけないわね。」

おばさんがfirst&kitから薬を取り出して準備に取り掛かった。そしてディオやアフロディティ、マールスにガイアも見守っている。

「あの時ただ見ていただけなんて。」

ディオは悔しさで一杯だった。

「それにしてもアマイモンは何の呪いをかけたのかしら?気になるわね。」

ウンディーネが腕を組んだ。

そんなやり取りが行われてる中でおばさんは着々と準備をして簡単は処置を施した。みんなは必死になってケンタウロスの回復を祈った。

「これで回復しても後遺症は残るかも知れないわね。それとケンタウロス君はこれで回復できなければ入院となるわ。」

おばさんはため息をついた。

「ええ?そんなあ~。」

みんなはがっかりした。

「ケンタウロス君のことは心配しないでさあ、寮に帰りなさい。私が見ていてあげるから。」

みんなは門限ギリギリまで医務室にいてくれたがおばさんに促されてそれぞれの寮へと帰って行った。

その後ケンタウロスは病院へと入院となった。学校の医務室では治療が難しくなった為だ。

それからケンタウロスが意識不明になって48時間になった。ケンタウロスは無事に回復するのだろうか?

そしてアマイモンがかけた呪いとな何だったのだろうか?

 ケンタウロスは学校の近くの街のヒポクラテスの名医がいる病院へと移された。他の生徒達が寮で待機している中、ユニ、キューピッドも加わって昨日、医務室に駆け付けたウンディーネ達と病院へ向かった。病院まではチャリオットと呼ばれる二輪車で行き病院に着くと早速受付を済ませた。

「こちらです。どうぞ。」

看護師さんがケンタウロスのいる部屋を案内してくれた。部屋の中に入るとケンタウロスはベッドで横たわっていたがまだ意識は戻ってないようだった。

ウンディーネ達がケンタウロスのベッドの周りで悲しみに暮れているとヒポクラテス先生がやってきてこう言った。

”ο βιος βραχυς , η δε τεχνη μακρα”意味は『人生は短く、術のみちは長い』です。

「ヒポクラテス名医!ケンタウロスは治りますか?」

ディオが先生に訴えた。

「心配することはないよ。」

名医は微笑んでケンタウロスの状態を確認した。それを看護師が記録に取っていく。

「みんなは病気は神様のせいだ!なんて思ってはないかな?」

名医がこう話を切り出したのでみんなは頷いた。

「病気は神々の与えた罰などではなく、環境、食事や生活習慣によるものであるんだよ。」

そして名医はこう続けた。

「彼の場合は種類の体液の混合に変調が生じた時に起こるという四体液説かもしれないね。」

名医の言葉にみんな関心した。

するとウンディーネが名医に質問した。

「すみません、質問があるんですが人の体を解剖することがタブーとして禁じられており、医師は解剖学・生理学の知識をほとんど持っていないというのは本当ですか?」

「はは、君は鋭い子だね。それはクニドス派かな。でもコス派は、予後(prognosis)を診断以上に重んじ、効果的な治療を施し大きな成果を上げているからね。コス派は、季節・大気といった環境の乱れや食餌の乱れが体液の悪い混和をもたらし病気を引き起こすと考えたので、患部はつねに体全体であり、病気は一つであるとされているのだよ。」

名医はにっこり”また来る。何かあったら呼んでくれ”とだけ言って看護師と部屋を後にした。

 ウンディーネ達が病院を出て学校に戻った後ヒポクラテスは看護師とケンタウロスの部屋を訪れた。

ヒポクラテスの施す医術は、人間に備わる自然治癒力(ラテン語:vis medicatrix naturae),つまり四体液のバランスをとり治癒する自然("physis"ピュシス,『自然』の意)の力を引き出すことに焦点をあてたものであり、そのためには『休息、安静が最も重要である』と述べている。さらに、患者の環境を整えて清潔な状態を保ち、適切な食餌をとらせることを重視した。例えば、創傷の治療には、きれいな水とワインだけを用いた。その他鎮痛効果のある香油もときに塗布薬として用いられている。

そして名医の指示で看護師が塗布薬と香油をケンタウロスの体に塗った。

ヒポクラテスは、ケンタウロスの顔色、脈拍、熱、痛み、動作、排泄など多くの症状に注意を払い、規則正しい記録をつけていった。

こうして2,3日過ぎた頃でした。ウンディーネ達がケンタウロスのお見舞いに病院を訪れると今まで何事もなかったケンタウロスに変化が現れた。

”Γιατί είμαι εδώ;”

ケンタウロスが小声で何かを言っている。

「え?なんて言ったの?」

ガイアが耳を傾けた。

”Πού βρισκόμαστε;”

「ここは・・・どこ?っていたんじゃない?」

キューピッドがみんなにそう問いた。

「でも何か呟いたってことはケンタウロスはまだ生きてるってことじゃないかな?」

ユニの言葉にみんなの顔は少しずつ明るくなりお互いに抱き合って喜んだ。

「ケンタウロスは死んでないぞ!」

マールスがガッツポーズをしてみんなとハイタッチをした。

「っうるっさいなあ。」

するとどうでしょうか?ケンタウロスは奇跡的に目を覚ましたのである。そして目を覚ました時の最初の言葉がこれだった。

「あれ?ケンタウロスじゃない。もう大丈夫なのね?」

アフロディティがケンタウロスが起きたのに気がつき振り向いた。

「本当だ。ケンタウロスだ。」

みんなは喜びケンタウロスの方へと駆けつけた。

「本当は学校の医務室だけで済むはずが病院で入院になっちゃってみんな心配したんだからね。」

ウンディーネがしかめっ面をしたのでケンタウロスが”ごめん”と謝った。みんなが喜びに暮れているとそこに誰かが走ってきた。


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