第12話いざ合戦の地へ
オリエンスが去った後、ケンタウロス達はディオを説得してみんなで励まし合い先に進んだ。
「でも何で急にオリエンスが現れたのかしら?」
ウンディーネは歩きながら肩をすくめた。
みんなでそう話していると外の方から騒がしい声が聞こえた。
「何だ?」
みんなが窓の外を見るとそこにはたくさんの兵士が集まって戦っていた。
「あっ、危ない。」
デュシスが声を張り上げたその先には弓矢がウンディーネの前に向かっていた。
「きゃああ。」
ウンディーネはとっさに床にしゃがみ込んだ。
「ウンディーネ。大丈夫?」
ケンタウロスとディオがウンディーネの方へと駆け寄った。
「何が始まったの?とにかくここにいるのは危険ってことだけはわかったわ。」
「今、ペルシア戦争が開戦したことをここに宣言する。このままイオニアスにすべてを任しておいたらダメになってしまう。その前にみんなでなんとかしよう。」
誰かの声が城にまで大きく響いていた。
「ペルシア戦争だって?アケメネス朝ペルシア帝国のギリシア遠征の?」
ケンタウロスが驚いて窓の外を見ると既に戦いは始まっていた。
「みなさん、ここを離れましょう。」
デュシスの言葉にみんな頷き城を後にしようと元来た道をたどった。
「アケメネス朝の影響力拡大に対するイオニア地方の都市国家群の反発から起ったのよね?」
小走りでウンディーネが言った。
「そうですよ。」
ゴブリンが頷いた。
「あれ?元来た道を戻ってるはずなのにおかしいな?」
ケンタウロス達は迷子になったのか?いや、そうではない。たしかに元来た道を戻っているはずだ。
「うわあ、炎だ。どうしよう。」
ディオが叫んだその先にはみるみるうちに城が炎に包まれていく様だった。
「どうしよう。これじゃあ逃げられないわ。」
みんなはここで死ぬのだと思った。
「まだ、学校のみんなと一緒にいたかったよ。」
ディオがそう叫んだ時、一筋の光が差し込んだ。
「皆、下がって。」
え?誰の声かはわからなかったがみんなは後ろに下がった。
ドーン!っと凄まじい音がしたのでみんなは目をつむった。
暫くして目を開けると炎は既に消えていた。
「あれ?僕達・・・生きてる?」
「そうよ。助かったのよ。」
みんなは歓喜の声に沸いたがそれもつかの間だった。
「城が壊れてる。そんな~。」
ゴブリンが言葉を失った。
いつの間にかみんなは合戦地へと着いていた。
「でも誰が助けてくれたのかしら?あっあの方は?」
ウンディーネが遠くの方を指さしたその先には1人の女性が立っていた。
「あの方はアテーナーよ。多分彼女が私達を助けてくれたんだわ。」
デュシスが付け加えて言った。
そのとき地震のような揺れを感じたみんなは物陰に隠れた。
ごおぉぉーと凄まじい音が響き渡ったそこににはもう別の世界が広がっていた。
「ここはイオニア地方の都市国家じゃないですの?」
デュシスが目を疑って物陰から出てきた。
戦争は続いていたが景色だけ変わったのであろう。
「景色だけ変わったって、戦争が続いてるんじゃあ意味ないじゃん。」
ケンタウロスがそう呟いて変わった景色を見た。
「とにかく進みましょう。私達はあの書を探してるんでしょう?」
ウンディーネの言葉にみんな頷き戦争の中を恐る恐る歩いて行った。
弓矢が飛び交い剣が入り混じり、怒声が走る中をひたすら歩いた。
「なあ、あそこにいる人って誰だ?」
ディオが遠くに座ってる人を指さした。
「あれはサトラップという戦争を仕切る総監督ですよ。リディア王国の首都であったサルディスでは総監督をおいているんです。」
ゴブリンがディオの言った人を指差して言った。
「あれ?あの人どこかで見た気がするわね?」
ウンディーネが首をかしげたその時だ。
「うわああ、あの人ってデマゴーグじゃないか?」
「えっ何だって?」
ディオが驚いて腰を抜かした。
みんなはディオの言葉に目を疑ったが、ウンディーネとケンタウロスはどこかで見たことのある顔から気がついたのだ。
「でも、なんでデマゴーグがこんな所に・・・。」
みんなは驚きのあまり言葉を失った。
歩き近づくたびに椅子に腰掛けている男がはっきりと見えてきた。確かにその男はデマゴーグだった。デマゴーグはデロス同盟を結成して仲間を引き連れており、何かを叫びながら杖を構えていた。
「あの男の周りの仲間に鎧を着た人がいるけど??」
ディオがやっとそう言った時デマゴーグに話しかけている人がいた。その人とはオリエンスだった。
「あれはデロス同盟の連中ですね。」
ゴブリンがそう教えてくたのでケンタウロス、ウンディーネ、ディオは先生の言葉を思い出した。
そしてデマゴーグが袖から術士アブラメリンの聖なる魔術の書を取り出したので、それを見たみんなは驚いた。
ウンディーネはデマゴーグの前まで小走りで来ると彼に大きな声でこう言いった。
「私達にはその書が必要なんです。だから返してください。」
デマゴーグはウンディーネをちらっと見たが何も答えてはくれない。それでもウンディーネは諦めずに彼に訴え続けた。
「私は新しい学校なんて必要ない・・・。」
「黙れ!クソガキが。なんで君達がこんな所にいるかは知らんが帰ってくれ!」
デマゴーグはウンディーネの前に立ちはだかった。
それでも怯まないウンディーネは彼の言葉を遮るように力いっぱいに叫んだ。
「私達はあなたの持っているその本を返してと言っているんです。聞こえていないようならもう一度言いますが、術士アブラメリンの聖なる魔術の書を返してください。」
「返したところでどうなるって言うんだよ。それと私の弟子に必要なんでね。君達の願いはなんだ?学校を減らせだと?笑わせるのもいい加減にするんだな。」
デマゴーグはそう言い放つとウンディーネに呪文をかけようとした。
「ダメよ。危ない!」
いつしかペルシア戦争を行っていた兵士達もデマゴーグとウンディーネのやり取りを見て歓声を上げていた。
そこにディケー留学生らがウンディーネの危機に助けに来てくれた。
ケンタウロスがデマゴーグに足蹴りをしようと飛びかったが跳ね除けられ地面に倒れ込んだ。
「ケンタウロス!」
ディオがケンタウロスのもとへ駆け込んだ。
「おや、君は講演会に来てくれた子だね。随分と邪魔をしてくれたじゃないか。」
皮肉たっぷりのデマゴーグにこちらを振り向いたディオは怯えていた。
「あなたは私達を騙したんですね。」
「騙しただって?何を根拠に言っているのかさっぱりわかりませんな。」
ディオと彼のやり取りに今がチャンスとウンディーネは彼に近づき本を奪い取ろうとしたがそれに気がついたデマゴーグがウンディーネに魔術をかけた。
ホーラー達が必死に彼に立ち向かおうとしたのも既に遅く、ウンディーネは気を失ってしまった。
とにかく今はウンディーネを安全の所に避難させようとゴブリンが彼女を抱いて走り去った。
そしてディオとデマゴーグの話は続いた。
「あなたは意図的に虚偽の情報を流し、嘘をついて人を扇動しようとする人だと聞きましたが違うのですか?」
ディオはそう言って立ち上がり彼に向けて呪文を唱えた。
「Gang ût, nesso,mit nigun nessiklînon,ût fana themo margę an that bên,fan themo bêne an that flêsg,ût fana themo flêsgke an thia hûd,ût fan thera hûd an thesa strâla.Drohtin, uuerthe so!」
ディオが唱えたのはメルゼブルクの呪文だ。
ディオがそう呪文を唱えると蟲や9匹の仔虫が続々とデマゴーグの体にへばりついた。
呪文により飛び出した蟲はネッソという蟲らしい。体内から出よと命じ、それを受取る器の一種としての矢に誘いいれようとするものである。
「うわあああー。」
デマゴーグがそう叫んであたふたしているとオリエンスがすかさずディオに反撃をした。
「A snake came crawling, it bit a man.Then Woden took nine glory twigs,Smote the serpent so that it flew into nine parts.There apple
brought this pass against poison,That she nevermore would enter her house!」
「これは九つの薬草の呪文の?」
デュシスがオリエンスを凝視した。
オリエンスが呪文を唱えると何匹かの蛇が這い出てきた。
「うわああ。」
ディオが驚いて後ずさりした。
そこにエレーテが祈りの呪文を唱えた。しかし呪文は跳ね返ってしまった。
ケンタウロスも必死に戦った。
やがてオリエンスの仲間が加わりさらにややこしくなっていった。
「どうすれが書を取り返せるんだ?」
ケンタウロスはあともう少しのところで一歩及ばないことに悔しさをにじませていた。
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