第15話夏休みに入って

暫くしたある日、学校でテストが行われた。先生達は決して3人を贔屓しなかった。そして後日、成績表が生徒達に配られた。

「やった~優が5つもあったぜ。ディオは?」

ケンタウロスはディオに聞いた。

「僕も居残りなし!やったね。でもウンディーネが心配だな。かなり焦っていたからね。」

ディオの言葉にケンタウロスは頷いた。

そこで2人はウンディーネの所に駆け寄って成績はどうだったか聞いてみた。

「テストを受けてる時は不安だらけだったんだけどね、私も大丈夫だったわよ。」

ウンディーネがにっこりと答えた。

「やったね。これで3人とも合格だな。」

3人は顔を見合わせて笑った。

「そういえば、僕妹に手紙書いてないや。」

ケンタウロスは思い出して言った。

「確かに戦いやテスト勉強で忙しかったもんね。3人でそれぞれ家族に手紙書かない?」

「いいね、やろう。」

3人は夏休みを前に家族宛に手紙を書いた。

ディオとウンディーネは父へ。ケンタウロスは妹へと手紙を書いた。(義理の妹なんだけどね。)

そして3人で学校内のポストへ手紙を入れた。

「届くといいね。」

季節は夏もすぐそこまで来ていた。生徒達は校長先生から張り紙事件のいきさつを聞き、終わったことを証明してくれた。

そしてそれぞれが夏休みの準備に取り掛かった。夏休みは学校を出て生徒達が家族の元へ帰るからだ。

「ディオとウンディーネともしばらくお別れだね。」

ケンタウロスがしんみりして言った。

「また会えるって。それまでさよならだな。」

3人は手を握り合った。

ケンタウロスは2人と分かれて汽車に乗った。するとそこにはユニとキューピッド、ヘルメスとヘファイストスの姿があった。

「やあ、みんな。」

「ご苦労だったな。」

ケンタウロスがみんなの所へ駆け寄るとユニがケンタウロスを労った。

「ユニ、ありがとう。これでしばらくみんなと会えないなんてさみしいな。でも学校に戻ってきたらまたよろしくね。」

ケンタウロスの言葉にみんなで笑い語り合った。

やがて汽車は出発して学校を去った。

ケンタウロスはキューピッドとユニと席に着いた後窓の外を見た。

「僕がいない間妹どうしていたのかなあ?」

ケンタウロスの義理の妹はまだ4歳と幼く泣き虫な女の子だった。なのでケンタウロスは自分が去って行ったことを知った妹はどんな気持ちだったのか考えていた。

  汽車は各駅に止まり、続々と生徒が降りて行った。そしてケンタウロスも目的の駅に着くと鞄を手にして汽車を後にした。改札口を出ると両親と妹が出迎えてくれた。

「お兄ちゃん。手紙読んだよ。」

妹が嬉しそうに届いた手紙を見せてくれたのでケンタウロスはにっこり笑った。

「寂しくなかったか?」

「ううん。大丈夫だったよ。」

妹はそう言ったが後で父に”あの子は泣いていた”と聞かされ、やっぱりと思った。

駅を出て車に乗り込むと妹はケンタウロスに学校でのあれこれを聞いてきた。

「ねえ、友達はできた?」

「できたよ。」

「何人くらい?」

そんな話が暫く続いた。

家に着いて車から降りると妹が”お兄ちゃん、早く来てよ”と急かした。

「今行くよ。」

ケンタウロスは車から荷物を降ろして久しぶりの家に入って行った。廊下を歩きリビングに入るとテーブルの上のパンフレットが目に入った。

「これ?どうしたんだ?」

ケンタウロスが母に聞くと母はパンフレットを見せてニッコリした。

「みんなで水族館でも行こうと思ったのよ。ケンタウロスがせっかくの夏休みだし。それと、私達も色々考えたんだけどね。あなたとの距離がまだ縮まってない気がしてね、少しでも取り戻せないかなって。娘も楽しみにしていたからね。いいわよね?」

母の言葉にケンタウロスは頷いた。

「じゃあ、明日水族館に出かけるぞ!」

「わーい。」

妹はケンタウロスが来るのをずっと待っていたのですごく楽しみにしていたらしい。そして、この日はケンタウロスは荷物の整理をして妹と沢山遊んであげた。

「お兄ちゃんが次帰ってくるのはいつ?」

妹がケンタウロスに不安そうに聞いた。

「今度の春かな?冬は忙しいから学校にいると思うよ。」

「え~来年まで待てないよ。」

妹はダダをこねたが、学校の決まりだからとケンタウロスは肩をすくめた。

夕食時も妹はケンタウロスに家での事を話していた。この日、妹はしゃべりっぱなしだった。そして疲れたのか妹は8時に就寝した。妹が寝たあとはケンタウロスはお風呂に入ったり、両親と話したりして就寝した。両親と話しているとき父が”せっかくの夏休みだしあれこれやることが沢山あるな”と笑って語っていた。

 

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