第14話君たちの勇気はここにある
ケンタウロスは取り戻した書を見つめた。
戦いをしていた兵士達からも歓喜の声が上がり3人は拍手喝采に包まれた。
「いけないわ。急いで学校へ戻りましょう。」
ウンディーネはケンタウロスとディオにそう言うとホーラ達とゴブリンにお礼を言った・・・はずだった。
「あれ?ここは?」
3人が目を覚ますとそこは学校の廊下だった。そして廊下に放り出されたかのようにあの書が転がっていた。
「僕達は術士アブラメリンの聖なる魔術の書を取り戻したんだよな?」
ディオが書を拾って見つめた。
「そうよ。早く先生に渡しに行きましょう。」
ウンディーネがにっこり笑った。
「でも、どう取り戻したのか説明しないといけないな。」
どうしよう・・・。3人は顔を見合わせて考え込んだ。
その時廊下の向こうから何人かの先生がやってきてケンタウロス達を見て驚いた。
「その書は術士アブラメリンの聖なる魔術の書じゃないか?まさか君達が盗み出したんじゃないだろうな?」
エミール先生がディオの胸ぐらをつかんだ。
「よしなさい、エミール先生。生徒に向かってなんですか!」
他の先生に注意されてエミール先生は大人しく下がった。
「違うんです。僕達が盗んだんじゃなくて・・・。」
ケンタウロスがそう言いかけているとゴブリンが後ろから顔を出した。
「あら、ゴブリンじゃないの?さっきお別れしたでしょう?」
ウンディーネ、ケンタウロスとディオは目を丸くした。
そこには先ほど別れたはずのゴブリンがいた。どうやら3人にゴブリンが付いて来てしまったらしい。
「いや~なんなら今までのことを全て話しましょうか?」
そしてゴブリンによってケンタウロス達の大健闘、デマゴーグが犯人だったことが語られた。
「何だって?デマゴーグが犯人?私はてっきり・・・いや、君達がこの書を取り戻してくれたんだね?」
エミール先生がケンタウロス達に申し訳なさそうに聞いた。
「すみません。僕らもうっかり先生達が話しているのを聞いてしまって。これは僕らの宿命だと感じてしまったんです。でもなんとか取り戻すことができました。あとは留学生のホーラ達やゴブリンにも助けて頂きました。」
ケンタウロスがゴブリンの話の後にこう続けた。
先生達は生徒達を認めてくれて書を受け取った後、校長室へ伺うように言った。3人とゴブリンは先生達に続き校長室へと向かった。
校長室ではケンタウロスとディオ、ウンディーネが今までのことを全て校長先生に話した。
そして話を聞き終わった校長先生は3人の生徒達にこう告げた。
「君達が書を取り戻したのは実に素晴らしく学校の誇りとなるだろう。だが、しかし危険を伴った冒険でもあったことを決して忘れてはならない。君達のことは称えるがこれが成績に反映するとは限らんのでな。そこはよく注意するように。でも、よくやったぞ!」
校長先生の言葉に3人はお礼を言って部屋の隅に下がった。
「これより術士アブラメリンの聖なる魔術の書によるお願い事を唱えよう。」
校長先生が書を手にしてページをいくつか開くと願い事を唱えた。
「M I L O N 、I R A G O 、L A M A L 、O G A R I 、N O L I M 。これより新しい学校の建設は中止とし生徒達からの謝礼金は受け取らないことを証明する。」
校長先生が願い事を唱えると本のページに光が差し込み部屋中を包んでいった。そしてしばらくすると何事もなかったかのように部屋は静まり返った。
「校長先生、これで終わりですか?」
ウンディーネが校長先生に聞いた。
「そうだ。終わりだ。」
校長先生が頷くと周りにいた先生方が拍手をしてケンタウロス、ディオ,ウンディーネを褒めてくれた。
校長室を出ると他の生徒達が3人に駆け寄ってきた。
みんなで称え合いハグをし合って喜んだ。
しばらくしたある日、ケンタウロス達3人はあの掲示板を見に行って見た。そこにはもうあの張り紙は剥がされて無くなっていた。
「終わっちゃったね。」
ウンディーネが肩をすくめた。
「いや、でも僕らは終わりじゃないさ。だって次の試練が待てるんだぜ。」
ディオが掲示板を見てそう言った。
「次の試練ってなんなの?」
ウンディーネがディオに聞くと”テストだ”と一言言った。
「いけない!戦いですっかり忘れていたわね。私、テスト勉強進んでいなかったんだわ。」
ウンディーネは、はっと思い出して寮へと駆けて行った。
「それじゃあ、僕らも寮に戻ってテスト勉強しますか。」
ケンタウロスの言葉にディオが頷き掲示板から去っていった。
こうして彼らの冒険は終わったが次は第二の試練のテストが待っている。果たして3人の成績は合格ラインに達するのだろうか?
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