第18話Run at full speed!!
夏休みが終わった生徒達は汽車に乗り学校まで向かった。駅を降りると続々と生徒で駅のホームは溢れていた。
「は~久しぶりだな。みんな元気にしてるかな?」
ケンタウロスが汽車を降りると誰かが走ってきた。
「久しぶりですね。」
そこにはヘルメスが息を切らしていた。
「そうだね。でも走ってこなくてもいいだろう?」
「だって~早く会いたかったんですもん。」
2人は笑いながら改札口を過ぎて学校の門をくぐった。門をくぐるとディオやウンディーネの姿があった。
「やあ、みんな元気だった?」
久しぶりの再会に喜んでいると、どこからかファンファーレが聞こえてきた。
「皆の諸君!我が校では4年に一度オリンピア祭を開催している。今年はその年なので大いに飛躍していただきたい。健闘を祈る。」
小姑が旗を掲げた。
「やったー。ついにオリンピアのシーズンが来たぞ。」
みんなは拍手をして喜び合った。
聖なる書の事件も終わり、テスト、夏休みをはさんでのことだった。
夏休みが終わると体練術の他にオリンピア際に向けて練習もあるので大変になるであろう。しかしこの一台イベントを楽しみにしていない生徒なんていないだろう。
ケンタウロスがディオとウンディーネ、ヘルメスと喜びあっているとあのワル3人がこちらにやって来た。
「いやだわ。あいつら復活していたのね。」
ウンディーネが目を丸くして驚いた。
「お前達のせいで散々だったんだぞ。どうしてくれるんだ?」
エリゴスが捨て台詞かのように言葉を吐いた。
「それは君達が使っちゃいけない術を使って違反したからだろう?」
ケンタウロスは言葉を返したがディオが”ここは大人の対応を取るべきだ”と言ったのでそのあとは黙っていることにした。
「オリンピア祭で見返してやるからな。」
ワル3人はそう笑いながら去って行った。
「あいつらっていつにも増して感じ悪いよな。」
ヘルメスの言葉にケンタウルス、ウンディーネ、ディオは頷いた。
学校が始まり、生徒達はオリンピア祭に向けて忙しくなった。オリンピア祭は女性禁制のため女子生徒は男子生徒の応援に回るのだ。それぞれ各寮の男子達を応援することになっている。
「競技優勝者にはオリーブの冠を捧げられて、肖像を壁画に残すんだってよ。」
ディオが嬉しそうに空を見上げた。
「競技の他に詩の大会もあるからな、楽しみだな。」
ケンタウロスがディオの言葉に付け足した。
この学校で4年に一度行われるオリンピア祭の競技は詩の大会、スタディオンの距離を走る中距離競走、ドリコス走長距離走、ペンタスロン(短距離競走、幅跳び、円盤投げ、やり投げ、レスリングの5種目)です。本当はボクシングという競技もありましたが、この学校では行っていません。
男子生徒が練習に励んでいる間、女子生徒は応援グッズを作り大会にに間に合わせる。タスキや旗など様々ものを協力して作るのだ。
ここで疑問に思うのは女性のための大会はあるのか?ということですがヘーライアというお祭りがあるようです。競技は短距離走のみで、右胸をはだけた着衣で行われたということです。ただしこの学校ではヘーライアは行わない。
オリンピア祭というと青年達は裸で行っていたということらしいのだが、ここでは上半身裸のみとさせていただこう。下半身はちゃんと着ているからご安心を。それと女性禁制とのことで女性は競技を観戦出来ていたのかについだが、いろんな説があるようだ。ここでは観戦OKとさせていただこう。
さて、ケンタウロスを含めた男子達はスタディオンの中距離競争の練習の真っ最中だ。果たして上手くいくのだろうか?それに加えて今日はやり投げの練習も行った。
男子生徒達に指導をしているのはギュムナスティケー先生こと通称ギュム先生だ。
「みんなしっかり頑張ってね。」
ギュム先生の言葉がグラウンド中に響き渡っていた。
オリンピア祭の準備や練習も順調に進んでいるさなかでも通常の授業も行われている。この日の1時間目は芸術から音楽の授業だった。指導しているのはネロ先生だ。この学校のある地元で歌手活動もなさっているのである。
「みなさん、ごきげんよう。早速授業を始めましょう。まずは教科書の45ページを開いてください。」
先生の指示通りに生徒達がページを開く。
「ここにはセイキロスの墓碑銘というのがあります。これは完全な形で残っている世界最古の楽曲の一つです。」
先生の言葉に生徒達も感心した。
「先生に質問です。歌詞の行間にはギリシアの音符による旋律の指示がありますよね?」
ウンディーネが手を挙げて先生に質問したのでみんな彼女の方を振り向いた。
「さすが、その通りです。それではみんなで読んでみましょう。」
暫く先生に続いて生徒達が教科書のページを読んでいると負けじとエリゴスが先生に質問した。
「先生、世界最古とおっしゃいましたが、これより古いのもあるのでは?」
「そうなんですよ。だが短いながらも完全な形で残っている楽曲はこれが最古なんです。」
エリゴスが自信たっぷりに聞いたのも虚しく終わった。
それを見てヘルメスが笑った。
「お前はまたやられたいのかよ!」
その時アマイモンがヘルメスの前に立ちはだかったので先生が注意した。
「アマイモン君!廊下に立ちたくなければ静かにしなさい。それとヘルメス君もおとなしくしてなさい。」
それから2人は先生に注意され黙って俯いていた。
その後先生は生徒達にセイキロスの墓碑銘の楽譜を配った。そして先生の楽器演奏に合わせて生徒達は歌った。
~わたしは墓石です。セイキロスがここに建てました。
決して死ぬことのない、とこしえの思い出の印にと。
生きている間は輝いていてください
思い悩んだりは決してしないでください
人生はほんの束の間ですから
そして時間は奪っていくものですから♬~
「はい、よく出来ました。来週は今回のおさらいをして次に進みます。教科書と楽譜を忘れずにね。」
「ありがとうございました。」
こうして楽しい音楽の授業は終わった。
鐘が鳴り授業が終わると生徒達は次の授業の準備と急ぐ。そんな中エリゴスが悔しそうにウンディーネの背中を見つめていた。
「次こそ名誉挽回さ。今に見てろよ。」
音楽の次は数学の授業だった。
みんなが席につた頃にチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。数学を指導しているピタゴラス先生だ。
「さて、今日は立方倍積をやろうと先週話していたがみんなは定規とコンパスは持ってきましたか?」
みんなが返事をして持ってきたケースを見せるさなかエリゴスはケースがないことに気が付いた。
「あれ?ない・・・。」
「おや、エリゴス君忘れたのですか?」
「すみません。ロッカーを見てきます。」
エリゴスは先生に断って教室を飛び出した。
「エリゴス君には隣の席の人が教えてあげること。それでは気を取り直して、教科書を開いてください。」
生徒達が教科書を開くと問題が記されてあった。
1.円と同じ面積の正方形を作図せよ
2.与えられた立方体の体積の二倍の体積を持つ立方体を作図せよ
3.任意の角を三等分せよ
「こちらはギリシャの三大作図問題です。どれも, 定規とコンパスだけを使って作図せよ という問題です。それでは解いてください。始め!」
そこにエリゴスが慌てて教室に入ってきて”ありました”と席に着いた。
「エリゴス君にページを教えてあげなさい。」
先生がアマイモンにそう促した。
アマイモンは隣のエリゴスにページを教えてあげた。
暫くして先生がそこまで!と言って出来た人に手を挙げるように言った。そこでウンディーネは元気良く手を挙げて黒板の前に立つと書きながら言ったのである。
「これは不可能な作図ではないでしょうか?」
みんなが彼女の言葉に耳を疑った。そしてウンディーネはこう続けた。
「これらは全て定規とコンパスのみでは作図できないことが証明されているんです。ヴァンツェルは、角の三等分問題と立方体倍積問題は三次方程式を解かなくてはならないことを示しました。非自明な三次方程式の根によって生成される体は拡大次数が 3 になってしまい、そのような数を座標にする点は作図できません。円積問題を解いていて方程式 x2 = πr2 の解を求めることと同じ値なのです(π は円周率)。リンデマンにより π が超越数であることが証明され、作図が不可能であることが分かりました。他の道具で答えを導こうとしてもこれらは元々の『角の三等分問題』に対する解答ではないからです。」
ウンディーネは拍手喝采だったが、又しても邪魔されてエリゴスは不機嫌だった。
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